トミー・フラナガンの遺産:トリビュート・コンサートの前日に・・・

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トミー・フラナガンは6年前の今日、11月16日(金)に亡くなった。
 訃報が届いたその夜のライブは奇しくもフラナガニアトリオ、寺井尚之が溢れる涙をぬぐいもせず演奏した哀しい哀しい“Easy Living”、今も忘れることが出来ない。
 それ以来、寺井尚之は、私のちっぽけな哀しみを遥かに超越した大きなスタンスで、ジャズ講座や年2回のトリビュート・コンサートなど、フラナガンの業績が忘れさられないようにじっくりと良い仕事をしている。それ以上に本業のピアニストとしての力量もムラーツアニキが驚くほど大きくなった。日本人だな!えらいね。
 フラナガンからもらった色々なものを考えると、それは「正しいこと」だと思う。
  OverSeasにいるピアノの音色も、フラナガンの遺産のひとつ。一番上の写真は、今週のピアノ調律の風景です。左が名調律師、川端定嗣氏、川端さんの凄いところは、音程を揃える調律だけでなく、ピアノのアクションの調整技術にある。
 「この音だけ引っ込んでますな。」「これはかさついてるなあ、もうちょっとしっとりさせてほしいわ。」とか、寺井尚之が88ある鍵盤の一本一本のサウンドにあれこれつける細かいいちゃもんに、完璧に応えてくれます。すごいでしょう!調律は正午から日暮れまで、休憩なしですよ。
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 元々、川端さんと寺井尚之に、「調整技術」の本当の意味を教えてくれたのはトミー・フラナガンだった。初めてOverSeasに来たときに、「この音に“ゴースト”がある」と指摘してくれたおかげで、にごりやくすみのないサウンドを追求する術を獲得できたのだった。その後川端さんの技術は、寺井の演奏と同様、飛躍的に向上し、巨匠ウォルター・ノリスをして、「大阪に世界レベルの調律師あり!」と驚喜させる結果となった。
 
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フラナガンはコンサートで演奏するときだけ、ピアノにサインをして行った。2代目のこのピアノにもびっしり…
 「木で出来た楽器には魂が宿る」とTVで霊能者なる人が言っていた。この人の言うこと全てを信じるのは無理だけど、これは本当だ。
 うちのピアノが典型的で、トミー・フラナガンやサー・ローランド・ハナとか、自分好みのピアニストが演奏した後は、調律は落ちていても、「音」そのものは冴え冴えと研ぎ澄まされて伸びの良い、幸せ一杯の音になり、その後数週間は寺井が驚くほど高らかに鳴っている。逆にタッチの汚い荒くれピアニストが一晩弾きまくると、すっかり落ち込んでしまって、川端さんや寺井尚之を手こずらせる。
 トリビュート直前の調律は、川端さんも寺井も舌を巻くほどスムーズに落ち着いた。ピアノにも気合が入っているからだ。
 明日はトリビュート・コンサート、別に厳かな行事でなく、生前フラナガンがライブで愛奏した名演目の数々を、フラナガンをよく知っている人も知らない人も、小さい子供から大人まで、皆が「トミー・フラナガンっていいなあ!」と心から楽しんでもらえれば、一番の供養になると思う。
宮本在浩(b)、河原達人(ds)の二人の名プレイヤーも、わくわくするような楽しい演奏を聴かせてくれることでしょう!
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 これから、明日皆さんにお出しする料理の仕込みにかかります。おいしく作ろう!
 ENJOY!!
 

「トミー・フラナガンの遺産:トリビュート・コンサートの前日に・・・」への1件のフィードバック

  1. 今日はアメリカでは11/16日。この年の暮れのブルーノートで初めてフラナガン氏を見る予定だったのだけれども果たせずじまいでし
    た。でも、寺井さんを通じて、彼の素晴らしさを知ることができることに感謝。寺井さんの演奏を聴いていると、音楽の精神は形を変えて受け継がれることを実感できます。
    もちろん、講座ではよりビビッドに実感できます。近かったらなぁ。で、講座本。この間、3巻が出たと思っていたらもう4巻。嬉しい悲鳴です。一冊ストックしておいて下さいませ。

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