ピアニスト、Fred Herschは、寺井尚之の盟友、ドラマー、Akira Tanaさんや、ジョージ・ラッセルの愛弟子であったギタリスト、布施 明仁さん(在マレーシア)と同じ、ニューイングランド音楽院出身。ハーシュさんを初めて聴いたのは1970年代終盤、六本木のクラブにRed Mitchell(b)と出演した若手時代ですから随分昔のことです。
フレッド・ハーシュは1955年、コネチカット州シンシナティ生まれのシンシナティ育ち。アイオワ州きっての名門、グリネル・カレッジ在学中、ジャズに傾倒し、中退してニューイングランド音楽院に入学、ジャッキー・バイアード(p)に師事しました。
ジャズ・シーンでトップ・ランナーとして輝かしい経歴を誇るハーシュは’90年代、その当時、死に至る病とされていたHIV(エイズ)に感染、、2008年には、関連疾患のために、演奏活動はおろか、2ヶ月間昏睡状態に陥り、生死の境をさまよいました。しかし、周囲の献身的な努力もあり、死の床から生還し、見事にカムバックを果たします。独自の音楽世界に一層の磨きをかけると同時に、エイズ撲滅の闘志として、様々なチャリティー活動を行っています。その一環として、ハーシュが昏睡状態の中で観た夢を舞台化した『My Coma Dreams』(2014)や、闘病経験をテーマにしたドキュメンタリー『The Ballad of Fred Hersch』も発表されているようで、一度見てみたいものです。
そんなフレッド・ハーシュの最新盤は、特別な思い入れのあるジャズクラブ、<ヴィレッジ・ヴァンガード>でのライブ録音。彼自身が書いた誠実さ溢れるライナー・ノートを、ご縁があって翻訳させてもらいました。レギュラー・トリオならではの良さが溢れる、素晴らしいアルバムで、日本語解説書には、彼がライブ録音を行った週の、完全セットリストが付記されていて、日本語版ディレクターの熱意もまざまざと伝わってきます。
ぜひご一聴を!