暑中お見舞い申し上げます♪
先週からOverSeasのライブを聴きに来日されていたフィオナさん、寺井尚之の演奏と大阪の街を満喫したウルルンな滞在でした。来日中、寺井尚之のデュオやトリオ、全ライブを心の底から楽しんで、共演ミュージシャン達にも最高の応援をいただきました。
お忙しい中、はるばる来てくれた彼女にHelloと挨拶に来てくださったお客様、ほんとにありがとうございます。彼女も大喜び!その分別れはさびしかったですね。本日早朝、無事帰国、「夢のような一週間だった」とメッセージを頂きました。私も初めてNYに行った時、トミー・フラナガンやジミー・ヒースといった巨匠の奥さんたちに、たいへんお世話になったので、少しでも同じようにしてあげられたのだったら、最高です。
さて、ヘッポコ観光ガイドがお払い箱になり、私も再び日常の業務に。コルトレーン評論家の藤岡靖洋氏とのプロジェクトで、フィラデルフィア時代のジョン・コルトレーンの仲間、ベニー・ゴルソン(ts)の原稿がやっとのことで仕上がりました。ベニー・ゴルソンと面識はありませんが、Five Spot After Darkは高校時代から好きだったし、寺井尚之の愛奏曲も多いし、フラナガン参加の『Blues-Ette』はピアノ教室の必聴盤だし、とても身近な存在です。藤岡氏も何度かインタビューをされていますが、書物やネット上にも膨大な肉声の証言があるので、それらを網羅するのに時間がかかりました。とはいえ、ゴルソンは、演奏に負けないほど話が上手く、どれもこれも面白くてためになるものばかり!それにゴルソンを調べ始めたら、DVD講座でも登場する機会が多くなり、寺井尚之の解説が大変役立ちました。
明日の「映像で辿るジャズの巨人」ジャズ・ドキュメンタリー、A Great Day Harlem でもベニー・ゴルソンの証言が沢山登場しますから、ぜひチェックしてみてくださいね。ゴルソンは、ホレス・シルヴァーとのトーク場面の冒頭に、こんな面白い話をしています。
「僕は、よく名曲を作曲する夢を見るんだ。だが翌朝目覚めると、どんな曲だったかすっかり忘れてる。でも或る夜、そんな夢を見た途端に目が覚めた。それで、夜中に慌てて五線紙に走り書きして、それかたまた寝たんだ。次の朝一番に、その曲を弾いてみたら、何となくどこかで聞いたことがあるなと思って…よく考えてみたら”スターダスト”だったよ・・・(笑)」
“アイ・リメンバー・クリフォード” ”アウト・オブ・ザ・パスト” ”ウィスパー・ノット” ”ステイブルメイツ”…ゴルソンの曲は、どれもメロディが覚えやすいし、口づさみ易い。ところが、長調なのにマイナー・コードから始まったり、基本的な和声進行のルールとは違うものが多いし、コーラスのサイズも変則的なものが多いのですが、聴き手にはとても自然に響きます。
ゴルソン自身、作曲するうえで一番の基本は和声でなく「メロディ」と言い切っているのも、なるほどと頷けますし、実際に歌詞が付いて沢山の歌手に歌われている曲もあります。
例えば“アイ・リメンバー・クリフォード”は、ジョン・ヘンドリクスが歌詞を後付して、ダイナ・ワシントンやヘレン・メリル、それにイタリアの歌手、リリアン・テリーがフラナガンの名演と共に録音していますよね。Whisper Notは大評論家レナード・フェザーが歌詞を後付けし、メル・トーメ、アニタ・オデイ、エラ・フィッツジェラルド達が名唱を残しています。この2曲はゴルソン自身が歌詞を付けることを承諾したのですが、基本的に自分の曲に歌詞は不要という主義。『Freddie Hubbard & Benny Golson』の中のドラマチックな作品”Sad to Say”は、大歌手トニー・ベネットが、あの有名なビル・エヴァンスとのデュオ・アルバムを録音する際に「歌詞を付けて歌いたい」と頼んだそうですが、「エヴァンスはイメージに合わん!」と一蹴したそうです。
それどころか、男性ジャズ・ヴォーカリスト、ケヴィン・マホガニーが”ファイブ・スポット・アフター・ダーク”に無断で歌詞を付けて録音したときには、出来上がったCDを市場から回収させたというから、ハンパじゃありません。トミー・フラナガンもそうでしたが、納得のいかないことは絶対に許さないというのがハード・バッパーなんですね。
すでに芸術として完結している作品には、余計な付属品は不要なのでしょう。ゴルソンは自作以外のジャズのオリジナルに歌詞がついたのも好きじゃないし、何よりも嫌いなのは、ジャズのアドリブに歌詞を付けるヴォーカリーズなんだそうです。
とにかく、「向こうは歌詞をつけて歌ってもらって名誉なことだろ。」と言う人も多いけど、ゴルソン自身はまっぴらごめん。熟年になってからは、どうしても必要ならと、自分で作詞作曲しています。
というわけで、明日の「映像で辿るジャズの巨人:A Great Day In Harlem」は真夏のハーレムで撮影されたジャズメンの写真を基に作られたとても面白いドキュメンタリー!ぜひお越しください!
おすすめ料理は「ビーフのパイ包み焼」です!CU
南十字星の国から
天神祭も終わり、大阪の街は本格的な夏休みモード。
昨日から、長年、寺井尚之のCDを愛聴し、ゴールド・コーストのFM局で流してくださっているフィオナさんが休暇を取って遠路はるばる南半球からライブを聴きに来阪中。今日は、ミナミの街へと、ミニミニ大阪ツアーに行って来ました。
ご両親は英国人、UKの従兄弟たちもジャズ・ソサエティを主宰しているというロイヤル・ジャズ・ファミリー!何のPRもしないのに、フラナガニアのCDをどこかで聴いて、いっぺんにファンになってくださったというから、ありがたいです!
今回、フィオナさんが日本で一番買いたいものは、意外にもタオルケット!オーストラリアには、こんな気持ち良い寝具は入手できないというので、デパートでゆったりお買いもの。店員さんのサービスの良さに驚いてました。大丸百貨店さんありがとう!
そして第二希望はユニクロ・ツアー!開店と同時に入店して、約一時間、時さえ忘れて、あれもこれもとお買いもの、ふと周囲を見回すと、アジア系の旅行者のお客さん観光客さんばかり・Jazz Club OverSeasのライブ・スケジュール配ればよかったなあ・・・大阪知らずのへっぽこガイドであります。
丁度ランチ・タイムになったので、心斎橋を南下し、かに道楽を横目で観ながら、法善寺横丁の浪速割烹で、大阪の地野菜を使った日本料理に舌鼓。カウンター席なので、皆が大吟醸を悠然と飲み干す彼女に、色々フレンドリーに話しかけてくださって、いかにも大阪やね~って感じでした。
明日から、坂田慶治(b)とのデュオ、メインステム・トリオ、宮本在浩(b)との火曜日名物デュオなど、寺井尚之のピアノで心行くまで楽しんで頂く予定。ここは、ひとつ盛り上がりたいものです。Jazz Club OverSeasのためにも、寺井尚之のためにも、どうぞ、ここはひとつライブにお越しくださいますよう、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
CU
Rahsaan Roland Kirk ローランド・カーク (1936-77)
猛暑到来!どんなに暑くても、若いときは街歩き大好きだったのですが、今はとにかく時間が取れません。来週はオーストラリアから、寺井尚之ファン、Fionaさんが遠路はるばる来られるので、今日は観光案内の下見にミナミの街へ行って来ました。
「かに道楽」や「グリコ」、パチンコ屋さんの喧騒や、食べ物の香り一杯のコテコテで暑いナニワの繁華街には、ローランド・カークの「カッコーのセレナーデ」が似合うなあ・・・
というわけで、8月5日(日)正午より、「映像で観るジャズの巨人」DVD講座にローランド・カーク (Rahsaan Roland Kirk)登場!
若いファンのみなさんは、ローランド・カークなんて言っても知らないかも・・・沢山の楽器をガブっとくわえる上の写真を観て「アクロバットか」と横向く人、ちょっと待って!ローランド・カークは、正真正銘、本物のメインストリームです。そんな方こそ、ぜひ8月5日に来てくださいね。
<マルチ・リード>
カークは1936年8月7日、オハイオ州コロンバスの蒸し暑い夏の日に生まれました。2歳の時に失明、盲学校でトランペットを習得し、15歳ですでに2管の楽器を同時に演奏する技を会得していたといいます。
カークの演奏楽器は多種多様!テナーサックス、クラリネット、フルート(鼻で吹くときも)、そして、トランペットにサックスのリードを付けたものや、マンゼロ、ストリッチというカークのオリジナル・ホーンがあります。
左のモノクロ写真で左端のホーンが「Manzello(マンゼロ)」、真ん中の長いのが「Stritch (ストリッチ)」と言う楽器で、どちらもカークが名付けた名前です。前者は H. N. White 社製のサクセロというB♭のソプラノサックスに、メロフォンという金管楽器のベルを付けたもの。後者は、ブッシャー社製の直管のアルトサックスのキーを改造して片手で演奏できるようにしたものです。
盲目のカークが、一体どうやって、いろんな楽器を開発したかというと、NYロウワーイーストサイドに馴染みの質屋があって、質流れ品の楽器で気に入ったものを、更にカスタマイズして使ったのだそうです。その他にも「サウンドツリー」と名付けられたスタンドには、ゴングやベル、タンバリンといった小道具が色々つりさげられて、その都度必要に応じて使ってました。
ロータリー式呼吸法を駆使し、ノンストップで、複数の楽器を演奏するというと、「体力勝負」のサーカスと思われるかも知れませんが、キーの異なる楽器でハーモニーやリフを付けて演奏するには、それ以上に大脳を駆使しなければなりません。まして、そのプレイがソウルフルで、即興演奏をガンガン聴かせるのですから、カークが多くのミュージシャンに尊敬され、愛されるのは当然!子供の頃にNHKの音楽番組で観た
カークはほんとにカッコイイ!と思いました。その迫力は、カークがNYに出てきたとき、まっさきに起用した恩人、チャーリー・ミンガスや、ミンガス一派のジョージ・アダムス&ドン・プーレンのバンドに通じるものがあります。
<ライブの迫力!>
ヴィレッジ・ヴァンガードの店主、故マックス・ゴードンの回想記”Live at the Village Vanguard”を読むと、カークはヴィレッジ・ヴァンガードに出演するのが好きで、年間3-4週間は演奏していたと言い、いかにもNYっぽいライブの様子がリアルに描かれています。
「ラシャーンは黒いベレー帽とサングラス姿で杖を持っていたが、不思議なことに、ヴァンガードの店内のトイレも電話もバーも、全てどこにあるのか判っていて、狭いテーブルの間をかいくぐって辿りつくことが出来た。」
「彼は、自分を聴きに来るファンのことを”信者(believer)”と呼び、たまに”不信心者(Unbeliever)”が客席にいるのを感知すると、間違いなくその席に降りて行き、そのお客の首根っこを摑まえて追い出した。」
「興が乗ると、カデンツァにクラリネットで”聖者の行進”を吹きながら、客席に下りて行進し、そのままドアを開け、地下から上に上がり、再び吹きながら戻ってくるのだった。」
<輝く星>
カークは、夢のお告げで本名のRonaldのNとLを入れ替え、アラビア語で「輝く星」を意味する”Rahsaan”を冠しました。
沢山の楽器を持つ姿はなかなかヤヤコシイ感じがしますが、気性はまっすぐ!歯に衣着ぬ弁論家で、サックスにエレキを使ったり、ロックやフュージョン(’70s当時はクロスオーバー)に走るミュージシャンたちを、はっきりと一刀両断にバッサリ切り捨てています。
僅か41歳という短い一生で、幼い時に失明、晩年は脳溢血で右半身付随という不幸に見舞われましたが、それでもテナーサックスを改造し、片手で演奏活動を続けた「輝く星」ローランド・カーク!偉大なジャズ・ミュージシャンに乾杯!
「オースティン・パワーズ・デラックス」しか知らない皆さん、ぜひ一緒にDVD観ながらランチして、寺井尚之の解説を聴いてみてください!講座のサイトはこちらです。
<映像で辿るジャズの巨人>
8/5(日) 正午- 2pm 「 マルチリードの醍醐味!Rahsaan” Roland Kirk」
受講料 2,625yen (要予約)
CU
対訳ノート(35) 虹色 Misty
九州は未曾有の大雨、いつもは穏やかで美しい白川が氾濫、熊本市でトミー・フラナガン特集ライブの快挙を行ったベーシスト、古荘昇龍さんのご近所も水害に見舞われていると伺いました。心よりお見舞い申し上げます。
大阪のJazz Club OverSeas、土曜日は「トミー・フラナガンの足跡を辿る」開催!『Ella in Japan』佳境に入ってきました。
解説用の構成表や対訳もやっと一揃い出来上がって、ほっと一息… 今回作った対訳は全15曲。『パーディド』や『A列車で行こう』など、有名スタンダード曲でも、全く違う歌詞を歌ってから、スキャット(エラは”Bop”と呼びます。)で聴かせたりするので、全て一から聞き取りです。
東京オリンピック・イヤー、1964年お正月の来日公演、一番大きな拍手があったのは”ミスティ”でした。”ミスティ”は、OverSeasでもリクエストが多く、プログラムの都合でお応えできない時の為に、寺井尚之とThe Mainstemがダウンロード用CD、『Evergreen 2』に収録しているので、ぜひ一度聴いてみてくださいね!
皆さんご存知のように、“Misty”は、天才ピアニスト、エロール・ガーナーの1954年の作品。2年後に”ポルカドッツ&ムーンビームズ”や”バット・ビューティフル”などでおなじみの作詞家、ジョニー・バークが歌詞を後付けし、人気歌手ジョニー・マチスのレコードで大ヒット、ジャズの世界ではサラ・ヴォーンの十八番として世界的に有名になりました。”Misty”は、日本語では、よく「霧の中」的に訳されるけれど、「霧」は”Fog”で、”Mist”は「靄(もや」。”Mist”の語感の方が、潤いと透明感があります。米国の国語辞典サイトを読むと「甘美で感傷的な気分に満たされる」という語意があるのが判ります。エイゴはムズカシイ!
★左の公演ポスターは、ジャズ評論家で「Ella In Japan」のリリースに尽力された後藤誠氏の提供です。
<飛行機から観た虹の曲>
ただし、エロール・ガーナー自身は、もっとシンプルな理由から、『Misty』と名付けたのでした。作曲の経緯については諸説あるけど、アーサー・テイラー(ds)のインタビュー集、”Notes and Tones“には、ガーナ―自身の決定的な証言が載ってます。ガーナ―の言う『Misty』は、水滴で潤む飛行機の窓ごしに観た虹のことだったんです。ガーナ―はこんな風に語ってます。
「”Misty”は、サンフランシスコーシカゴを飛行中、美しい虹に出会って作った曲なんだ。まだジェット機がない時代で、フライトはデンバー経由だった。デンバー空港に向かって高度を下げて行くと、きれいな虹が出た。それは見事な虹だった。長さは短めく幅広だったので、あらゆる色彩が見えた。飛行機の窓は雨で濡れていたので、虹は潤んで(misty)いた。それで、”Misty”と名付けたのさ。僕は自分の膝をピアノに見立てて、必死で思い浮かんだ曲を弾いていた。目を閉じてハミングしながらね。すると隣に座っていたおばあさんが、てっきり僕の具合が悪くなったと思い込み、客室乗務員を呼んでくれた。シカゴに着くころには、曲は出来上がっていた。うまいことに、目前にレコーディングが控えていたので、そこで録音したんだ。つまり、その飛行機で僕の隣に座っていたおばあさんが、”Misty”の初演を聴いた人なんだ!」
譜面が読めないことで有名なガーナーですが、作った曲は、写真のような形で脳内に記憶することが出来たのでしょう。
ジャズの世界では、クインシ―・ジョーンズのアレンジで壮大に歌い上げるサラ・ヴォーンの名唱が有名ですが、『Ella in Japan』のヴァージョンも素晴らしい!
たたき上げのバンドシンガーであったエラ・フィッツジェラルドは、全然関係のないレパートリーで、何かのトラブルがあったとき、で、この“Misty”の冒頭フレーズを、秘密の暗号コードとして時々使ってました。アドリブで、いろんなフレーズを挿入しすぎて、コーラス中のどこに居るのか判らなくなってしまった時、冒頭のフレーズを歌詞のないメロディ・スキャットで繰り返すんです。“Look at me! look at me!” つまり「私を見て!首振りするから、ちゃんと見て、コーラスの頭に戻ってね!」そうすると、ビシっとうまく収まります。あの有名な『Ella in Berlin』でも聴けますよ。
Misty
Eroll Garner/ Johnny Burk
ねえ、私ったら、
木の上で途方に暮れてる子猫みたい、
雲につかまるように頼りな気。
何が何だかわからない、
うっとり、ぼんやり、
あなたと手をつなぐだけで。
ねえ、私のところに歩いて来て、
すると、沢山のヴァイオリンが音楽を奏でる、
それは、あなたのハローの声かも。
うっとり、恋の気分、
あなたといっしょにいるだけで。
だまされていてもいいの、
あなたになら、だまされたい。
私はおろおろするだけで、
あなたについて行くだけ。
一人では、
この不思議な世界は歩けない。
右も左も、
何がどうだか判らない、
あんまり、うっとり、
恋の気分に浸りすぎ。
「足跡講座」今回のおすすめ料理は「賀茂なすスペシャル」
「トミー・フラナガンの足跡を辿る」Ella in Japanは、今週土曜日6:30pm開講!(チャージ 2,625yen) 学割チャージ半額です。
「足跡講座」 ぜひぜひ Look At Me!
CU
Jazz Club OverSeasのご感想いただきました。
一昨日、はるばる名古屋からご来店くださったお客様が、ご自身のフェイスブックにレポートを書いてくださっていました。
とても、とても嬉しく励みになったので、ここに転載させていただきます!
ご来店ありがとうございました。
Jazz Club Overseasで撮ってくださった一枚です。
私の横がジャズピアノのジャイアンツ、故トミー・フラナガンの弟子となられたオーナー寺井尚之さんです。
目の前でピアノ・ベースのデュオを拝見しましたが、ピアノのタッチが滑るように・・・軽やかなタッチだけど、音がズシンと届きます。これがジャズピアノの真髄なんでしょうね。美しかった。強く叩くジャズピアニストが結構多いのですが、正直疲れる私。
私は曲がどうのこうのよりも、音を楽しむというタイプです。音楽だもん。またジャズは偏屈な理屈を物申す御仁が多いから、とっつきにくいかもしれませんが、シンプルに音を聴かせてくれるこのお店なら好きになれるかもしれませんよー。
レコード・CDよりも生音がやはり一番。ジャズのライブハウスと言いながら、ポップス、ロックもやったりする店だらけの昨今ですが、Jazz Club Overseasは硬派のジャズライブハウス。私の仕事と通じるところがある。「木造しかやらない」「元請けしかやらない」「会社から1時間圏内オンリー」などなど・・・「ジャズオンリー」「生演奏」「アコースティックオンリー」・・・職人っぽさが魅力的です。
3ステージを全て聴かせてもらいましたが、あっという間でした。
ベースの鷲見和広さん、彼のベースも走ってました。ベースはなくてはならないパーツと改めて感じています。ベースなけりゃジャズと言えんね。
大阪の安土町という都心に隠れるようにあるお店。それがまた隠れ家的で最高にいいです。オーナーのピアノが聴けるお店。奥様が店の舞台裏を切り盛り。ピアノが最高の状態で届けれるよう最善を尽くされているのもすごく感じます。最後に・・・ライブ終わり、ピアノを片付ける際に、丁寧にタオルで拭かれててたオーナーの姿にズシンときました。道具は職人と一心同体。ピアノが私の道具と重なりました。そんなお店です。ぜひ大阪に行かれたら足を運んでください。
至福の時間が我が物になります★
夏休みはOverSeasでJAZZ三昧!
お天気もニュースもどんよりしている昨今、皆さま、お元気ですか?
毎回レパートリーを入れ替えながら、月2回のライブを続ける寺井尚之トリオ、The Mainstem(宮本在浩bass 菅一平drums)は、地味でひたむきな稽古の成果が、底力になって来た感あり。
トリオ3名の息遣いが一体になった時、ハーモニーとリズムが大きく膨らみます。そうすると、何故か、心の中の雲が晴れて、文字通り心が躍ります。どんな素晴らしいオーディオも、生音の周波数を全てを再現することはできないそうで、生音の凄さ、ライブの楽しさは、その辺りと関係しているのかもしれません。
OverSeasの私たちには、なかなか縁のないものですが、大多数の皆さまは、これから夏の休暇シーズン、大阪観光のおりに、ぜひ太閤路地にあるOverSeasで、寺井尚之の芳醇なサウンドをお楽しみください!大人も子供も大歓迎!学生証ご持参の方はライブ・チャージ半額です。(あくまでも学生支援のためですので、英会話スクールなど立派な大人のみなさんは適用外です。)
昨日は、名古屋のお客様が、ご夫妻で、初OverSeas体験!お昼は難波花月、夜はOverSeasで、ナニワの色んな側面を楽しんで頂けてよかった!
7月末には、大阪観光を兼ねて、オーストラリアのゴールドコーストから、長年の寺井尚之ファンが来られる予定です。
ひょんなことで、寺井尚之のCDを耳にしてから、通信販売やダウンロードで長年ご贔屓いただいてる、ありがたいお客様、美しい街、ゴールドコーストからフィオナ・ローレンスさんが、初OverSeasの予定です。
27日(金)の寺井尚之+坂田慶治(b)デュオ、28日(土) の寺井尚之The Mainstem、31日(火)、宮本在浩(b)との火曜日デュオと、ご来店予定。
日本のジャズ・ファンのみなさんとぜひ交流したいと希望されています。英語の出来るお客様はぜひジャズ事情を語り合ってくださいね!
英語の苦手な皆さんも、不肖私が通訳させていただきます。日豪の国際親善のためにも、ぜひご来店お願いいたします!
日曜日は正午からDVD講座!OverSeasは休みなしで皆さまをお待ちしています!ライブ&ジャズ講座スケジュールはこちらです。
G’Day!
トミー・フラナガンとベニー・ウォレス
毎月第二土曜日に開催している「トミー・フラナガンの足跡を辿る」も、いよいよ終盤、5月と6月に登場したテナーサックス奏者、ベニー・ウォレスのワン・ホーン・アルバム、『Bennie Wallace』(’98)がとても印象に残りました。フラナガン68才、この時期、トミー・フラナガンをゲストに迎えて録音したアルバムには、どれも「尊敬するトミーと共演できて良かった。」というリーダーのコメントが出るのですが、それが、どのくらいの「尊敬」なのかは千差万別。「ジャイアント馬場を尊敬してる。」と言っても、私と寺井尚之では、言葉の深さも、必殺技の理解も雲泥の差。でも『Bennie Wallace』を聴いていると、「この人、フラナガンのことが好きなんだ…」ということがヒシヒシと伝わって来て、気持ちが洗われます。
ベニー・ウォレスは、この作品の18年前にも、『Free Will』でも、フラナガンと共演していますが、その時は、ソニー・ロリンズとジョン・コルトレーンとアーチ―・シェップを足して三で割ったような印象だし、山下洋輔(p)さんとの共演盤など、アヴァンギャルドなイメージが強いですね。でも、フラナガン夫妻が口をそろえて「あの子は良い子だ。」と誉めていたし、興味をそそられて、フラナガンへの想いを直接質問してみました。
ベニー・ウォレスは1946年生まれ、南部のテネシー州出身、中学時代からジャズが大好き、白人には危険区域と言われる黒人地区のクラブに入り浸り、セッションを重ね、黒人のミュージシャンたちに可愛がられたというのは、ペッパー・アダムスと似ています。大学入学前にすでにプロとして活動。テネシー州立大卒業後はNYでモンティ・アレキサンダーなどと共演。エリック・ドルフィーやオーネット・コールマン以来の逸材と絶賛されました。
80年代から、映画音楽に携わり、ポール・ニューマン主演の『Blaze』、『ハード・プレイ』、その他多くのTVドラマなど、数々の音楽を担当。『ハード・プレイ』では、トミー・フラナガンとアレサ・フランクリンのコラボを実現し、短編作品、『Little Surprize』ではオスカーにノミネートされるなど非凡なキャリアを築きます。
ウォレスさんは、映画音楽とジャズの仕事の二足のわらじがディレンマどころか、相乗効果をもたらすという幸運な人。昔懐かしいアニメ、ベティさんこと“Betty Boop”のリメイクで一緒に仕事をしたジミー・ロウルズ(p)から、多くを学んだそうです。それ以来演奏解釈が一変。ひたすら歌詞を覚え、歌う作業を繰り返してからテナーで演奏するようになったと言います。フラナガンの真価を掴んだきっかけは、ロウルズだったのかもしれません。
フラナガンのどんな所が好きなのか? それは、ピアノのタッチ、そしてハーモニーのセンスだと彼は言います。このアルバムではフラナガンが愛して止まなかったエリントン―ストレイホーン作品が何曲か収録されていますが、それについて大変興味深い意見をメールしてくれました。
「トミーは私のヒーローであり師であり、大好きなピアニストです。多くを学び、ライブに感動し、今もレコードを愛聴しています。
彼は完璧な伴奏者ですが、勿論、それ以上の人です。例えばトミーの”Sunset And The Mockingbird”と、エリントン楽団の演奏を聴き比べてみてください。エリントンですら創造し得なかったハーモニーを実現していますよね。」
「録音前に、”Prelude To A Kiss”(エリントン作) のコード進行を打ち合わせるためにトミーのアパートに行ったときのことです。彼は、むかし自分がエリントン楽団でこの曲を聴いたという話をしてくれました。サビのメロディの各音に、それぞれ違うクロマチック・コードが付いて演奏されていたのだそうです。トミーは感動して、家に帰ると、すぐさまピアノに向かって、そのサウンドを思い出しながら、辿って行ったんだと言うんです。その話をしながら、実際にハーモニーの変化を弾いてみせてくれました!
音楽的記憶を再生するプロセスは、単なるレコードのコピーより、はるかにクリエイティブな行為なんだと、僕は感動しました。
トミーはエリントンのアイデアに、自分自身の創意工夫を重ね、更にすごい音楽を構築した。僕はその姿を目の当たりにしたのです。
それから、ダイアナが現れ一曲トミーの伴奏で歌ってくれました。彼女はすごく上手だった!」
何食わぬ顔でピアノを弾いているトミーと、奇跡を観た少年のように、目をまん丸にして、茫然とするウォレスさん、NYアッパー・ウエストサイドのピアノ・ルームの情景が目に浮かびます。寺井尚之も私も、同じように、フラナガンのアンビリーバブルな創造行為を何度か目のあたりにしていますから、とても共感が持てました。
映画音楽家としてのウォレスさんは、トミー・フラナガンとソウルの女王、アレサ・フランクリンの共演を実現させた功労者です。彼を映画界に引っ張ったロン・シェルトン監督作品、『ハードプレイ(White Men Can’t Jump) 』は、、ストリートバスケットを通じて、人種の軋轢や男のロマンを描く快作です。その劇中歌として、”If I Lose (もしも私が負けたなら)”というきれいなバラードを作詞作曲、編曲、この1曲のためだけに、フラナガンをラガーディアから飛行機に乗せ、デトロイトのスタジオで録音、グラディ・テイト(ds)やウォレス自身もテナーで参加し、何時間もかけて録音したそうです。
アレサ・フランクリンはデトロイト出身、なんと高校までフラナガンと同じノーザン・ハイスクール出身で、この後、NYのカフェ・カーライルで共演したそうです。聴きたかった!
なお、このコラボは、8月の「トミー・フラナガンの足跡を辿る」に登場する予定。
他にも色々と、フラナガンへの想いを何通かのメールに分けて教えてくださったウォレスさん、現在はコネチカット在住、現地の非営利ジャズ組織の音楽監督としてジャズフェスティバルや教育プログラムなどに関っているようです。My同志、Mr. Wallace、来日することがあれば、ぜひOverSeasで寺井尚之と一緒に演奏してくださいね!
CU
7月のDVD講座
今年の梅雨は、シトシトピタパタとはいきませんね。台風が来たり、野球は面白くないしToo Bad. そんな時はスカっとスイングして元気になりましょう!
ご好評いただいているDVD講座、7月の予定をお知らせいたします。
①7/6 (Fri) 7pm- ”PIANO LEGENDS” (ピアノ・レジェンド)
好評につき、DVD講座、ウィークエンドに開催!「ピアノ・レジェンド」では、トミー・フラナガン、アート・テイタム、バド・パウエルら、総勢20数名のピアノの巨匠たちの貴重な映像を鑑賞しながら、時代とともに移り変わる、ジャズ・ピアノ奏法を、ピアノを弾かない方にも、ピアニストたちにも、楽しく判りやすく解説!
トミー・フラナガンの懐かしい名演も観れますよ!
【日時】 7/6(金) 7pm- 9pm 【参加料】 2,625yen
②7/8 (Sun) 正午~2pm ”Art Blakey & Jazz Messengers” (アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ)
私の大好きなBuことアート・ブレイキーがDVD講座初登場!嬉しいですね!
今回は、1958年の映像で、フロントにLee Morgan (tp)とBenny Golson (ts), リズム・セクションが、Art Blakey (ds), Jymie Merritt (b), Bobby Timmons (p) という強力な布陣。
ベニー・ゴルソンは、ジャッキー・マクリーンが病気になって、たった一週間のエキストラを引き受けたのがきっかけで、そのまま入団し、メンバーをリストラし、音楽監督だけでなくユニフォームまで決めるディレクターとしてメッセンジャーズを改革しました。
この映像は、その当時のもので、ブレイキー以外のメンバーは全てゴルソンが同郷のフィラデルフィア出身の実力者を集め、ビシっとしたアンサンブルと超弩級のソロが堪能できます!ブレイキーだけが、唯一のピッツバーグ出身者なので、最初不安がったそうですが、「フィラデルフィアもピッツバーグもペンシルヴァニア州なんだから」ということでまとまったのでした。
ゴルソンはブレイキーのドラミングについてこのように語っています。
「Bu(ブレイキーのニックネーム)は、僕が共演したうちで最高のドラマーだ!ピアノではソフト・タッチということが言われるが、彼のドラムは正しくソフトタッチで、だからこそ、あんなにすごいダイナミクスが生まれるんだ。」
一般的にハードバップとは、「アンサンブルより個人の即興演奏を重視する音楽」と定義されているそうです。でも、彼らのプレイを観て聴くと、この定義の真偽が実感できると思います!
夭折の天才トランペット奏者、リー・モーガンのプレイはボクシングのチャンプのように凄いし、ボビー・ティモンズのピアノは、フォームも指使いも想像以上にエレガントです。
百聞は一見にしかず!日曜日のお昼から!どうぞご一緒に楽しみましょう!
【日時】 7/8(日)正午~2pm 【参加料】 2,625yen
CU
日曜日に絶好調のトミー・フラナガン・トリオを観よう!
大阪の街、今日は汗ばむ陽気です。皆様、いかがお過ごしですか?
来る6/17(日) 正午より、「映像で辿るジャズの巨人達」開催!
絶好調のトミー・フラナガン・トリオ!本邦初公開の映像を鑑賞、解説いたします!
時は1991年、トミー・フラナガンの心技体、絶好調!NYで最もお客の呼べるピアニストというだけでなく、“ダウンビート”や“ジャズタイムズ”など、米国のジャズメディアの人気投票、批評家投票を総なめにしました。それは、生涯フリーランスで、レコード会社やエージェントと専属契約をしないアーティストとしては例外中の例外です。
公演地はスイス、ベルン・ジャズフェスティバル、名コンビ、ジョージ・ムラーツ(b)、ドラムスはスイス在住、ヨーロッパでのレギュラー、アルヴィン・クイーンという最強の布陣です。
映像を提供下さったのは「トミー・フラナガンの足跡を辿る」でおなじみのジャズ評論家、後藤誠先生、この上なく貴重な映像、ありがとうございました!そのうちのごく一部だけYoutubeにありました。
 アルヴィン・クイーン(ds)は、ここ2か月間「足跡」講座に登場中、やっと動画をお見せできて嬉しいですが、簡単に経歴を説明しておきます。Alvin Queenは1950年NYブロンクス生まれ。わずか11歳でプロデビューしました。裕福でなく習い事をする余裕はなかったのですが、ドラムの教師がアルヴィンの才能に惚れ込み、殆ど無償でドラムを教えたといいます。子供の時から街頭で靴磨きをして働いた苦労人。でも靴磨きのおかげで、セロニアス・モンクやアート・ブレイキーと知り合うことが出来て、色々助けてもらったそうです。
13歳の時、エルヴィン・ジョーンズの招待でジョン・コルトレーンの黄金カルテットを聴き、大きな衝撃を受けます。コルトレーンの『Live at Birdland』にはアルヴィン少年の拍手が録音されているのだそうです。その容貌と才能から、彼とエルヴィンの血縁を囁く人も少なくありませんが、真相は判りません。とにかく彼のHPにはエルヴィンとのツーショットが掲げられていて、エルヴィン・ジョーンズが音楽的な父親であることには間違いありません。
’69年、19才の若さでホレス・シルヴァー(p)のレギュラー・ドラマ―になり、その後ジョージ・ベンソン(g)など一流グループで活躍します。でも’70年代はジャズにとって苦難の時代、生活のためにコマーシャルな仕事をしなければならない状況にストレスを感じ、’79年にスイスに移住し、Alvinのスペルを入れ替えたNilvaという自己レーベルを立ち上げて、ミュージシャンだけでなくプロデューサーとしても幅広く活躍。現在はNYとヨーロッパを行き来しながら活動中。
私たちとアルヴィン・クイーンとの出会いは、ロニー・マシューズ(p)のアルバム、『So Sorry,Please 』(’85)がきっかけです。バド・パウエルの名曲をタイトル・チューンにしている秀作でした。LPジャケットにスイスの住所が書いてあったので、ファンレターを送ったら、達筆のメッセージを書き込んだ大きなポスターが返送されて来てびっくり! ポスターは現在もOverSeasに飾っています。大物の風格に溢れるアルヴィン・クイーンのプレイ、ぜひご期待ください。
そして、お馴染み、ジョージ・ムラーツの端正な容姿と、それ以上にラインとパルスを併せ持つプレイに惚れ惚れしますよ!ところで、ムラーツアニキは、かねてから交際していたカミラさんと先週挙式したばかり。どこかでアニキに出会ったら、「おめでとう!」と言ってあげてくださいね。
<Tommy Flanagan Trio in Bern Switzweland, 1991>
プログラム
1. Mister P.C.
2. They Say It’s Spring
3. Our Delight
4. ‘Round Midnight
5. Interview
6. Epistrophy
7. Some Other Spring
8. Raincheck
9. Tin Tin Deo
「映像で辿るジャズの巨人達」日曜のお昼のひとときを、ぜひご一緒に!
6/17(日) 正午~ 受講料 ¥2,625
6/6 寺井尚之 還暦祝いに感激!
昨日は、寺井尚之(p)の誕生日!なんと還暦です!
ウィークデーにも拘らず、寺井尚之ジャズピアノ教室の生徒さん達や、常連様が沢山駆けつけてくださいました。 HPでバースデーを知った三重県のお嬢さんが、可愛いお花を一輪手にして、初めてご来店!それに久しぶりのお客様も数多く来てくださいました。その中には、ピアノから木工細工に転向し、アトリエに籠っていた橋本元生徒会長の姿も!
当夜のライブは鷲見和広さんとのエコーズ!演奏は饒舌でも、日ごろ無口な鷲見さんが突然MC役を買って出て、お客様に「Happy Birthdayを一緒に歌いましょう!」と、ベースで絶妙なイントロを出して、ジャズクラブらしく、テンポとノリを変えながら2コーラスの天使の歌声!
鷲見さん、みなさん、どうもありがとうございました!
この日のおすすめ料理は、名付けて「還暦プレート」!お客様も末永く健康で、OverSeasをご愛顧頂けるように、塩麹チキン、有機野菜、お赤飯など体に良いものばかり盛り合わせました。中でも一番の目玉は、輝くグリーン・アスパラ!
OverSeasではおなじみ、摩周湖の川湯温泉、ジャック・フロスト氏からの贈り物!大阪ではめったに味わえない瑞々しい香りと味わい!フロストさま、いつもありがとうございます!
寺井尚之プロ生活40周年、還暦のお祝い、近くから遠くから、お子心の籠ったメッセージやプレゼント、いろいろありがとうございました!寺井に成り代わりまして、この場を借りてお礼申し上げます。
還暦と言えども、バッパー寺井尚之の理想は高い!これからも精進を続けますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
CU