猛暑も一区切り、昨夜から未明は大阪も嵐でした。街は夏休みモードでひっそりしていますが、路地裏でがんばってます。皆様のところは台風大丈夫ですか?
夏休みで帰省されるお客様にお会いできるのも楽しみですが、帰省するミュージシャンもいますよ!
米国でジョージ・ムラーツのアシスタントとして、音楽留学生として修行中のベーシスト、石川翔太(しょうたん)もその一人。
帰国直後の明日、9月13日(金)の荒崎英一郎(ts,fl)トリオに参入いたしますので、Check It! 荒崎さんとバークリー音楽院の先輩になりますね。その後、9月4日に、寺井尚之、菅一平(ds)とトリオでデビューします。
前回遊びに来てくれたときより、どれくらい腕を上げているのかな?とっても楽しみです。
CU
日曜セミナー:カーメン・マクレエを聴く
酷暑の毎日、心より暑中お見舞い申し上げます。ビールを沢山飲んでから、熟睡できずに夜明けに目覚めると汗ぐっしょり・・・グッドモーニング・ハートエイクというより、グッドモーニング・ナイトスエットって感じです。
日曜日に開催された寺井尚之ジャズピアノ教室生徒会主催セミナーで聴いたカーメン・マクレエは、哀しい歌でも不思議にメソメソした趣がなく、それ故怖くもあります。でも寺井尚之の解説と共に、皆さんと一緒に聴けるのはほんとうに幸せなことですね!
寺井尚之はマクレエの歌唱に於ける「温度」の低さと、年齢を重ねるにつれて男性へと変化していく「セクシュアリティ」を強調していましたね。
ビリー・ホリディを「理想の歌い手」として、彼女の芸風を学び尽くし、自分の「個性」を作り上げたことへの共感にはとても納得。寺井はセミナー終了後、今回紹介した34の歌唱のうち、一番良かったのは、晩年のアルバム、”For Lady Day”からのトーチソング・メドレー(If You Were Mine~It’s Like Reaching for the Moon)だったと述懐してました。
セミナーの付録として訳した、アーサー・テイラー(ds)著”Notes and Tones”のインタビューの中で、当時48歳の彼女は、スタンダード曲の歌詞が「月と星と恋愛」ばかりでうんざりしていると語っています。ところが、このメドレーはどちらも「月+星+実らない恋愛」の歌、それ以外には何もない、シンプルなトーチソングでした。模索を続け、結局、最初に戻るというのはマクレエのみならず、トミー・フラナガンもそうだった。アーティストの変遷を考える上で非常に興味をそそられます。なお、このインタビューは、現在カーメン・マクレエのサイトにフルテキストが掲載されています。和訳をご希望の方はどうぞ。
不思議なことに、マクレエ・セミナーの直前はトラブル続き、寺井尚之が指を怪我したり、製氷機が故障したり、挙句の果てにセミナーで対訳を映写するプロジェクターのランプが開講30分前に切れてしまったり・・・一方、対訳を作っている私は、愛を失うこと=「死」であるような、壮年以降の瀬戸際的な歌詞解釈と、自分の母親が抱えている哀しさが、奇妙に相互リンクを張ってしまい、胸が痛くて壊れそうになりながら仕事してました。
何はともあれ、セミナーで皆さんとご一緒にカーメン・マクレエ芸術を鑑賞することで、禊(みそぎ)になったような気がしています。
参加してくださった皆様、心よりありがとうございました。
音源や情報を提供して下さったG先生は、セミナー前日に元マクレエの伴奏者だったウラジミール・シャフラノフ(p)さんにお会いして、色んな裏話を仕入れてくださっていたので、また別の機会にゆっくり皆でお話聞きたいです。おやつのさしいれもありがとうございました。
メインステムの宮本在浩(b)、菅一平(ds)両氏もありがとう!
またジャズ講座発起人、ダラーナさま、来週(土)のジャズ講座の為に大急ぎでプロジェクター・ランプ調達してくださってありがとうございました!
参加してくださった京都のKMさん、ダグのライブはベーシストのピーター・ワシントンが良いアルバムと言っていたそうですので、元気出してください!
そして生徒会あやめ会長、むなぞう副会長、セミナーのプロデュースありがとう!土壇場のコピーなど、大変お疲れ様でした!
なお、セミナーの模様は後日冊子になる予定です。どうぞお楽しみに!
明日は鉄人デュオ!皆で聴きましょうね!
CU
林宏樹(ds)リターンズ:そよ風のようなドラム・ソロだった。
天神祭り宵宮に帰って来ました!東海のバディ・リッチこと林宏樹(ds)先輩。
今回も沢山のファンの方や、学生時代の旧友が沢山集まって、凄い熱気のライブ!「不惑」ジェネレーションの先輩達の中には現役ミュージシャンが驚くほど沢山いらっしゃいました。とはいえ、演奏内容は決して「なかよし会」レベルではありません。強烈なテクニックで繰り出すビートは懐深く気持ちいい!林宏樹さんのプレイを聴くといつも爽やかな気持ちになるのは、テクニックが有り余っていても、決してSHOW-OFFしないところです。「オレってなんでこんなにうまいんやろう!」と才に溺れないところが、「そよ風」の演奏になるのかな?故に、旧友でなくとも、スッポンみたいに喰い入るように林宏樹をCheckしてる人も・・・
そうです!昼過ぎのリハから本番まで、ず~っとこの位置に前傾姿勢で座っていたのが菅一平(ds)、すごいですね~、コワいですね~、ベテランの技を盗んだろうという執念がすごく素敵です!!因みにお隣に座っているのは、林さんより少しだけ後輩で、やはり関西学生ジャズ界にアブラタニありと謳われたドラマーの油谷喜光さんです。
イラチ?イビリ?とにかく速いテンポで行こうとする寺井3ですが、この日は適度にゆったりしてスピード感のあるCaravanが聴けて大満足。Oleoの三位一体プレイも良かったですね。御大二人の間に挟まっての名脇役は宮本在浩(b)、林さんも、客席の新旧ミュージシャンたちも、ザイコウのプレイを絶賛してました。
終演後は久々に駆けつけてくださった関大OBで元祖イケメン・ベーシストの山川孝治さんたちと、’70年代の学生ジャズシーンを総括。毎晩、北新地の高級クラブを掛け持ちして、荒稼ぎしたことや、大卒初任給7万円時代に、売れっ子ホステスさんのサラリー100万円、移籍支度金、千万円で、そういう人は大体「おばちゃんやった。」とか・・・歌伴のトラに行って譜面が読めなくてエラく怒られた話や、キャバレーの壮絶な楽屋風景とか・・・ここでは書けない抱腹絶倒なエピソードが一杯でした。
林宏樹ご本人は、この夜の演奏に決して満足していないそうで、次回は、更に練りに練ったドラムでリベンジすることを誓っておられます。次回 林宏樹(ds)ライブは12月4日(土)の予定。林先輩、心待ちにしてます!!
明日は寺井尚之(p)トリオ、ザ・メインステム!
お勧め料理は加茂なすやズッキーニを二色ソースでグラタンにしてみます。
CU
林宏樹(ds) Check it!
暑いですね!Dog Daysとはこのことか・・・OverSeasのある路地に夕方打ち水すると、少し涼しくなりますが、蚊の餌食になります。天神祭りの週は暑いのが当たり前だけど、ハンパじゃない。プールに行きたいっ!
こんなに暑い大阪をますますホットにしようと今週の土曜日やってくるドラマーがいます。Yes! 東海のバディ・リッチこと林宏樹(ds)リターンズ!
有り余るテクニックをひけらかすこともなく、大きなエンジンで、スイング感を強烈に推進するドラムス、ベテランなのに少年の瞳がたまりません!謙虚で爽やかな余韻を味わった4月のライブ、大好評でしたが今回はいかに?
寺井尚之のオハコ、Mean Streetsや、Eclypsoでも胸のすくようなドラム・ソロを聴かせてくれそうですね!
当日は本拠地三重県からも、ファンの方が来られるそうです。まだ少し席はありますので、必ずご予約の上お越しください。
<REUNION SESSION!>
寺井尚之3
featuring
林宏樹(ds)
and 宮本在浩(b)
日時:7月24日(土)
7pm-/8pm-/9pm- (要予約:入替なし)
Live Charge :2,625yen
お勧め料理には「バジル風味のポーク・ソテー、パスタ添え」を予定!
じゃあ、これからカーメン・マクレエの世界に戻ります。
8月1日のマクレエ講座もよろしく~
CU
カーメン・マクレエ・セミナー対訳準備中
今週は大荒れのお天気でしたね。昨日は通勤時に物凄い雨が降ったようです。夜中に大雨が降るので熟睡できないし、皆様バテバテになっていませんか?
8月1日の日曜セミナーの為に、講師:寺井尚之が厳選したカーメン・マクレエの歌唱は若き日のディック・カッツ(p)さんが伴奏する『By Special Request』(’55)から、晩年のビリー・ホリディ集『For Lady Day』まで、カワイコちゃんシンガー(a girl singer)と言われていた時期から、”おっさん”と間違えられる時代まで、今のところ、全34曲。「いつ対訳くれるねん?」というドスの効いた取立てに泣きながら、さきほどようやく初稿の紙出しが終わったところです。
寺井尚之が解説しやすいように、草稿に加筆していくので、対訳作業はここからがやっとスタート地点。初期のレコーディングには、サミー・デイヴィスJr.との漫才みたいに楽しい掛け合いが聞ける「お目にかかれてうれしいね」など明るいものもあるのですが、マクレエの本領は、やはりトーチソングの悲劇性。何でもなさそうな「一言」に、強い痛みや、皮肉を込めるのがカーメンの必殺技なので、対訳を作っていると、私まで失恋したみたいな気持ちになって胸が痛~くなってしまうのです。
仕事や勉強以外で毎日2時間以上インターネットを使っていると、ネット依存症(Digital Addiction)になってしまうそうですが、このまま毎日何時間もマクレエの歌詞を翻訳していると「失恋依存症」になってしまいそう・・・
マクレエが歌を一生の仕事に選んだきっかけは、譜面がだめなビリー・ホリディの為に、新曲を歌って聞かせる「下歌い」をしたことから、弟子として、友人として彼女の一挙一動を見習ったことだったそうです。ところが、ビリー・ホリディの十八番を歌う時でさえ、ホリディ・フレーズのコピーはどこにも見つかりません。逆に、8月のジャズ講座で取り上げる阿川泰子さんのアルバムでは、慣れ親しんだホリデイの節回しがモロに出てくるので、二つの講座で聞き比べると面白いかも知れません。ホリディに心酔して、身も心もどっぷり浸かったカーメン・マクレエの歌には、表面的なスタイルでなく、そのエッセンスが昇華されているように思えます。
寺井尚之のプレイにも、フラナガンのコピー・フレーズはほとんどないですから、その辺りもたいへん興味深い。
カーメン・マクレエの歌詞解釈が判っていただけるような対訳を目指して、これからさらに磨きをかけていく予定です。
ぜひ、日曜講座にお越しください!
<Carmen McRae講座>
日時:2010年8月1日(日)
時間:正午~3:30予定
受講料:2,500円
今週土曜日は寺井尚之メインステム3!お勧め料理は「蒸豚&チヂミの盛り合わせ」を!
CU
対訳ノート(28) 「あめりか物語」とIndian Summer
梅雨と言えない豪雨、大阪も暑いけどNYは記録的猛暑とか…皆様いかがお過ごしですか? ライブだけでなく発表会や講座の予定が一杯でアップアップですが、なんとか達者に暮らしております。
今週のジャズ講座「トミー・フラナガンの足跡を辿る」では、ザ・マスター・トリオ:『Blues in the Closet』のほかに、講座本第7巻収録の超名盤、Jazz at Santa Monica Civic ’72の未発表テイクで、エラ・フィッツジェラルドの最強の歌声が花火のように炸裂しますので乞ご期待!
その中に”Indian Summer”という名曲があります。インデアン・サマーは夏じゃない。日本語訳すれば「小春日和」ということになっているけど、カウント・ベイシー楽団をバックに歌い上げるエラの歌唱は壮大で、私達日本人が持つ「小春日和」のイメージとは、なかなかつながりませんね。
<Indian Summerって何ですか?>
ウィキペディアで調べてみたらこんな感じでした。
Indian Summerは18世紀に作られた北米の言葉:北半球で通常10月下旬~11月上旬の間の短い温暖な時期、「初霜と紅葉の後、初雪の前」で、温度は21℃以上。
何故「インディアンの夏」なのか?は諸説あるようです。
「ヨーロッパからの開拓者に対するネイティブ・インディアンの襲撃が、春と夏に限定されており、秋の温暖な気候にインディアンの脅威を感じるため。」とか、「”Indian”という言葉自体に”偽の、いつわりの”という意味があるから」とか言われているらしい。白人が勝手にインディアン(インド人)と呼んだだけなのに、”ニセモノ”と言われるのも迷惑な話ですね。
夏の一番暑い時期を”Indian Summer”という地方もあるらしいけど、歌には余り関係ないですね。
というわけで、歌を楽しむという視点からは、Wiki諸情報はSo What?なものが多かった。一番上の写真はエラの壮大な歌に似つかわしいと思うのですが、対訳を作る際に参考になったとは言い難い。
<昔の日本人は偉かった!>
そんな時はやはり書物です!最近読んだ永井荷風の紀行文的短編小説集「あめりか物
語」に、季節に敏感な日本人の感性でインディアン・サマーを端的に捉えた記述がありました。
岩波文庫:あめりか物語 「春と秋」より抜粋。p.104
「11月の第2日曜の頃・・・この国では、インデアン、サンマーともいうべく、空は限りなく晴れ、午後の日光(ひかげ)はきらきら輝きわたっていたけれど、しかし野面(のもせ)を渡る風は、静かながらに、もう何となく冷たい。裏手の小山から、処々に風車の立っている村のほうを観ると、樫(オーク)の森が一帯に紅葉していて、その間から見える農家の高い屋根には、無数の渡り鳥が群れを成して、時々一団、一団に空高く舞い上がる。程なく来るべき冬を予知して、南の暖かい地方に帰って行くつもりなのであろう。…」
「インデアン、サンマー」というのが発音そのまんまでええ感じ!「あめりか物語」は明治41年(1908年)の短編小説集で、インディアン・サマーの日本文学にデビューの書かも。短編 「春と秋」は、ミシガン州南部の神学校に留学した日本人学生が、異国という特殊な状況で織り成す物語。
「あめりか物語」は、荷風が実際に米国に洋行した経験を元に書かれた作品で、海外旅行など不可能で、TVもなかった明治時代に大好評を博したそうです。あちらの気候風土だけでなく、当時のブロードウェイや、娼館の様子などもリアルに描かれていて、今読んでもすごく面白い。現在のアメリカを扱った紀行文やTV番組より面白いかもしれない。何しろ、書物でしか知らない異国の地に渡った荷風の興奮や驚きが、よく伝わってきます。ジャズ・スタンダード曲も明治時代に作られたものが多いし、対訳作るのにとても参考になりました。 娼婦が歌う唄(ブルース)の歌詞が英語で記述されてる箇所もありました。温故知新!昔の日本人は凄いね!
<歌の空気>
荷風の文章を読むと、歌の空気がよく判る。初夏に「わたし」は失恋する、傷心を抱え季節は冬へと向かい、木々の葉は赤く色づき風は冷たい。そんな物悲しい晩秋に訪れる暖かなインディアン・サマーの青空と輝く太陽に、失われた恋が甦る。厳寒の冬に向かう暗い心に、優しく灯される一条の光のような短い季節インディアン・サマー・・・エラの歌唱を聴くと、たとえ2コーラス目に歌詞を間違えようと、ワインレッドの樫の森や青い空、紅葉を照らす日光や、美しい風景を映す湖の情景、失恋の痛手から立ち直り、厳寒の冬に立ち向かおうとする心情がしっかりと現れます。こういうのを「音楽的真実」というのでしょうか?
インディアン・サマー
(Al Dubin/ Victor Herbert)
懐かしのインディアン・サマー、
お前は6月の笑顔の後に
やって来る涙、
お前は幾多の夢を観る。
私とあの人の叶わぬ夢、
二人で夏の始めに観た夢を。
大事な言葉を言われぬままに、
終わった恋の心の傷を
見守る為に来たんだね。
お前は、はかなく消えた6月の恋の亡霊、
だから私は呼びかける、
「さようなら、インディアン・サマー」と。
エラの歌うIndian Summerを土曜日のジャズ講座で、寺井尚之の解説で、ご一緒に聴きませんか?
お勧め料理はジンジャーやワイン・ヴィネカーを利かせて、暑い季節にぴったりの、ビーフストロガノフにします。
CU
対訳ジゴク Again・・・
日本列島がW杯に熱狂してるうちに7月到来!皆様、寝不足と暑さでバテていませんか?野球は好きでも、サッカーは全く音痴の私、やっと「オフサイド」の意味が判った夜に、岡田ジャパン惜敗、「よく頑張った!」と激励したいけど、疾走する選手達の一瞬の動きが和音なのか不協和音なのかよく判らないし、まだまだサッカー本来の「醍醐味」は味わえてません。
ジャズも然り、ジャズに興味を持ち始めた方が、ジャズ本来の「醍醐味」を味わうためには、ライブや名盤を聴くときに、音楽の仕組みや、曲やミュージシャンの背景など知っていたら、余計に楽しいですよね!
ジャズの醍醐味、トミー・フラナガンの醍醐味を味わうには、ジャズ講座は絶好の機会、私の対訳業務はジャズ講座から始まりました。現在「トミー・フラナガンの足跡を辿る」はエラ・フィッツジェラルドの音楽監督時代を過ぎ、対訳の仕事は一段落だったのですが、ジャズピアノ教室生徒会の要望で、8月にカーメン・マクレエのセミナーをやることに決まり、思いがけなく対訳に明け暮れる恐ろしい日々復活。
講師、寺井尚之がカーメン・マクレエの全ディスコグラフィーから選りすぐったのは目下34曲、実は、ずっと昔のジャズ講座創世記にカーメン・マクレエを取り上げたことがありました。その時聴いたカーメンの“Never Let Me Go”は本家ナット・キング・コールのロマンティックな味わいとは正反対と言っていい痛切なもので、頭をガツンと殴られたほど大ショックでした。「歌詞解釈」というコンセプトが身に染みたのは、その時が初めて、以来、歌詞対訳する際は、歌手の表現しようとしている意味を少しでも日本語にしてあげたいと思いながら訳しています。歌詞解釈の貧しい歌手の歌は訳していてもつまんない…そういう意味でカーメン・マクレエは最も『やりがい』のある歌い手です。嗚呼…伴奏者だったディック・カッツさんにもっとマクレエの話を聴いておけばよかった…後悔先に立たず。
鬼講師、寺井尚之の催促が恐ろしい…という訳で今週はブログを書く暇がない位切羽詰った状況になってしまいました。
カーメン・マクレエの前にエラ・フィッツジェラルドのサンタモニカ・シビックの未発表テイク3曲も通常ジャズ講座の為に作らなくちゃ…こちらはエラが歌詞をトチった為にオクラになっていたトラックです。歌詞をトチることでは定評のあるエラの豪快なトチリぶりも、皆で一緒に楽しみましょう!歌詞をトチっても音楽的には全くトチらないエラ・フィッツジェラルドの言葉を超える凄さが味わえると思います。
ジャズ講座「トミー・フラナガンの足跡を辿る」
日時:7月10日(土) 6:30pm開講 受講料 2,500円
今月の名盤:『Blues in the Closet』(The Master Trio)
未発表テイク from 『Aurex Jazz Festival ’82 All-Star-Jam』『Live at Santa Monica Civic』
;生徒会日曜セミナー「カーメン・マクレエ講座」
日時:2010年8月1日(日) 正午~3:30(予定)
受講料:2,500円(要予約)
因みに日曜セミナーでは、久々に牛スジカレーやパウンドケーキ作る予定です!どちらも初めての方大歓迎!皆さん、ぜひお越しくさだいね。
明日の鉄人デュオもよろしく~
じゃあ、またカーメン姐さんの元に戻ります。CU
Coming Events!
サッカーや選挙で盛り上がる梅雨の日本列島、皆様ご機嫌いかがですか?
明日の寺井尚之The Mainstemは、6月PartⅡこの時期に因む名曲を色々取り揃えてお楽しみいただく予定。
6月の寺井尚之の悩みは梅雨のじとじとした湿気。北米に梅雨はないので6月ゆかりの曲もすっきり爽やか!なのに湿度が上がるとピアノのサウンドもじめついて、寺井の専売特許の倍音をふんわり膨らませるのが難しいらしい。6月の暖かな夜に彼女を口説く名バラード、ビリー・エクスタインの”I Want to Talk About You”もイメージどおりの響きにするのが大変。先週はそれでも面目躍如、首尾よくうっとりする響きになっていましたが明日はどうなるかしら?天気予報は曇りのち雨だって。雨も心模様で色んな歌になりますね。ワールドカップのサポーター達にとっては、天から降り注ぐ勝利の美酒か?涙の雨か?The Mainstemはどんな雨の名曲もスカッとスイングさせますよ!皆様お楽しみに!
7月はThe Mainstemやジャズ講座のほかにもうひとつおすすめライブがあります。
<7月24日:林宏樹Comes Back!>
4月にセンセーションを巻き起こした伝説のドラマー林宏樹!ベテランでありながら渋さ知らずのフレッシュな演奏ぶり、確かななテクニックと強力なスイング感で清涼感たっぷりのライブでしたよね!アンコールのご要望に答え7月に再演します。
林さん、若い衆も期待してます。お待ちしてますよ~。
満員が予想されますのでご予約はお早めに!
REUNION SESSION!
寺井尚之3
featuring
林宏樹(ds)
and 宮本在浩(b)
日時:7月24日(土)
7pm-/8pm-/9pm- (入替なし)
Live Charge :2,625yen
<8月1日:「寺井尚之ジャズピアノ教室」生徒会セミナー、カーメン・マクレエ講座>
こちらはいつもご贔屓いただいている通常のジャズ講座「トミー・フラナガンの足跡を辿る」とは違う番外編。生徒でない方も大歓迎いたしますので、どうぞお越しください。
ジャズ初心者の生徒達のために、有意義なイベントを定期的に開催している生徒会。この夏はジャズ・ヴォーカルを熱く語る集いを開きます。今までビリー・ホリディ、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーンと、ジャズ・ヴォーカルの女王と呼ばれる歌手についてセミナーを開催して来ましたが、今回はカーメン・マクレエの全貌を皆で聴きましょう。
講師、寺井尚之は現在カーメン・マクレエの音源をつぶさにチェック中。「女優が役柄や脚本で仕事を選ぶように、私の選曲のキーポイントは第一に歌詞」というカーメン・マクレエのヴォーカル世界、今まで何人の歌手が彼女の節回しをパクって成功したことでしょう。寺井尚之がセレクトしたマクレエの女優系歌詞解釈の翻訳は不肖私が担当させていただきます。マクレエの演劇性は基本的にソフォクレス、ヒロインは決してメソメソしない。高倉健の様に背筋を伸ばして自分の悲劇を静かに語ります。マクレエの師匠ビリー・ホリディならいじらしいセリフをマクレエが歌うと地獄の淵から呼びかけられているように聴こえるときもある。
ハッピーエンドを標榜する寺井尚之とマクレエの視点は対照的にも思えますが、だからこそ観えてくる音楽的要素に期待!
<Carmen McRae講座>
日時:2010年8月1日(日)
時間:正午~3:30予定
受講料:2,500円
では、明日The Mainstemでお会いいたしましょうね!
お勧め料理は、極上の山形牛を寺井尚之が料理した『黒毛和牛の赤ワイン煮込み』、サッカー観戦で寝不足になったあなたにもおいしく召し上がっていただけるように、さっぱりした添え野菜と一緒にお召し上がりくださいませ。
CU
ハンク・ジョーンズ氏 告別式
去る5月17日に他界されたピアノの巨匠、ハンク・ジョーンズ氏、先週のジャズ講座で聴いたトミー・フラナガンとのデュオ作品、『I’m All Smiles』では気品と獰猛さを兼ね備えた肉食系の老獪なプレイに感動しました!
ジョーンズ氏の告別式がやっと決まったようです。
Memorial Tribute for Jazz Great Hank Jones
日時:6月26日(土) 2pm-5pm
場所:Abyssinian Baptist Church, 132 Odell Clark Place NY, NY.
アビシニアン・バプティスト教会は、NY最古の黒人教会、日曜日のゴスペル礼拝はハーレム・ツアーの目玉として各国からの観光客で溢れているそうですね。偉大なる黒人音楽家ファッツ・ウォーラーのお父さんはこの教会の牧師でした。
昨年他界したフレディ・ハバートの告別式もたしかこの教会で行われたとか・・・
恐らく大勢のファンがつめかけ、多くのミュージシャン達が演奏を捧げることになるでしょう。勿論入場無料ですがあくまでお葬式です。日本と同じ、ショート・パンツやタンク・トップなど肌を露にした服装はNG、当たり前のことですが、教会内で許可なく写真撮影することも禁止ですので宜しくお願いします。
ハンク・ジョーンズさんのご冥福を改めてお祈りします。
合掌
追記:今しょうたんから連絡がありました。当然ながらジョージ・ムラーツもメモリアルに出演予定なので、しょうたんも付き人として告別式に参列するそうです。
ちなみにしょうたんは夏休み帰国の、8月13日(金)&9月4日(土)に、OverSeasに出演予定です。Check It!
NYタイムズ巨匠ハンク・ジョーンズ追悼報道に非難轟々
先週の寺井尚之バースデイは、色々お心遣いありがとうございました。摩周湖からジャック・フロスト氏が差し入れしてくださったスーパー・グリーン・アスパラはパスタに添えて皆で楽しみました。ごちそうさまです!!
6月12日(土)のジャズ講座「トミー・フラナガンの足跡を辿る」のOHP準備もなんとか出来てほっと一息、今回はトミー・フラナガン+ハンク・ジョーンズの最後のピアノ・デュオ・アルバム『I’m All Smiles』が登場いたします。「ジャズピアノの系譜」では同じ流派の中に併記される二人の巨匠、でも、同じ地方の同じ水から作られた極上の純米大吟醸も杜氏によって、味も香りも違うもの。火花散るセッションを寺井尚之の実況中継でお楽しみくださいね! ジャズ講座:6月12日(土) 6:30pm- 受講料2,625yen 要予約
<電子版NYタイムズ”或るジャズマン、終の隠れ家”>
NY在住のジャズ・ミュージシャンが亡くなったと知らせが来ると、まずチェックするのが電子版NYタイムズの”お悔やみ欄(Obituaries)“のページです。2001年にトミー・フラナガンが亡くなった時はささやかな報道でしたが、昨年グラミーの「特別功労賞(Lifetime Achievement Award)」を受賞したハンク・ジョーンズさんの扱いはだいぶ大きなものでした。ピーター・キープニューズによる、よくまとまった追悼記事が掲載された翌日、NY市の色々なニュースをブログ形式で紹介する”City Room”のページに、ハンクさんが倒れる前に住んでいた部屋の様子が写真入りで掲載され、大きな波紋が広がりました。
「A Jazzman’s Final Refuge (或るジャズマンの終の隠れ家)」と題されたこのブログ記事は、先日91歳で死去する直前まで現役だった伝説的ジャズ・ピアニスト、ハンク・ジョーンズの賛美から始まっています。その華やかなキャリアと裏腹に、彼の私生活はアッパー・ウエストサイドの公団アパートのそのまた一部屋を間借りし、三食出前で済ます寂しい独居生活だったことに焦点を当てています。寄稿したタイムズの記者、コリー・キルガノンは、たまたま筋向いに住んでおり、亡くなった翌日に、ハンクさんに自宅の一室を貸していた大家さん(写真の人物)が掃除をするために部屋の点検をした時に立ち会って取材したということになっています。この大家さんはハンクさんの友人でもあり、現在もアップステイトの施設で暮らしていらっしゃるジョーンズ夫人の許に、ハンクさんを車で送ってあげたりするなど、色々面倒を見ていた方らしい。
ハンマーなどの工具を使ってドアをこじ開け入ってみると、世界的なピアニストの居室は散らかっていた。ベッドは整頓されておらず、その周りにスーツケースや譜面、クラシック音楽のCD、シャーロックホームズの本などが乱雑に置かれていた・・・世界的なピアニストは、写真に写っているヤマハのキーボードで練習していたであろうことも書かれています。クローゼットをあけると、その中には、予備の電球、ブランド物のネクタイやスーツ、最高級シャンペンや、ピアノトリオ用のパート譜のファイルなどがあったということまで書かれています。(寺井尚之は「ハンク・ジョーンズほどの名手なら練習は安物のキーボードで問題ない!頭の中にサウンドがあるから、例え紙に鍵盤を書いただけのものでも、充分練習できるんや。」と言ってます。)
それ以外にも、「TVでスポーツ観戦しようと誘っても、一日中練習していた。」「クラシック音楽のファンだった。」というような大家さんの談話も紹介されていて、NYならではの記事からという印象でしたが、高齢でもお元気なハンクさんのことをよく聞いていた私たちには、少し意外な感じもありました。
<覗き見趣味はやめろ>
このブログにはコメント欄があり、最初のうちは「伝説的な巨匠の素顔が垣間見れてよかったです。」みたいなポジティブなものが多かったのですが、関係者達が寄稿するにつれて様相が変っていきました。ハンクさんを個人的によく知っており、彼の公式サイトを運営するウエブ・デザイナー、マイルス・モリモト氏のコメントがきっかけになって風向きはガラリと変わります。
「こともあろうにNYタイムズのような一流メディアがハンク・ジョーンズを孤独な老いぼれのように報道するとは何と嘆かわしいことか!彼は心臓のバイパス手術を受けてから、ハートウィックの農場に一人で住むことが出来なくなったりマンハッタンで間借りしていた。認知症の奥さんをケアするには医療設備が整った施設に入れなければならない。その費用が非常に高額なため、自分は狭い部屋でつつましく生活していたのだ。
キーボードで練習していたのは、アパートにあるピアノの調律がひどくて練習にならないのと、近所迷惑にならないように配慮していただけ。・・・自分のバイパス手術や家族の病気、弟のサドやエルヴィンに先立たれても、彼は最後までユーモアと品格を失わず、演奏で皆を楽しませたのに・・・
さあ、タイムズさん、お次はどうする?最近なくなったレナ・ホーンのクローゼットを覗いて、整頓されているかどうかチェックするのかい?」
これが発火点となり、共演歴のあるチャーリー・ヘイデン(b)夫妻や、ハンク・ジョーンズのマネジャーが「プライバシーの侵害、人種差別では?」と声を上げ、ボルテージは高まる一方、とうとう沈黙を守っていたハンク・ジョーンズの甥、姪にあたるサド・ジョーンズの息子さんと娘さんが「自分たちは叔父の私室の鍵を預かっていたが、部屋を開ける際、何の断りもなかった。叔父は私生活を大事にした人だったから、こういう形の報道は好まなかったはず。」
と発言。
ハンク・ジョーンズを撮影した写真家キャロル・フリードマンたちは実名で「プライバシー侵害!大新聞がタブロイド紙みたいなことするな!!」と大合唱、ついにパブリック・エディターと呼ばれる監査役的な編集者、クラーク・ホイトがこの件について寄稿「報道というものは、常にプライバシー侵害と切っても切れない宿命がある。しかし今回はウエブログということで、紙面の記事と比較すると、編集に甘さがあったのではないか?」と今後の課題を提起して一件落着を図りましたが、実名匿名、賛否両論、どさくさに紛れてちゃっかり自己宣伝したり・・・現在もコメントは続いています。
ハンクさんは体調を崩し、この部屋からホスピスに移られたのだから、部屋は散らかっていて当然ですよね。自分の部屋の惨状を省みると、写真の部屋は別に乱雑にも見えません。キルガノン記者は、バド・パウエルをモデルにした映画”‘Round Midnight”の冒頭シーンなど、悲惨な死を遂げたジャズメンたちの歴史にステレオタイプされているところがあったのかもしれない。
最後の住み家が大邸宅でも四畳半でも、ハンク・ジョーンズさんが巨匠であったこととは全く関係ありません。
最後に生前のハンクさんがアップステイトの自宅でビバップについて語っている映像を見ながら、土曜日のジャズ講座を楽しみにしておいてくださいね!数年前の「敬老の日」特番で、NHKが同じこのおうちで撮影したドキュメンタリー番組を観たのが懐かしいです。こっちのほうがずっと散らかっているようにも見えますが・・・
CU