地震や津波も怖い季節の変わり目ですが、皆さんいかがお過ごしですか?OverSeasではスプリング・ソングもチラホラ聴こえて、27日(土)のトリビュート・コンサートが待ち遠しいな!
NYのジョージ・ムラーツ兄さんも、何とか寒い冬を乗り切って元気にしているようです。先月末には、NYのチェコセンターで、リッチ・ペリー(ts)、ジョーイ・バロン(ds)と組んだ自己トリオで特別コンサートを開催した模様。もうすぐ発売される同メンバーでの新譜とDVDが楽しみ!春にはハンク・ジョーンズとアルゼンチンに旅した後、ヨーロッパ各地を色んなフォーマットでツアーします。
<チェコのスター・ピアニスト>
ところで、最近、ムラーツ兄さんをWEB検索していたら、うちのHPに行きあたったと、チェコからEメールが来ました。丁寧な英文で友人のジョージ・ムラーツや、尊敬するトミー・フラナガンの写真が色々載っていて楽しかったと書いてあります。
送信者のお名前にはEmil Viklicky(エミル・ヴィクリツキー)とあり、なんとムラーツ兄さんが、チェコ大統領主催プラハ城コンサートや、チェコのスター・ミュージシャン、イヴァ・ヴィトヴァと組んだアルバム、『モラヴィアン・ジェムズ』などで頻繁に共演している、チェコの第一人者でした!上のポートレートはMartin Zeman撮影、バロック的な陰影があって、いかにもヨーロッパのピアニストという雰囲気ですね!ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの絵画みたい!
シカゴにて:ヴィクリツキー(p)、ムラーツ(b)、ビリー・ハート(ds)
エミル・ヴィクリツキーさんは、1948年、チェコのモラヴィア地方の生まれのピアニスト、作編曲家。ヴィクリッキーと表記されることも多いですが、ご本人に確認したらヴィクリツキーの方が近いそうです。ムラーツ兄さんより4歳年下、寺井尚之より4歳年上です。ヨーロッパ各国のジャズのコンペを総ナメし、共産党支配が強化される直前の’77年に米バークリー音楽院に奨学生として入学、ビロード革命後はチェコ・ジャズ界のリーダーとして活躍を続けるトップ・ミュージシャンです。クリアな音色とオスカー・ピーターソンばりのダイナミックなプレイは、寺井尚之を唸らせる紛れもない正統派、一方、モラヴィア地方の民謡をジャズとして演奏するなど、チェコのアイデンティティを失わない音楽性から、ヨーロッパでは『1Q84』(村上春樹)のずっと以前から、「ジャズのヤナーチェク」と呼ばれているそうです。
<友達の友達はともだち!>
ジョージ・ムラーツとエミル・ヴィクリツキーさんとの出会いは、’76年、ユーゴスラビアのジャズフェスティバルだったそうです。以来、アメリカのトップ・ベーシストとなったムラーツがチェコにお里帰りする際に共演するピアニストは、本国のトップであるヴィクリツキー!ということになっているみたい。普段は、ベース: Frantisek Uhlir (フランティセック・ウーリール)とドラムス:Laco Tropp (ラコ・トロップ)という長年のレギュラー・トリオで活動しているようです。特に、ベースのウーリールは、ムラーツばりのテク二シャンで、Youtubeを観てびっくりしました。ヴィクリツキーさんによれば、彼はチェコのナンバー1ベーシストで、特に弓の技量はずば抜けてすごいらしい・・・
昨年、ジョージ・ムラーツ、ルイス・ナッシュ(ds)との最強メンバーで日本制作のリーダー・アルバム 『シンフォニエッタ/エミル・ヴィクリッキー・トリオ』をリリースしており、日本での人気も高まるかも知れませんね。
なぜか別府温泉でポーズを取るレギュラー・トリオ:左からヴィクリツキー、ウーリール(b)、トロップ(ds)
ヴィクリツキーさんは、今までにも政府から派遣され、愛知万博などで演奏していて、日本のジャズファンの前で演奏したくて堪らないそうです。息子さんは腎臓移植の権威ですが、やはり親日家で日本語に堪能とのこと!5月に中国に飛び、上海万博で演奏予定があるのですが、その際、寄り道をして、ぜひジョージ・ムラーツと懇意なJazz Club OverSeasで演奏したいと切望しています。プラハの宮殿と余りにも違うヴェニューだけど、いいのかしら・・・
チェコを代表する巨匠ピアニストのプレイが、間近で聴けそうな予感がします!
詳細は近々お知らせいたしますのでご期待下さい。
明日は鉄人デュオ!スタンダード・ナンバーをベテランの懐の深さでさりげなく料理するのが聴きどころ!私も鼻歌でハッシャ・バイでも歌いながら、シーフード・グラタンでも作ろうかな・・・
CU
トミー・フラナガンの思い出:Jazz Clubbing in NY
冬季オリンピックも終盤、2月は瞬きする間に終わりそう・・・皆さま、お元気ですか?トミー・フラナガンが得意としたスプリング・ソングの季節も間近ですね。トミー・フラナガンを誕生を記念して3月27日(土)にトリビュート・コンサートを開催いたします。チケットはお早めに!
日頃、夜遊びするチャンスは全くありませんが、NYの夜遊びの楽しさを教えてくれたのはトミー・フラナガンです。生まれて初めてNYに旅行した2日目のことでした。寺井尚之とフラナガン家にディナーに招待してもらって、ダイアナ夫人の手料理や、日本で見たこともない位大きなオリーブ、ヨーロッパから持って帰って来たリキュール類をしこたまごちそうになった夜です。ダイアナにお料理を作ってもらったのは後にも先にもこの時だけ。レーズンが一杯入ったミート・ローフで、結構おいしかった。私はとても緊張していたので、いくらお酒を飲んでも全然酔えなかった・・・
ずっと前に書いたことがありますが、食後、バッパーの意義についてトミーとダイアナの間で、ヘヴィー級の大論争勃発、その結果、ダイアナはしくしく泣きながら、寝室に退場してしまいました。ジャズの巨匠がジャズの歴史について激しく論争するのを目の当たりにして呆然としていました。
やがて、「さあ、ヒサユキ、NYに来たんだからジャズを聴きに行こうか。」トミーは、いつも通りの物静かなポーカーフェイスに戻り、さきほどの興奮を抑えている様子もありません。まるで超人ハルクかスーパーマンみたいで、すごく不思議だった。
ダイアナを気遣った寺井が「いいえ、もう遅いから帰りますよ。」と言うと、トミーは「いい子ちゃんだな。」とクスクス笑い。おまけに鼻声のダイアナが寝室から「いいえ!行ってらっしゃい、行かなくちゃ!!」と大声で言うので、結局11時前にダイアナを残し、トミー、寺井尚之、私の三人だけで出かけることになりました。トミーはまるで一般人みたいに、寺井尚之と一緒に雑誌『New Yorker』のイベント情報欄、”Goings On About Town”を詳細にチェックしてから、「一番の老舗で、今夜の出演者が一番良い」と、数々の歴史的ライブ録音されたヴィレッジ・ヴァンガードに連れて行ってもらうことになりました。
ヴィレッジ・ヴァンガードはグリニッジ・ヴィレッジにあるジャズクラブ、ホワイトハウスにも招待された名物オーナー、マックス・ゴードンが1935年に創業、ゴードンの他界後、奥さんのロレイン・ゴードンが後を引き継ぎ現在も盛業中。
ダウンタウンに向かうイエローキャブの中でトミーは言います。「汚い店だから、きっとびっくりするよ。」
到着すると、アーチ型の扉の横に、マジックで手書きした丸文字で今夜の出演者が掲示してありました。”George Adams, Don Pullen・・・”。
ジョージ・アダムス(ts)=ドン・ピューレン(p)双頭カルテットは、同じチャールズ・ミンガス(b)バンドで共演したダニー・リッチモンド(ds)と、骨太のプレイで聴かせるキャメロン・ブラウン(b)のレギュラー・コンボ、ミンガス・ミュージックを継承していて、バップを基本にしながらフリー・ジャズの要素もあり、ブラックでパワフルな野武士みたいにワイルドなバンド、エレガントなトミー・フラナガンがこのバンドを選んだのは、始めは少し意外でした。
お店の入口はもうひとつ地下にあります。階段を降りて行くと、物凄い迫力の演奏が聴こえてきます。でも、ここで立ち聞きしているとオーナーのマックス・ゴードンがチャージを集金に来るんだとトミーが言ってた。ゲスト扱いで、ミュージシャンの写真が所狭しと張ってある壁際のベンチシートに案内されました。テーブルクロスも絨毯もないし、床はむき出しのコンクリート、簡素な内装だけど、そんなことはどうでもいいや。歴史を感じる趣、なによりもバンドの迫力がすごい!エスニックな帽子のアダムスは白目が真っ赤、真っ黒な肌から汗がしたたり落ち、テナーが雄叫びを上げて泣いている。ランニング姿のピューレン(p)は鍵盤上に拳をローリングさせる独特の奏法で有名ですが、生で見ると、池に小石を放り投げて何度もジャンプさせるのと似ています。腕と背中の筋肉が引っ越し屋さんみたいに盛り上がってます。二人のソロがキャメロン・ブラウン(b)のビートと、ダニー・リッチモンド(ds)に替わって、当時はまだ駆け出しのルイス・ナッシュ(ds)が繰り出すリズムに強力にプッシュされ、4人のサウンドが炸裂するのを感じました。隣のトミーはピューレンの拳ソロを聴きながら「Oh, Pretty! 曲もきれいだな!」なんて言いながらニコニコしてます。「すごくパワフルですね!ハード・ロックみたいに電気使ってないけど、もっとエネルギーを感じます。」って言うと、「Yeah! they are rockin’!」って喜んでいたけど、寺井尚之にはお客さんの魂を掴む音楽の迫力を教えようとしていたのかな?
セットが終わると、バンドのメンバーや客席にいたナマズ髭のスティーブ・トゥーレ(tb)など沢山のミュージシャン達がどこからか集まってきて、順番にトミーに挨拶をします。その一人一人にトミーがヒサユキを紹介するので、寺井尚之はその度に立ちあがって握手をしなくてはなりませんでした。
結局その夜は、真夜中まで、三人並んでジョージ・アダムス=ドン・ピューレン・カルテットを堪能しました。演奏中、ふとトミーの方を見ると、ポケットからお札を出して、こっそり数えてた。ピアノの神様がお札を数えているのが何とも不思議な感じでしたが、次のお店に連れていくための軍資金を数えていたんですね・・・トミー、ありがとう!
ヴィレッジ・ヴァンガードだけでなく、ダウンタウンではブラッドリーズ、スイート・ベイジルやブルーノート、アップタウンでは、中華レストランで極上のピアノジャズを聴かせたフォーチュン・ガーデン・パヴィリオン、セントラルパークのタヴァーン・オン・ザ・グリーン・・・ジャズ・クラブ以外のちょっとおいしいレストランなど、本当に色んなところに連れていってもらいました。トミーが心臓の為に食事制限するまでは、ほんとにグルメだったから・・・
というわけで、明日のThe Mainstemトリオにはメキシコ料理にちょっとクレオールが混じった、おいしいエンチラーダを作ってお待ちしています。
CU
対訳ノート(25)Speak Low
寒い日が続きますが、日差しは春が近くに来ていることを教えてくれます。東京方面は雪だったそうですが、皆様いかがお過ごしですか?先週のジャズ講座は、とっても盛り上がりました。『The Magnificent』(トミー・フラナガン3)には別テイクが沢山公開されていて、テイク数の推理は寺井尚之ならではの説得力がありました。師匠への愛に溢れる激辛トークがどうにもとまらなくなって、あやうく最終新幹線に乗り遅れそうになったお客様も…間に合ってよかった!
ジョージ・ムラーツ(b)、アル・フォスター(ds)時代のトミー・フラナガン3の作品、”The Magnificent”は「品格あるもの」という感じかな?日本盤のタイトルは”Speak Low”です。
<Speak Low 歌のお里>
“スピーク・ロウ”は、OverSeasのライブの定番として長らく聴いてきました。時たま、バーや居酒屋と間違えて来られたお客様たちが演奏中にワイワイ騒ぐと、寺井尚之がこの曲を演奏して「小声で話してや~!」とアピールしていたので、長年の常連様にはとっても馴染み深いナンバーですね!
クルト・ワイル作曲、オグデン・ナッシュ作詞の<スピーク・ロウ>のお里は、1943年のブロードウエイ・ミュージカル、『ヴィーナスの接吻 One Touch of the Venus』、美術館のヴィーナス像の薬指に床屋の青年が婚約指輪をはめると生身の美女に変身して・・・というロマンチック・ドタバタ・コメディーで、48年にきれいなエヴァ・ガードナー主演で映画化されています。ブロードウェイではヴェーナス役としてマレーネ・ディートリッヒに白羽の矢が立ったのですが、俗っぽくてお色気過剰で、舞台で脚線美をモロ出しするのは娘の教育に悪いと言って断ったらしい。
作詞のオグデン・ナッシュは「アメリカ最高の小唄作詞家」としてつとに有名ですが、ブロードウェイでヒットしたのはこの『ヴィーナスの接吻』だけ・・・この作品では脚本も担当しています。クルト・ワイルは皆さんもよくご存知、『三文オペラ』で有名ですね。ドイツで活動していましたが、ナチのユダヤ人迫害を逃れ米国に移住した人です。数年前にInterlude に書いたことがありますが、この歌詞の冒頭、”Speak Low, When you speak love”はシェークスピアの有名な喜劇『空騒ぎ: Much Ado About Nothing 』の名セリフ、一目惚れした女性に恋を告白できない内気な親友の為、貴族ドン・ペドロが、仮面舞踏会の夜、親友になりすまし、このセリフで彼女を口説きます。
ミュージカルについてあれこれ相談をしているとき、クルト・ワイルが何気なく引用したシェークスピアの台詞にヒントを得たナッシュが一気に詞を書き上げたと言われています。A-A-B-A形式なんだけど、小唄どころか56小節の長い歌、Aの部分が各16小節で、サビのB部分はたった8小節しかない変形サイズ。
『The Magnificent』では冒頭の”Speak Low…”のところを、わざと朗々と歌い上げてみせるところが、いかにもフラナガン流ジョークに思えます。まるで、内緒話を大声で言ってびっくりさせようとしているみたいで可愛い!原曲はゆったりしたハバネラだけど、フラナガンはin twoと4beatを駆使してメリハリのある楽しい演奏解釈でした!
映画『ヴィーナスの接吻 One Touch of the Venus』の”Speak Low”のシーンはyoutubeで観れます。オリジナル歌詞はネット上にありますが問題が多い。歌詞を勝手に載せるといけないので、こちらを三行目から読んでみてください。
Speak Low スピーク・ロウ
Ogden Nash/ Kurt Weill
恋を語る時は
小声で囁いて。
夏の日は
瞬く間に色褪せる。
恋を語る時は
ひそやかに。
二人の時は駆け足で過ぎ、
海に漂う舟の如く、
あっと言う間に離れ行く。愛しい人よ、
ひそかに甘く囁いて、
恋は一瞬の火花、
すぐに闇へと消え去るもの。
どこにいようと、
すぐに明日は来る。時はあまりに速く、
恋はあまりに短い。
恋は輝く純金で、
時は泥棒のように恋を奪う。愛しい人よ、
私たちは遅れているよ、
カーテンが降りると、
全てが終わる。私はじっと待っている、
愛しい人よ、
お願いだから囁いて、
愛の言葉を
さあ早く!
当店の演奏中は、恋愛でも経済問題でも、常にスピーク・ロウでお願いいたします。
土曜日のメインステムをおたのしみに!私は赤身の多い特上三枚肉と、大きな白花豆でポーク・ビーンズを作ってお待ちしています。
CU
春のトリビュート・コンサート 3月27日開催!
暖かくなったり寒くなったり、三寒四温というには余りに暴力的なダイナミクスですね。NYやワシントンDCは大雪で大変みたいですが、皆さんお元気ですか?今週の月曜日には昨年亡くなったディック・カッツさんの告別セレモニーがNYセント・ピーターズ教会で行われ、参列したダイアナから「ディックはNYに出て来て初めて知り合ったピアニストで友達だった。寂しい~!!こんな気持ちを判ってくれるのはあんただけ、今夜は眠れないの・・・」と涙の電話がかかってきて、私も寂しい~ 冬は心まで寒くなるのかな?春よ来い!早く来い!
というわけで、トミー・フラナガンが誕生した3月を祝し、今年も心をこめて開催します。
『第16回トミー・フラナガン追悼ライブ Tribute to Tommy Flanagan』
日時:3月27日(土) 7pm- /8:30pm- (入替なし)
演奏:寺井尚之ピアノトリオ The Mainstem
前売りチケット3,150円(当日3,675円)
春のNYでフラナガンが愛奏したスプリング・ソングの数々は甘さとほろ苦さが溶け合って、アップビートな春ならではの感動をもたらしてくれます。春野菜みたいにアクの強いバップ・チューンはフラナガン流に、アクを流し去り、素材の繊細な持ち味が出るように聴かせてくれます。
演奏は寺井尚之The Mainstem、宮本在浩(b)、菅一平(ds)の演奏はJazz Club OverSeasでしか聴けません。内容は前回よりさらにスケールが大きく充実したものになるでしょう!
チケットはOverSeasでのみ取り扱っております。お早目にお求めください!
CU
対訳ノート(24) Ev’ry Time We Say Goodbye / Cole Porter
節分から大阪も冷えてます。OverSeasは加湿器+ガスコンロでお湯を沸かしてピアノに潤いを与えているのですが、大きなポットのお湯があっという間に減っていきます。こんな時は風邪ひきやすいので皆さんも気を付けてくださいね。
先週の寺井尚之The Mainstemのライブは、大向こうから絶妙の掛け声も入って大いに盛り上がりました!どうもありがとう!
The Mainstemが今回一番力を入れた新曲は、ジミー・ヒース(ts,ss,fl)作、知る人ぞ知るオリジナル曲、“A Sassy Samba“、元々ホーン入りのコンボかビッグバンド用の作品ですが、ピアノ・トリオ用にアレンジ、宮本在浩(b)、菅一平(ds)のパワフルなリズムが炸裂するバッパーのサンバになって、ラスト・チューンにぴったりのかっこよさ!Sassyというのはサラ・ヴォーン(vo)のニックネーム。そのせいで、3rd Setは、サラ・ヴォーンゆかりの曲がズラリ。サラ・ヴォーンの伴奏者であったハナさんがトリビュートしたバラード”Souvenir”も懐かしかったです!
<3rd Set>
1. Tenderly テンダリー(Walter Gross )
2. Ev’ry Time We Say Goodbye エブリタイム・ウイ・セイ・グッバイ(Cole Porter)
3. 46th & 8th (by サラ・ヴォーンの元夫Waymon Reed tp. )
4. Souvenir スーヴェニール(Sir Roland Hanna)
5. A Sassy Samba サッシー・サンバ( Jimmy Heath)
ピアノ・タッチの変幻で聴かせた2曲目の”Ev’ry Time We Say Goodbye “は、’50年代のライヴ盤”After Hours”での、まだピチピチしたサラの歌唱が有名ですよね!
エラ・フィッツジェラルドも歌っていて、この間出た「「トミー・フラナガンの足跡を辿る」第7巻に『Ella In London』での解説と歌詞対訳が載っています。ロンドンのエラは、「この歌は英国でしかウケないから、たまにしか歌わないの。歌詞間違えたら言ってね。」とMCして、(多分わざと)最初の名文句をハズしています。でも、ロンドンっ子は誰も教えてくれないのがご愛敬・・・
アレック・ワイルダーは名著「American Popular Song」の中で、『最もコール・ポーターらしさのない、端正(Neat)な曲。』と評しています。
こんな歌詞です。メインステムは歌詞の聴こえる演奏で、「寂しさ」と「楽しさ」のカラーチェンジが秀逸でした!原詩はこちら。
Ev’ry Time We Say Goodbye / Cole Porter
エブリタイム・ウイ・セイ・グッバイ
さよならを言うたび
私は少し死んでしまう、
さよならを言うたび、
私はちょっぴり不満、神さまたちは、
空から何でもお見通し、
なのに気配りしてくれない、
あなたを行かせて知らんぷり。あなたが近くにいると、
心地よい春風が吹き、
ヒバリの歌声が聞こえてくる。それは最高のラブソング!
でも、不思議・・・
明るい歌も単調に変わってしまう、
「さようなら」を言うときはいつも。
「さようなら」の寂しさと、一緒にいる幸せのコントラストを、寺井ならではのニュアンスに富むピアノ・タッチで聴かせてくれました。ラブソングにも関わらず、私は母親のことを想う。実家の母は、年末からうつ病がひどくなり、今年からケア・ハウスと呼ばれる高齢者向けの施設にいる。
父が亡くなってから、母はずっと不眠症に苦しんでいたのだけど、だだっ広い日本家屋で独り住まいしながら、けっこう明るく暮らしていた。ところが病気入院したのが引き金になり、ひどい鬱になってしまった。今は住みなれないコンクリート建築の一室で、音楽も聴かず、新聞もとらず、歌舞伎も観ず、時の過ぎるのを身を固くして必死に耐えている。
母は「本物は時が経っても古臭くならない」ことや、「一生懸命料理して、おいしく食べてもらう幸せ」を教えてくれた。料理上手だった母が、今は給食を食べている。それも砂を噛むようにちょっぴりしか食べない。母はすっかり痩せた。見舞いに行って帰る時は、私の手をしっかり握りながら、今まで見たこともない哀しそうな目でいつも言う。「もうそんなに来なくてもええねんよ。じゃあね。」って。
Ev’rytime we say good-bye, I die a little.
お母さん大丈夫、きっと私が元気にしてあげるからね!
コール・ポーターに母の姿を思うなんてなあ・・・やっぱりこの曲はコール・ポーター的でないのかも知れないです。
2月のThe Mainstemは20日(土)と26日(金)の2回出演、弾みをつけて3月27日のトリビュート・コンサートにつなぎます。チケットが出来ましたので、どうぞお早めに!
CU
寺井尚之ジャズピアノ教室 第18回発表会速報
雨天決行!第18回発表会、満員の大盛況でした。
総勢11名のピアニスト達が名演奏を披露!寺井尚之の講評は激辛でした
各賞受賞者 (敬称略)
- 新人賞:うっじー、Fatima、
- 努力賞:該当者なし。(*あやめ 殿堂入り)
- パフォーマンス賞:スズコ
- 構成賞:あやめ
- アドリブ賞:あやめ、むなぞう
- タッチ賞: むなぞう (*あやめ 殿堂入り)
- スイング賞: あやめ
- (最優)秀賞:めー、 (*あやめ 殿堂入り)
現在打ち上げ反省会中でRelaxin’ at OverSeas。
八重のチューリップを贈ってくださった山口マダムさまありがとうございました。ご自分の教室の発表会でご欠席だった名調律師、川端さん、沢山の人たちに「今日は川端さんは??」って訊かれました。録音担当して下さったYou-nonさま、いつもありがとうございます!!
The Mainstemのリズムチーム、ザイコウさん、イッペイさん、生徒のみなさん、お疲れ様~
発表会レポートはHPに近日UPします!
CU
「寺井尚之ジャズピアノ教室」 第18回発表会のお知らせ
真冬のはずなのに、雨が多い大阪です。皆さまいかがお過ごしですか?こちらは、発表会直前レッスン、今はアユミちゃんのレッスン中。
雨が降ろうが晴れようが、発表会は日曜日、大阪国際女子マラソンと同時刻にスタート!
第18回 寺井尚之ジャズピアノ教室発表会
日時:2010年1月31日(日)12:00-16:00
一般見学可(要予約)2,000yen
今回は初出場2名を含め、11人のピアニスト達が日頃の稽古の成果を披露します。
年齢、職業、など様々な生徒たちが、寺井尚之の厳しいレッスンに応えて、自分で書き上げた譜面で一生懸命、稽古しました。
あやめ会長、むなぞう副会長が入門してくれた創設時は、「トミー・フラナガンや寺井尚之が好きだから」という理由でピアノを志したメンバーばかりでしたが、時代は変わった。ジャズ喫茶もなく、ジャズ講座に出てくる名盤すら入手困難な時代、情報社会って何なのさ?最近は入門してからフラナガンや寺井尚之を聴き始める人もたくさんいます。寺井尚之に入門したのもなにかの縁、ジャズを演奏する楽しさ、「ピアノ」という楽器の本当の音色を出す喜びを、発表会で感じてください!
ピアニスト達を、バンドスタンドで徹底サポートするのはThe Mainstemの宮本在浩(b)、菅一平(ds)、The Mainstemの豪華メンバーです!
ドレスコードもなし、司会進行や受付も、全て生徒たちのハンドメイドの発表会、演奏の一音一句聴きもらさず、おもしろくてためになる寺井尚之の講評もお楽しみに。外部の方もご見学になれますので、ご予約の上お越しください。
明日は寺井尚之”The Mainstem”、寺井尚之の気合も十分、強力なプログラムを用意しています!
私は大きなお鍋に沢山ロールキャベツを作ってお待ちしてます。
CU
オニの撹乱
昨日は移転後初めて臨時休業してしまいました。”エコーズ”ファンクラブ会長、コダマさんはじめ、休業と知らずにお越し下さった皆さま、当日に向けて準備してくださっていた鷲見和広さん、スミ・ファンの皆さま、心よりお詫び申し上げます。
本日はいつもどおり、しっかり稽古つけてます。発表会のトリ、あやめ会長と。
寺井尚之は、長年のピアノ演奏で背骨が湾曲して、腰、肩、肘にバクダンをかかえています。自称マッサージ・ジャンキーのジョージ・ムラーツ兄さんは、この痛みを、「ビバップ痛」と呼び、左腰が凝るのをバッパーの正しい凝り方と認定してます。
以前、有名な整体の先生に診てもらったら、「あか~ん!骨がゆがんだまま固まってしもてるから、このままにしときましょ~」と簡単にサジを投げられる始末。それで、常日頃から規則正しい不節制をしながら体調を維持しています。
ところが、年末、正月と、生活リズムが変わり、気候の移り変わりのせいで、とうとう腰痛が小噴火したみたい。朝は元気でOverSeasに出かけて行ったのですが、私が色々用事を済ませて出勤すると、ニョロニョロの筆跡で、「家に帰る・・・」と、家出じゃなくて、「家帰り」の書き置きがあってびっくり!
例の「失われた歯」のせいか・・・はたまた新型インフルエンザ??と真っ青になったのですが、禁酒&マッサージして早く寝たら、微熱も下がり胃痛もほぼ治って一安心!
移転前は、スタッフ常駐で朝から営業していたので、寺井尚之が病欠してもライブなしで営業していたのですが、路地裏に移転してからはそういうわけにもいかず、ほんとうに申し訳ありませんでした。
お見舞いメールを下さった皆さま、ご心配かけてすみませ~ん。金曜のスーパー・フレッシュ・トリオは大丈夫です。でも寺井尚之はバッパーではありますがスーパーマンではないので、For All We Know, We may Never Meet Again♪出来るだけたくさんライブを聴きに来てください(?)
因みに明日22日はK.g &イマキーとのスーパーフレッシュ・トリオ、23日(土)は、倉橋幸久(b)、菅一平(ds)とトリオでお聞かせいたします!
CU
対訳ノート(23) Never Let Me Go
16日(土)の新春The Mainstemの演奏は楽しかったですね!寒い中沢山お越し下さってどうもありがとうございました!
この日は、バド・パウエル、サド・ジョーンズ、タッド・ダメロンなど、伝家の宝刀デトロイト・ハードバップに加えて、レナード・バースタイン作“Lonely Town”や、古い佳曲“If I Had You”、など、ホロリとするような情感のこもった名演も聴けて、新春に相応しいライブになりました。
今月のジャズ講座からは、正調(!)”I Hear a Rhapsody”と、JRモンテローズとのデュオアルバムから”Con Alma”、”Theme for Ernie”、”Never Let Me Go”の4曲が取り上げられて、講座に来ていたお客様はニッコニコ!
その中でも、私が好きだったのは、”ケ・セラ・セラ”など、パラマウント映画のヒット・ソングを沢山書いた黄金コンビ、ジェイ・リヴィングストン&レイ・エヴァンス作品、“Never Let Me Go”。
昭和の歌謡曲みたいな切ない歌詞と、ドラマチックなメロディで一度聴いたら忘れられない歌ですね。でも演奏解釈の懐が深い曲。マロングラッセみたいに、甘くて上品な正調ナット・キング・コールもあれば、この間聴いたJRモンテローズのように、胸をかきむしられるように切ないものまで、プレイヤーの解釈の仕方は千差万別。愛されている人の歌にも聞えるし、かつて愛されていたけど、今は愛されていない人の哀しい歌にも聴こえて、大変間口が広い。
私が印象に残っているのは、昔ジャズ講座でカーメン・マクレエをやった時に知った『Live at Century Plaza』、ここでカーメンは、別れ話を切り出された女の歌という風に解釈して歌っています。抑制された歌唱ですが、歌い終わったら相手の男性をピストルでズドンとやっちゃうのでは・・・という位切羽詰まった女の凄味、深くやるせない情感が伝わってきて、強いショックを受けました。
それと対照的な意味で好きなのがモンティ・アレキサンダー(p)トリオの演奏解釈、ジャマイカ出身の巨匠らしく、テーマの歌い方が「ネーバレッミーゴー」っとジャマイカン・イングリッシュでハッピーそのもの!ストリート系のカッコよさと正統派のピアノの素晴らしさでバンザーイしたくなるバージョン、モンティ・アレキサンダーって誰やねん?と思う人はぜひ、『In Tokyo』を聴いてみて欲しい。トミー・フラナガンと自宅に遊びに来てくれた’90代当時、モンティ自身も一番気に入っているアルバムだと言っていたので、ジャケットにサインしてもらいました。今はもっと良いアルバムも沢山あります。
日本語にするとこんな歌詞。因みにカズオ・イシグロのベストセラー小説「Never Let Me Go」の表題曲とは違いますからね。
Never Let Me Go
ネバー・レット・ミー・ゴー
by Jay Livingston / Ray Evans
私を離さないで、
愛しすぎるほど愛して。
あなたに捨てられたら、
生きている実感はなくなる。
あなたなしでは、どうしようもない。
私の居場所はどこにもなくなる。私を捨てないで、
あなたがいなくなれば、
途方に暮れる。
一日が千時間にも思えて、
どうしていいか判らなくなるに決まってる。たった一度の抱擁で、
私の人生はすっかり変わった。
最初から恋の炎が燃え盛り、
もう元には戻れない。私を捨てたりしないよね。
ボロボロに傷つけたりしないよね。
どうか私を離さないで。
あなたはハッピーエンド派?それともズドン?寺井尚之The Mainstemはもっちろんロマンチックでハッピーエンドのヴァージョンで魅せました。私は、寺井ヴァージョンやキングコールも好きだけど、ビリー・ホリディに通じるマクレエも捨てがたい・・・でも毎日聴くならハッピーな方がいいですね。マクレエのは怖くて毎日聴けないです。
次回のThe Mainstemは1月29日(金)、ぜひお越しください!
CU
ジャズ講座やウォルター・ノリス(p)さんのことなど・・・
暖冬予報はいずこ?昨日から大阪もとても寒いです。皆さま、いかがお過ごしですか?
<新年ジャズ講座>
OverSeasは新年ジャズ講座から大爆笑、それというのも、新年に寺井尚之のカギ型ブリッジ付きの差し歯が食事中にどこかに消えてしまい、ジョージ・ムラーツの仲良しドクター、梶山せんせいに相談したら、「えらいこっちゃ!腸に引っかかっとったら開腹手術やで!!」と言われ、スッタモンダの末、大きな病院を紹介してもらってレントゲンをかけたけれど見つからない・・・歯はいずこ??? 上方落語みたいなお話でお腹の皮がよじれました。ライブの寡黙な寺井尚之しかご存じない方にはアンビリーバブルかも・・・本題の解説は、音楽的でアカデミック、フラナガンをはじめとするジャズメン達のちょっとしたフレージングやバッキングで判る親密さなど、トミー・フラナガンの弟子にしか、ミュージシャンにしか判らない醍醐味をたっぷり味わうことができました。
今回登場したアルバム中、腕の良さがケタ違いだったのは、何と言ってもフランク・ウエスの『バトルロイヤル』!テナー、アルト、なんでもこなす巨匠フランク・ウエスがフルートに専念し、フラナガン、ジョージ・ムラーツ(b)、ベン・ライリー(ds)の最強リズム・セクションがバックアップして、純米大吟醸みたいに淡麗な演奏にうっとり!この作品は2月に後半が聴けるので、ぜひどうぞ!
個人的に好きだったのは、フラナガンが「親友」と呼んでいたJ.R.モンテローズ(ts)とのデュオ・アルバム『・・・And a Little Pleasure』、モンテローズは決して大スターでも巨匠でもないけど、ハード・バッパーらしい潔さと、歌詞のある曲のセレクションや「歌詞解釈」が好き。独特の野太い音は、一度生で聴いてみたかった・・・今回の”Never Let Me Go”も哀愁が漂って泣けました。タイトル曲、『Pain and Suffering and a Little Pleasure(痛みと苦しみ、そしてささやかな喜び)』は、モンテローズの音楽観なのだろうか?あるいは彼の人生がそうだったのか?ビター・スイートなタイトルが、いかにもトミー・フラナガンの親友らしいです。今年の講座のラインナップは、久々にボーカルも登場するので、また対訳にいそしむことになりそうです。次回は2月13日で、”My Funny Valentine”も登場するようです!
<ウォルター・ノリスさんのこと>
先週、ジョージ・ムラーツの新しいベースのことを書いたら、偶然にもムラーツの盟友ウォルター・ノリス先生から、「ジョージを新しいベースで聴いたよ!」とお知らせメールが到着!
ノリスさんは、昨年11月に開催されたベルリン・ジャズフェスティバルのハンク・ジョーンズ3でジョージ・ムラーツのプレイを聴いて、新しいベースをムラーツが、完璧に使いこなしている様子にぶったまげたそうです。確かベルリンのそのコンサートがあのトラベル・ベースのデビューだったと思います。’70代から愛用していたイタリア製の名器に「カナリア」という愛称をつけたのもノリスさんですから、新しいベースにも、何か適当なニックネームを付けて欲しいな。
2009 11月ベルリン・ジャズフェスのハンク・ジョーンズ3
因みにコンサート後、ジョージ・ムラーツとハンク・ジョーンズ(p)は、モダンアートと日本の調度品で飾られたノリス夫妻の瀟洒なアパートで再会を楽しんだそうです。
昨年は、心臓発作に見舞われて演奏活動休止という大きな不幸に見舞われたノリスさんですが、主治医が驚くほど体調が回復しているそうで、とても嬉しいです!今年はベルリンでレコーディングの企画も持ち上がっているそうで、一日も早いカムバックを願うばかり!ノリちゃんがんばれ!
と、今日はここまで書くまでにダイアナ・フラナガンから電話が4回もありました。今年は不惑の年にしたいけど、メールサーバーも復旧しないし、波乱の予感・・・
明日はThe Mainstem新春ライブで楽しく過ごしましょう。ご予約は電話あるいはメールならtamae.terai@gmail.comまでください。
お薦め料理は、「かぼちゃとひき肉のグラタン」を作ろう。
え?寺井尚之の失われた歯はどうなったって?まだ見つかってません・・・Pain and Suffering and a couple of Little Teeth…
CU