台風が去り、朝晩少し涼しくなったような気がしますね。エアコンよさらば、ビールのがぶ飲みよさらば…
そして今日はジョージ・ムラーツ(b)の誕生日、兄さんおめでとう!!お祝いで飲みすぎていないかが心配ですが。
さて、11日(土)のジャズ講座「トミー・フラナガンの足跡を辿る」には、ジミー・ヒース(ts,ss)のアルバム、『New Picture』が登場!
ジミー・ヒースさんと初めて会ったのは’83年、OverSeasがアジアビルに引っ越した時のヒース・ブラザーズ(!)のコンサート。良かったな~!皆に聴かせてあげたかった~!
最近電車で読みふけるジミー・ヒースの自伝”I Walk with Giants”には、その名のとおり、ジャズの巨人達がキラ星のごとく登場し、波乱万丈の人生の物語は、読み進むたびに感動の連続です。
講座のまえにジミー・ヒースのバックグラウンドを少しまとめておきますね!
<兄弟愛の街 フィラデルフィア>
ジミー・ヒースは1926年10月25日、ギリシャ語の「兄弟愛」から名づけられたペンシルバニア州の都市フィラデルフィアで生まれた。いみじくもお兄さんはMJQのパーシー・ヒース(b)、弟さんは、最後のトミー・フラナガン3のドラマーとしても、また長年のOverSeasの常連様ならご存知!何度もコンサートやプライベートで来てくれたアルバート”トゥティ”ヒース(ds)、全員がジャズ史上燦然と輝く天才ミュージシャン。よく比較されるのは、ハンク、サド、エルビンのジョーンズ・ブラザーズで、こちらも天才揃いですが、個々の名声を確立した後で兄弟として音楽活動した姿を実際見ているせいか、より「兄弟」の絆を感じます。
オーラ溢れるヒース・ブラザーズ!左からパーシー(b)、ジミー、トゥティ(ds)
フィラデルフィアは独立戦争中から黒人のコミュニティ(free black community)を持つ大都市で、現在も人口の4割強がアフロアメリカンの人たちだそうです。ヒースの両親は南部ノースカロライナ州の海辺の町、ウィルミントンから幼いパーシーを連れて移住。ジミーの曾祖母は奴隷で祖母は白人との混血であったそうです。子供のころは決して裕福でなかったけれど、両親は慎ましく生活し、子供達(三兄弟と姉のエリザベス)にはありったけの愛情とお金を使ってくれたとジミーは伝記で感謝しています。ヒースbrosのアルバム『Marchin’ On』はマーチングバンドで活動してた亡き両親に捧げたものです。
<家族愛のヒース・ファミリー>
父は自動車工、母は美容師、二人は身を粉にして4人の子供達を養いました。二人とも音楽好きで、クリスマス・プレゼントとしてパーシーはヴァイオリンを、ジミーとトゥティはサックスを贈られたそうです。ジミーが6歳の時、母親に連れられてデューク・エリントン楽団を聴き、エリントンに声をかけてもらったのが記憶に残っており、後にジミー・ヒースは自分のリーダー作には必ずエリントン・ナンバーを録音するようになりました。
ジミーがバンド活動するようになってからは、ヒース家の地下室が練習場、地下室でレコード聴いたり、練習した後は、10人でも15人でも、ジミーのお母さんが手料理でご馳走してくれた!それは一流ミュージシャンになってからも続き、「ジミーと一度でも共演したことのあるミュージシャンで、ジミーの家に招待されない人間はいない。」という伝説があります。ジミーのお父さんは、夕食の間にチャーリー・パーカーのレコードをかけ「バードを聴いている間は静かにしなさい。」とミュージシャンたちを注意するほどビバップに敬意を持っていた。そしてご馳走の伝統はお嫁さんのモナさんにも引き継がれていて、私たちもクイーンズのヒース家でおいしい晩御飯をごちそうになったことがあります。ジミーがビッグバンドで大阪に来たときは、タクシー何台も分乗してやってきた大勢のメンバーに、ご馳走作ったこともありました。
<リトル・バード>
1943年に親戚の食料品店やバンドでバイトしながら工業高校の木工科を卒業し、そのままフィラデルフィアの地元の楽団に入団しプロとしてのキャリアが始まります。初期のジミー・ヒースの楽器はアルト・サックスでアイドルは勿論ジョニー・ホッジス、ベニー・カーター、それからチャーリー・パーカー!ほぼ同年輩の親友、ジョン・コルトレーンもアルト奏者として出発しています。
独学のジミーは最初は譜面もろくに読むことが出来なかったのですが、独学でどんどん頭角を現し、’45年に中西部で人気を博したナット・タウエルズ楽団に入団、かなりの給料をもらい巡業を続け、土地の郵便局からせっせと両親に仕送りを続けます。伝記でこの辺りを読み進むと、当時ジャズの中心的フォーマットだったビッグ・バンドの世界は、例えばルーキー・リーグからMLBへとピラミッドになっているアメリカのプロ野球のように、かなりシステマティックに人材が動いていたことが判って非常に興味深い。
そのツアー中にディジー・ガレスピー楽団に遭遇。ジミーの和声やリズムへの探究心に火が点きます。
戦争中、数少ない黒人のエリート・パイロットとして空軍に所属していた兄パーシーが故郷に帰還し、ベーシストへと人生を方向転換。彼に呼び戻されたジミーは、20歳の若さで自分の楽団を結成します。バンドメンバーに土地一番の黒人実業家の息子を入れて、うまくビジネス展開して、2年足らずの活動期間でしたが、かなりの人気を博しました。ジミー・ヒースOrch.のサックス・セクションには、若きジョン・コルトレーンとベニー・ゴルソンが加入していたこともあり、彼らは一緒に稽古し、未来へ続くジャズの途を夜を徹して語り合ったそうです。20歳の彼らがどんな話をしていたか聞いてみたかったですね!
当時の写真はヒース・ブラザーズのサイトにあります。
ジミー・ヒース楽団時代のハイライトは、’47年にチャーリー・パーカーがフィラデルフィアにやって来た時です。自分の楽器を(多分質入れして)持って来なかったパーカーはジミーのアルトを借りてギグを演り、ジミーの楽団にゲスト出演します。
「チャーリー・パーカーが吹くと、僕の楽器からあの素晴らしいサウンドが聴こえたんだ!返してもらったアルトを吹くと、バードの魔力が残っているような気がしたが、実際はそうではなかった;ジミー・ヒース自伝」
地元の若手スター・アルトとして頭角を現したジミー・ヒースはチャーリー・パーカーの再来=“リトル・バード”の名前で各地のミュージシャンの間でも有名になっていました。
<栄光と挫折>
好調だった自分の楽団は、マフィアがらみのクラブでギャラをもらうことが出来ずにツアー中に破綻、バンドごと人気トランペット奏者のハワード・マギーが引き継いでジミーもそこで活動し、マギーとパリにツアー時にJ.J.ジョンソンや後年、音楽的にも個人的にも親密になるマイルス・デイヴィスと共演しました。
ガレスピーの番頭格のギル・フラー楽団を経て、’49年、いよいよ念願のディジー・ガレスピー楽団に入団。バンドには、ジョン・コルトレーン(as)や、後にエリントン楽団のスターとなるポール・ゴンザルベス(ts)など錚々たるメンバーがいました。コルトレーンやジミーが、聴衆によりアピールするテナー・サックスに転向を考え始めるのはこの時期です。
音楽的には大きな実りの時代を迎えるジミー・ヒースでしたが、個人的には大きなトラブルを抱えていました。最初の妻が生まれたばかりの息子(後のパーカッション奏者、ムトゥーメ)を連れて、自分の楽団のピアニストと一緒になるという不幸を忘れる為に、麻薬に深く依存していったのです。そして、’51年にヘロイン中毒が原因で、ディジー・ガレスピーに解雇され、タッド・ダメロンを始めとする多くのジャズ・ミュージシャンがお世話になったレキシントンの麻薬矯正施設からペンシルバニア刑務所へと、坂を転げ落ちるように転落の時代に入っていきます。
ジミー・ヒースに会ったことのある人なら、まさかこんな聖人みたいな人が刑務所にいたなんて信じられないでしょう。私もいまだに半信半疑です。5年も刑務所に入ってはったなんて、伝記読むまで知らなかった。というか、絶対に面と向かって聞けないようなことが本には包み隠さず書かれていて、そんな悲劇を経験したからこそ、あんな聖人になれたのかと納得しました。その歴史の影には、奥さんのモナの大きな存在があります。
この本には、ジョン・コルトレーンやマイルス・デイヴィスの「どういうところが凄いのか?」「リハモニゼーションの本質」それに「モード・ジャズの長所、短所」などについて、いままで読んだどんなジャズ評論より説得力ある解説がされているので、いつか翻訳して載せたい。
私はNYで演奏する銀太くんにお土産としてもらったのですが、この本は新刊で勿論入手可能!英語も比較的簡単なので、読める人はぜひ読んでみてね!講座の日はお店においておきます。
ジャズ講座は9月11日(土)6:30pm開講!サックスの好きな方、ジャズの名盤と、楽しい解説がお聴きになりたい方、初めての方、ぜひぜひ皆様、お越しくださいませ!
続きはまた次回に。
CU
カーメン・マクレエ解説本できました!
8月1日の日曜セミナー、「カーメン・マクレエ講座」多数お集まりいただき、誠にありがとうございました!
講座にお越しになれなかった方、ノートを取れなかった方々のために、解説&対訳が、それぞれ冊子になりました。OverSeasのマスコット、ビバップ・ライオンくんも嬉しそう。
解説曲は初期のアルバム、『By Special Request』(’55)から晩年の傑作『Carmen Sings Monk』(”88)まで。ジャズ・スタンダードからポピュラー、シャンソンまで幅広いジャンルのベスト歌唱を寺井尚之が厳選!「イエスタディズ」「月光のいたずら」「思い出のサンフランシスコ」「Never Let Me Go」「サテン・ドール」「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」「わが恋はここに」「カーニバルの朝」などなど選りすぐり全34曲!
女優系ヴォーカリストというのは、私が勝手に作ったカテゴリーですが、それは決して女優さんのような美人ヴォーカリストということでなく、歌詞をしっかり読んで、しっかりと唄の心象風景を作り上げてから、表現する歌手ということです。その意味では、シャンソンの偉大な歌い手達と共通しているかも知れない。ジルベール・ベコーの「Too Good」が講座で大好評だったのも当然かも。カーメン・マクレエの終生のアイドル、ビリー・ホリディも、やっぱり女優系。たった数分の歌唱に、映画一本観たような余韻が残ります。逆にエラ・フィッツジェラルドは、どんな唄を歌おうとも常に「エラさん」だし、サラ・ヴォーンのアプローチは、より音楽的で官能的と思う。
「月」や「星」や「恋」の歌でスタートした美人歌手カーメン・マクレエは、中年期から、女らしさをかなぐり捨てて、声も表現も、アンドロジナス的に変貌して行きます。ブラック・パワー・ムーヴメントが顕著になる70年代は、『月や星の唄』にはうんざりだと述懐しているけれど、’80年代の円熟期に入ると、再び『月、星、恋』のトーチ・ソングに回帰して、初期とは全く趣の異なるドラマを構築しています。
カーメン・マクレエという不世出の歌手の変遷を一望できるカーメン・マクレエ解説本、ぜひ、唄を聴きながら読んでみてください。
寺井尚之ジャズピアノ教室参考書のページはこちらです。
「カーメン・マクレエ歌唱 歌詞対訳書」
解説本 ¥3,150(税込)
歌詞対訳集(全34曲) ¥3,150(税込)
次回日曜セミナーは9月19日(日) 「JAZZ初心者のための講座」 まだ観ぬ初心者の皆さんにぜひご参加いただきたいです!神奈川県の若きピアニスト、コシケン君も待ってるよ!皆様もぜひぜひご来場くださいませ。
CU
寺井尚之”メインステム”動画!
一昨日の発表会で、寺井尚之の講評を初めて聴かれた皆様は、生徒達への厳しさと愛情と共に、トミー・フラナガンに代表される、ソフトタッチで倍音の豊かな広がりのあるピアノ本来の「響き」をどれだけ大事にしているかを感じられたようです。
OverSeasに寺井尚之を聴きに行きたいけど、なかなか行けないという皆様のために、メインステムのライブを密かにI-phoneで撮影していた方がいらっしゃったようです。8月21日(土)のメインステム、3rdセットのハイライト・シーンが動画でyoutubeにUPされてました。
残念ながらピアノの後姿しか映ってません。ザイコウ+イッペイファンの皆さん、ごめんなさい! ピアニストは上体がほとんどブレずに、指や腕でなく、背中で弾いているのがよく判りますね!倍音の広がりは圧縮されてしまっているけど、なんとなくわかるかな?対訳ノートに書いた”波止場に佇み“も少しだけ聴けますよ!
路地裏で階段は少しありますが、決して初めてのお客様でも敷居は高くありませんよ!ぜひ一度大阪名物の、”生”寺井尚之、”生”メインステムを聴きに来て下さいね!
CU
寺井尚之ジャズピアノ教室発表会速報
8月29日(日) 寺井尚之ジャズピアノ教室 第19回発表会開催しました!
いつもより、演奏者の少ない発表会でしたが、密度の濃い演奏が聴けて、外野の私にとっては、楽しく嬉しい発表会になりました。
発表会デビューのNatsuちゃんから、「努力」&「最優秀」殿堂入りのあやめ会長まで、各演奏者の習熟段階で、高レベルの演奏内容が聴けました。しかし、師匠、寺井尚之は、「こんなもんではもの足らん!」と、「最優秀」の「秀」の文字の上半分と下半分を分け与え、「もっとガンバレ!」という寺井流エールを贈りました。
大トリで快心のプレイ、あやめ会長、ベテランだけに、寺井尚之の講評メモを読んでからコメントする余裕も!
<各賞 :(ニックネーム、敬称略)>
- 新人賞: Natsu
- 努力賞: hitomi
- パフォーマンス賞: ネネ
- 構成賞: あやめ会長
- Ad-lib賞: あやめ会長
- タッチ賞: あやめ会長
- スイング賞: あやめ会長
最優秀賞(のうち):
- 「禾」賞: hitomi
- 「乃」賞:め~
一般見学のお客様も思いがけなく大勢お越しになって、生徒達のプレイを楽しんでくださいました。応援のお客様が沢山いらっしゃると、やっぱり雰囲気が盛り上がりますね!その中には、海外青年協力隊でモロッコに赴任していた優秀な生徒、つーちゃんの姿が!また、あのOur Delightが聴ける日は来るのか?
寺井尚之ジャズピアノ教室の発表会は、受付や司会、全て生徒達が運営しています。生徒達を応援しようと、ひまわりの花かごを贈ってくださった山口マダム、おかげで、皆元気一杯のプレイが出来ました!参加賞として、ピアノのマグカップを下さった調律、川端マエストロ、稽古の合間に皆お茶で一息ついて、がんばります!それに、貴重な休日を録音と撮影に費やしてくださったYou-non氏は、発表会後も色んな作業をしていただき、生徒一同心より感謝しています!
生徒達をサポートしてくれる宮本在浩(b)、菅一平(ds)リズムチームは、ラストまで集中力を途切れさすことなく、思わぬミスもミスでないように、しっかりフォローしてくれました。メインステムの時と、また違う真剣な表情もグっと来た~
You-non氏撮影の写真満載の発表会レポートは近日HPにUPします。乞うご期待!
CU
<Jazz初心者のための講座>9月に開催!
相変わらずの暑さ、夏バテ知らずの私もゲンナリ、水分補給しすぎて、ちっとも夏ヤセしません。毎晩、麻の蚊帳を吊る前に水泳ごっこしていた昭和の昔が懐かしい・・・皆様はいかがおすごしですか?
でも雲は少し高くなってきたし、気のせいか、月の輝きも冴えてきたように思えます。秋になれば、グルメだけでなく、文化や芸術を愛好しよう!Jazz Club OverSeasのライブにももっと来よう!楽器に心得のある方なら、もっとジャズを勉強してみたくなるかも・・・
そんな皆さんの為に、寺井尚之が特別講座を開催いたします。
<JAZZ初心者のための講座>
ジャズピアノの名手、寺井尚之が、
もっとジャズを楽しみたい方、もっとうまく演奏したい方に、
判りやすく説明します。
ヴォーカリストやあらゆる楽器でジャズを志す皆さんに面白くてためになる講座になるでしょう!
【日時】 9月19日(日)正午~2:30pm
【会場】 Jazz Club OverSeas
【講師】 トミー・フラナガン唯一の弟子 寺井尚之
【受講料】 ¥2,000 (税込¥2,100) 要予約
●ジャズを聴いてみたいけど、どんな音楽なのか?
●Ad-libってどんな仕組みになってるのか?
●何から聴けばいいの?どんなCDを買えばいいのか?
●演奏の「良い」「悪い」はどうして判断するのか?
●歌を習っているけど、伴奏してくれる人に渡す譜面は どう書いたらいいのか?
●アマチュア・セッションをしているけど、もっとうまくなるには どうすればいいのか?
定員40名で締め切りします。どうぞお早めにご予約を!
明日のメインステムでCU!
8/27(金) 寺井尚之The Mainstem 予告プログラム
Dog Days are goin’ on…わが町には、まだ「マイクロ小さい秋」の片鱗も見つかりませんが、郊外では日暮の声が聞こえ出したとか・・・皆様、いかがお過ごしですか?
今週金曜日出演のメインステムの演奏曲目予告! 今回はデトロイト・ハードバップまっしぐらの予感!
1. 50-21 (Thad Jones)
2. Out of the Past (Benny Golson) アウト・オブ・ザ・パスト
3. Off Minor (Thelonious Monk) オフ・マイナー
4. Sunset and the Mockingbird (Duke Ellington) サンセット&ザ・モッキンバード
5. Eclypso (Tommy Flanagan) エクリプソ
1. Almost Like Being in Love (Alan Jay Lerner/Frederick Loewe) オールモスト・ライク・ビーイング・イ
ン・ラヴ
2. I Could Write a Book (Lorenz Hart/Richard Rodgers) アイ・クッド・ライト・ア・ブック
3. Repetition (Neal Hefty) レペティション
4. If I Had You (Jimmy Campbell, Reginald Connelly/Ted Shapiro)イフ・アイ・ハッド・ユー
5. Mean Streets (Tommy Flanagan)ミーン・ストリート
1. Strode Rode (Sonny Rollins) ストロード・ロード
2. Smooth As the Wind (Tadd Dameron) スムーズ・アズ・ザ・ウインド
3. Webb City (Bud Powell) ウエッブ・シティ
4. Passion Flower (Billy Strayhorn) パッション・フラワー
5. Tin Tin Deo (Chano Pozo,Dizzy Gillespie, Gill Fuller) ティン・ティン・デオ
1st set では、デューク・エリントンの名曲、“サンセット&ザ・モッキンバード”が個人的に楽しみ!夏の挽歌として、絶妙の寺井尚之タッチが味わえることでしょう。そして、暑い時に聴く”エクリプソ”は値千金ですね!
2nd setのお楽しみは、”レペティション”!、『チャーリー・パーカー・ウィズ・ストリングス』でおなじみの名曲を、エレガントなストリングスとバードの疾走感を、そのままピアノ・トリオ・ヴァージョンにしてしまう斬新なアレンジは、トミー・フラナガンの弟子、寺井尚之が培ったメインステムの十八番、ジェット・コースターのようにスリル一杯のビバップを味わってください!
3rd setでは、トミー・フラナガン参加のソニー・ロリンズの名盤、ジャズ・ファン必携の名盤、『サクソフォン。コロッサス』の“ストロード・ロード”に注目します。Strode Rodeとは、「ストライド走行」=大きな区切りでタイムを捉えることが出来れば、スケールの大きいプレイが出来ますよね!鉄壁ザイコウ+イッペイ・リズムチームのプレイが要になりそう!
ラスト・セットでは、ザイコウさんの弓をフィーチュアした“パッション・フラワー”にも耳が釘付けになりそうです。
8月メインステムのラスト・チューンは、前回の”マンテカ”同様、やっぱりアフロキューバンの“Tin Tin Deo”!哀愁と歓喜、汗と涙が入り混じるビバップの醍醐味を味わい尽くして、酷暑の8月も過ぎていくのかな?
お勧め料理はバジル・ソースでチキンや夏野菜を料理しようかと思っています。
8月のメインステム最終章は27日、金曜日!ご予約のうえお越しくださいませ!
CU
対訳ノート(29)波止場に佇み:I Cover the Waterfront
「残暑お見舞い」には、あまりにも暑い毎日、シャワーを浴びないと一日は始まりません。皆様いかがお過ごしですか?
今日はメインステムが土曜日に演奏予定の名曲“波止場にたたずみ”について書いてみたいと思います。
<歌のお里>
ジョニー・グリーン作曲、エドワード・ヘイマン作詞、ポップ・ソングとして“I Cover the Waterfront”が書かれたのは1933年のこと。このコンビの最大のヒットはビング・クロスビーが歌った”Out of Nowhere”ですが、Interludeを読んで下さる方なら“Body & Soul”の作者であることはもうご存知かもしれませんね。
この歌は当時のベストセラー小説のタイトルにあやかって作られました。小説の“I Cover the Waterfront”は、文字通り”沿岸警備”で、新聞記者出身の作家、マックス・ミラーが書いたロマンチック・ミステリー、中国系移民の密航事件を追う新聞記者が、犯人の美しい娘と恋に落ちながらも、果敢に真実を追及していくというストーリー、ミラー自身が長年港湾関係の取材で鳴らしたジャーナリストだったので、リアルな描写と歯切れの良い文章が受け、すぐに映画化されこれも大ヒット。歌はストーリーとは余り関係ないけど、先行ヒットしていたために、映画の中でも使われています。深夜映画のないこの時代、ネットでこの映画も観ることが出来ます。ただし字幕はなし。
<帰還兵を待つ歌として>
この歌が再び愛され、小説や映画より長く記憶に残るようになったのは第二次大戦後のことです。波止場に佇み待ちわびるのは、外地に出征した恋人や夫でなくとも、息子や兄弟、友人であったかも知れません。日本にも『岸壁の母』という歌謡曲がありましたが、戦争の勝ち負けは別にして、戦争に巻き込まれた人々の心は同じであったでしょう。ビリー・ホリディのカーネギー・ホールでのコンサート(’47)で”I Cover the Waterfront!”と大きな掛け声がかかるのが思い出されますね。
ちょうど現在ジミー・ヒース(ts)の自伝を読んでいるのですが、大戦直後ジミーが所属していた楽団の歌手も、頻繁に“I Cover the Waterfront”を歌っていて、それをふざけて物真似したジミーが、当の歌手にあやうく撃ち殺されそうになったという、イチビリな私にとって非常に恐ろしいエピソードが書かれていました。
かつて”水辺にたたずみ”とも邦題表記されていましたが、この歌の舞台が「水辺」ではなく「波止場」であることは、ヴァースを読めば明らかですよね。そして、歌詞を読めば”Cover”という動詞が決して、沿岸警備隊や警察のように、波止場の周辺をくまなく捜査するというニュアンスでなく、ひっそりとした夜の港にじっと立ち続け、海の向こうにいる大切な人に語りかけている歌であることがわかると思います。
I Cover the Waterfront
波止場に佇み
原詞はこちらに
Edward Heyman詞、Johnny Green曲
(Verse)
人を傷つけ嘲る都会を離れ、
ひっそりした凍てつく夜、
荒涼とした波止場に独り佇む。
見えるのはどこまでも続く水平線だけ。
心は痛み、石のように重苦しい。
日が昇ると、少しは軽くなるかしら?
(Chorus)
私は波止場に佇み、
海に目を凝らす。
愛する人は
帰って来るの?波止場に佇み、
恋人を捜す、
見上げれば
星のない夜空。私はここよ、
辛抱強く待ちわびる
、
はかない希望に全てを託し、
あなたを想って待っている。
なんと切ないことでしょう!
あなたは今どこ?
私のことなど忘れたの?
どうぞ覚えていてほしい。
戻ってくるの?戻って来てよ。私は波止場に佇んで、
ひたすら海を見つめてる。
愛する人が戻って来ないかと。
どうぞ戻ってきて…
切ないな!
アレック・ワイルダーは、この歌を「切々と感情に訴えかける佳作」と書いていた。
「待てば海路の日和あり」と言うけれど、待つのは本当に辛い。恋人を待つのも、OverSeasでお客様を待つのもご同様。でもロマン派=寺井尚之がこの曲を料理すると、希望の星がひとつ、ふたつと灯って、心が癒されるかも知れません。
土曜日のメインステム、どうぞご期待ください。
お勧め料理は、ちょっぴりエスニックに、生春巻きと熱い春巻きの盛り合わせにしようと思ってます。
CU
8/21(土) 寺井尚之”The Mainstem”:予告プログラム
夏休みはゆっくりできましたか?お盆も終わりビジネス街に喧騒が戻ってきました。今週(土)は、寺井尚之トリオ”The Mainstem”で、一緒に夕涼みしましょう!
上昇気流に乗るメイン・トリオの演奏曲目を一挙予告!
1. Bitty Ditty (Thad Jones) ビッティ・ディッティ
2. A Blue Time (Tadd Dameron) ア・ブルー・タイム
3. Scratch (Thad Jones) スクラッチ
4. Good Morning Heartache (Irene Higginbotham/ Ervin Drake/ Dan Fisher)グッドモーニング・ハートエイク
5. Minor Mishap (Tommy Flanagan)マイナー・ミスハップ
1. Moon & Sand (William Engvick/Alec Wilder) ムーン&サンド
2. Don’t Blame Me (Dorothy Fields / Jimmy McHugh) ドント・ブレイム・ミー
3. Dacquiri (Joe Newman) ダイキリ
4. If You Were Mine (Johnny Mercer / Matt Malneck)イフ・ユー・ワー・マイン
5. Rachel’s Rondo (Tommy Flanagan) レイチェルのロンド1. Syeeda’s Song Flute (John Coltrane) サイーダス・ソング・フルート
2. Central Park West (John Coltrane) セントラルパーク・ウエスト
3. High Seas (Kenny Dorham) ハイ・シーズ
4. I Cover the Waterfront (Edward Heyman / Johnny W. Green) 波止場に佇み
5. Manteca (Dizzy Gillespie) マンテカ
残暑を和らげる素敵な小品、2-3の“Dacquiri”はキューバ生まれのカクテル、カウント・ベイシー楽団の名トランペッター、ジョー・ニューマン作の甘く涼やかな曲をお楽しみに!
過ぎ行く夏に似合う曲は、何と言っても2-1の“Moon & Sand”、熱さと冷たさの入り混じった幻想的な夏の夜の砂浜、アレック・ワイルダーの世界を満喫してください。歌詞などについてはこちら!
「海」に因んだ寺井尚之の名演目は3rdセットにも!ケニー・ド-ハムの“High Seas”でハードバップの醍醐味を、”波止場に佇み”ではロマン派寺井ならではの演奏解釈をお楽しみください。
予備校時代の夏に、たまたま涼みに入ったジャズ喫茶でジョン・コルトレーンを聴いた瞬間にジャズに心酔した寺井尚之、以来コルトレーンは寺井的「夏の季語」、2-1,2-2ではコルトレーンが非常に優れた作曲家であったことが再認識できそう!
因みにKDの“High Seas”やトレーンの”Syeeda’s Song Flute”は菅一平(ds)が崇拝するアーサー・テイラー(ds)のリーダー作、『AT’s Delight』にソリッドな名演が収録されているので、更に楽しみ。音色や音程がぐっとクリアになった宮本在浩(b)のビートは、ラスト・チューンの”Manteca”で炸裂する予感です。
カーメン・マクレエ講座で聴いた究極のトーチソング(2-4)も、ばっちりプログラムに入ってます!歌詞を聴かせるピアニスト、寺井尚之の演奏解釈が楽しみですね。
暑さを忘れさせてくれる涼しげな曲、花火の様に鮮烈な夏の曲、過ぎ行く夏を惜しむ曲、夏の様々な心象風景を、デトロイト・ハードバップと共に、どうぞお楽しみください!
8/21(土) :寺井尚之3”The Mainstem” 宮本在浩(b)、菅一平(ds)
Live Charge 2,625 yen(入替なし、要予約)
発表会リハーサル中!
お盆休みで街はガラガラ、にもかかわらず昨日はジャズ講座に沢山お越しくださってありがとうございました!
今日は月末に開催する寺井尚之ジャズピアノ教室発表会のリハーサル日!
閑散とした堺筋本町と、バップ・チューン、寺井尚之の声が面白いコントラストやな~
休日返上でサポートの宮本在浩(b)、菅一平(ds)ありがとう!
フレーフレー!演奏ピアニストたち!!(発表会プログラムはこちら)
第19回寺井尚之ジャズピアノ教室発表会
8月29日(日)正午~
一般見学可 2,000yen
9月25日(土) ショーン・スミス(b)リターンズ!
昨年9月に来演し、大好評を頂いた寺井尚之の盟友ベーシスト、ショーン・スミスがお彼岸シーズンに再来演いたします。
ショーンは1965年生まれ、ビル・シャーラップ、テッド・ローゼンタールなど、NYのトップ・ピアニストと頻繁に競演する傍ら、自己カルテットで長年活躍、同時に作曲家としてもグラミー賞候補に挙がるなど、筋の通った着実な演奏活動を続けています。
Jazz Club OverSeasでの過去二回のコンサートは、気心知れた寺井尚之とのデュオでお楽しみいただきましたが、今回は、メキメキ実力を上げているメインステムのレギュラー・ドラマー、菅一平(ds)を加えたトリオで聴いていただきます。
前売りチケットは土曜日のジャズ講座から発売開始です。
SEAN SMITH TRIO
with 寺井尚之(p)、菅一平(ds)
2010年 9月25日(土)
7pm- / 8pm- / 9pm- (入替なし)
前売りチケット 座席指定 5,500yen (税込 5,775yen)
菅一平(ds)が一枚加わることで、新たな展開が見れそうですね!
どうぞ皆様、寺井尚之の同志、ショーン・スミスを聴きに来て下さい!
CU