待ちに待ったアキラ・タナ(ds)ライブ。4月に不似合いな冷たい雨でしたが、昨年に引き続き、「楽しい!」「すごいっ!」の歓声が口々に漏れる最高の演奏が聴けました。
アキラ・タナさんと寺井尚之のお付き合いは、もう30年になります。でも、最初に彼の演奏を聴いたのはもっと前、寺井も私も二十代でした。大学時代の寺井の盟友ギタリスト、現在マレーシアでギター・レジェンドとして活動し、あちらの音大で教鞭を取る布施明仁さんが、その頃ボストンのニューイングランド音大に留学中で、「同じクラスにソニー・スティットと一緒に演っている奴が居ます。」といって彼の地のジャズクラブでライブ録音したカセット・テープ(!)を送ってくださったのがアキラさんとの最初の出会いでした。
初めてOverSeasにお招きしたのは、Walter Bishop Jr.のトリオで’80年代中盤、それからコンサートで、プライベートで何度演奏していただいたか数えきれません。
今回の来日も公私ともに超多忙スケジュールの合間を縫っての出演でしたが、譜面を一瞥した途端に、曲の構成がズバッと頭に入る感じ、イントロなしで寺井の首振りから始まる曲、超変則のBeyond the Bluebirdなど、どの曲もリラックスしてこなれた印象に。やっぱりアキラさんが加わったジミー・ヒース作品は、格別の味わいです。
アキラさんを聴きにきてくれたロック・ミュージシャンのお客様を紹介すると、次のセットではすかさず8ビートでソロを取る茶目っ気も素敵でした。寺井尚之(p)は得意のポーカーフェイスですが、とっても気持ちよさそうにアキラさんと音楽でジョークを言い合っているし、宮本在浩(b)も本当に楽しそう!「ザイコウ、最高!」と声が掛かるソロを出してベテラン二人に強烈アピールしています。
ラスト・チューンのA Sassy Sambaでは、アキラさんの傍らで食いつくように聴いていたメインステムの菅一平(ds)さんが、隠し持っていたパーカッションでジョイント、すると会場に居た先輩ミュージシャン達の応援が甲子園の外野席のようで、場内は興奮の坩堝に!
アンコールは前回大好評の「どんぐりころころ=リズムチェンジ」に続き、今回は「七つの子」ジャズヴァージョン。最近大阪環状線が駅ごとに発車メロディーを鳴らすのにインスパイアされた寺井が、ここぞとJRのホームで耳にした色んなメロディーを、最高のピアノタッチで繰り出すのに、皆大爆笑。最後まで笑顔の絶えないライブになりました。
「楽しい」を生み出すためには日頃の厳しい修練が必要なんだ!改めて実感したコンサート。またの再会を約束し、アキラさんは明日帰国の途につきます。
アキラ・タナ(ds)ライブ、次回も宜しくお願い申し上げます!
=演奏曲目=
<1st Set>
1. Ladybird (Tadd Dameron)
2. Beyond the Bluebird (Tommy Flanagan)
3. Mean What You Say (Thad Jones)
4. If You Could See Me Now (Tadd Dameron)
5. Minor Mishap (Tommy Flanagan)
<2nd Set>
1. Suddenly It’s Spring (Jimmy Van Heusen)
2. They Say It’s Spring (Bob Haymes)
3. Bro’ Slim (Jimmy Heath )
4. The Voice of the Saxphone (Jimmy Heath )
5. Rifftide (Coleman Hawkins)
<3rd Set>
1. What Is Thing Called Love? (Cole Porter)
2. Quietude (Thad Jones)
3. Stablemates (Benny Golson)
4. I’ll Keep Loving You (Bud Powell)
5. A Sassy Samba (Jimmy Heath )
Encore: 七つの子:環状線メドレー