トミー・フラナガン・トリビュート後初の寺井尚之(p)+宮本在浩(b) SSデュオは、色んな場所からやってきたお客様に囲まれて、一段と息の合ったプレイが聴けました。特にビリー・ホリディ・ナンバー、”God Bless the Child”での、ピアノの出し入れに呼応して、歌の世界を大きくしてくれるベースのオブリガートはこのデュオならでは。 アンコールの Ev’ry Time We Say Goodbye が始まるとアメリカ人のお客様が何とも言えない微笑を浮かべていたのが印象的でした。
1st Set
1. First Trip (Ron Carter)
2. A Blue Time (Tadd Dameron)
3. Scratch (Thad Jones)
4. Blues for Sarka (George Mraz)
5. The Chase (Tadd Dameron)
6.Black Butterfly (Duke Ellington)
7. Cherokee (Ray Noble)
2nd Set
1. Hi-Fly (Randy Weston)
2. Fools Rush In (Rube Bloom)
3. Crazy Rhythm (Irving Caeser, Joseph Meyer, Roger Wolfe Kahn)
4. God Bless the Child (Billie Holiday, Arthur Herzog Jr.)
2. Beyond the Blue Bird (Tommy Flanagan) 〈ビヨンド・ザ・ブルーバード〉 《ブルーバード》はデトロイトの黒人居住地にあったジャズ・クラブ(ブルーバード・イン)のことで、20代のフラナガンが、サド・ジョーンズ率いるハウスバンドの一員として毎夜演奏していた。その時代への郷愁が漂うブルージーな曲。デトロイト・ハードバップは、このクラブで開花し、フラナガンにとって理想のジャズクラブだった。
3. Medley: Embraceable You (George Gershwin) ~Quasimodo(Charlie Parker)
7. Tin Tin Deo (Chano Pozo, Gill Fuller Dizzy Gillespie) 〈ティン・ティン・デオ〉キューバ人コンガ奏者、チャノ・ポゾが口ずさむメロディとリズムを基に作られディジー・ガレスピー楽団がヒットさせたアフロ・キューバン・ジャズの代表曲。 ビッグバンドのマテリアルを、コンパクトなピアノ・トリオ編成で表現するのがフラナガン音楽の特徴で、哀愁に満ちたキューバの黒人音楽と、ビバップの洗練されたイディオムを見事に融合させたアレンジが素晴らしい。
<2nd> 1. That Tired Routine Called Love (Matt Dennis)
〈スムーズ・アズ・ザ・ウィンド〉フラナガンが愛奏したタッド・ダメロン(ピアニスト、作編曲家)の作品。力強く優美な「美バップ」の黄金比率を持ち、美しい花がつぎつぎ開花していくようなハーモニーの華麗さに目を見張る。 この曲は、麻薬刑務所服役中のダメロンがブルー・ミッチェル(tp)のアルバム「Smooth as the Wind」(Riverside, ’61)の為に書き下ろしたもので、録音にはフラナガンも参加している。 一編の詩のような曲の展開、吹き去る風のように余韻を残すエンディングまで、完成度の高いアレンジはレガシーとして残したい。
Black & Tan Fantasy (Duke Ellington) 〈黒と茶の幻想〉晩年のフラナガンは、自分が子供時代に親しんだ、ビバップ以前の楽曲を精力的に開拓していた。禁酒法時代に花開いた“ハーレム・ルネサンス運動”を象徴する場所、コットンクラブで人気を博した初期エリントン楽団の代表曲〈ブラック&タン・ファンタジー(黒と茶の幻想)〉(’27)はフラナガンが標榜したブラック・ミュージックの原点だ。 フラナガンが生前最後にOverSeasを訪問したとき、寺井がこの曲を演奏したとき、珍しく絶賛してくれた思い出の曲だ。
トミー・フラナガン没後24年、OverSeasで誕生月と逝去月に開催する46回目のトリビュート・コンサートを3月15日に開催しました。 フラナガンの名演目を選りすぐってお聴きいただくトリビュート・コンサート、今回はフラナガンが生涯愛奏しつづけ、自費で『Let’s (Play the Music of Thad Jones)』という作品集を録音しているサド・ジョーンズの作品にスポットを当てたコンサートになりました。 演奏は、おなじみフラナガン唯一の弟子、寺井尚之(p)と25年来のパートナー、宮本在浩(b)とのデュオ。
オープニングは、フラナガンが大きな影響を受けたコルネット奏者、作編曲家、サド・ジョーンズ(写真左)のオリジナル。デトロイト・ハードバップ誕生の地であるデトロイトの黒人居住地にあったジャズクラブ《ブルーバード・イン》に因んだ曲。50-21はクラブの番地(5021 Tireman Ave. Detroit)だ。フラナガンとジョーンズは、このクラブのハウスバンドとして活動(1953~54年)、その時期に演奏した多くのサド・ジョーンズ作品は、フラナガン終生の愛奏曲になる。コンサートの客席には、愛車ナンバーが“5021”の常連様が2名もおられるのが誇らしい。 フラナガンはアルバム《Comfirmation》 (Enja ’77) 、《Beyond the Blue Bird》 (Timeless, ’90) 、寺井尚之は《Fragrant Times》 (Flanagania ’97)に収録。
2, Beyond the Blue Bird (Tommy Flanagan) ビヨンド・ザ・ブルーバード:フラナガンが《ブルーバード・イン》へのノスタルジーを込めて作った作品で、同じくデトロイトの盟友ギタリスト、ケニー・バレルをゲストに迎えたリーダー作(’90)のタイトル曲とした。 アルバムのリリース前、フラナガンはNYで寺井尚之にこの譜面を写譜させ、彼に演奏することを許した。めまぐるしい転調によって曲に品格と深みを出す典型的なフラナガン・ミュージックだ。
3. Medley: Embraceable You (George Gershwin) – Quasimodo (Charlie Parker)
3.A Sleepin’ Bee (Harold Arlen) スリーピン・ビー:フラナガンが“スプリング・ソング”と呼び、春になると愛奏した演目の一つ。カリブを舞台にしたミュージカル「A House of Flowers」(トルーマン・カポーティ原作、ハロルド・アーレン音楽)の挿入歌。「蜂が手の中で眠ったら、あなたの恋は本物」というハイチの言い伝えを元にしたラブ・ソングだ。フラナガン・ヴァージョンを基に、すっきりと切り詰めた寺井尚之のアレンジをフラナガンは大いに褒めてくれたことがある。
4. They Say It’s Spring (Bob Haymes) ゼイ・セイ・イッツ・スプリング:
ライク・オールド・タイムズ:これもフラナガンとサド・ジョーンズがデトロイト時代に演奏した作品。ジョーンズ名義の『Motor City Scene』 (’59 United Artist)に収録。後年フラナガンはアンコールに愛奏した。彼がご機嫌なときは、ポケットの中から小さなホイッスルをこっそり取り出し、絶妙なタイミングで、ピューッと吹いて会場を多いに湧かせた。この夜も、寺井が隠し技のホイッスルを鳴らすと、フラナガンが元気だった「昔のように」楽しい空気が満ち溢れた。
<1st> 1. Bitty Ditty (Thad Jones) 2. Beyond the Blue Bird (Tommy Flanagan) 3. Rachel’s Rondo (Tommy Flanagan) 4. Medley: Embraceable You (George Gershwin) ~Quasimodo(Charlie Parker) 5. Lament (J. J. Johnson) 6. Elusive (Thad Jones) 7. Dalarna (Tommy Flanagan) 8. Tin Tin Deo (Chano Pozo, Gill Fuller, Dizzy Gillespie)
<2nd> 1. That Tired Routine Called Love (Matt Dennis) 2. Smooth As the Wind (Tadd Dameron) 3. Medley: Thelonica(Tommy Flanagan)~Minor Mishap (Tommy Flanagan) 4. If You Could See Me Now (Tadd Dameron) 5. Eclypso (Tommy Flanagan) 6. But Beautiful (Jimmy Van Heusen) 7. Our Delight (Tadd Dameron)