民主党オバマさんが第44代合衆国大統領に! 日本のTVなのに開票速報が順次報道され「ここはどこの国?」と思うくらいアメリカの選挙一色、直後に届いたNYタイムス速報メールの見出しが印象的でした。
Obama Elected President as Racial Barrier Falls
「人種の壁崩壊、オバマ、大統領に!」
トミー・フラナガン未亡人ダイアナは、根っからのリベラル、民主党支持者…米国のジャズ界で共和党支持の人を私は知らない。さぞ浮かれているだろうと思って電話してみたら、意外にも風邪をひいて大人しくしていた。
ところで、ジャズ講座の資料準備で、Youtube検索していたら、思いがけずトミーとダイアナ・フラナガン夫妻、1972年の貴重な映像に遭遇!必要は発見の母? それともトミーの思し召しか??
映画のタイトルは「Born to Swing:The Movie About the Alumni of the Count Basie Band of 1943」。
Born to Swingは、日本語なら『生まれながらのスイング野郎たち』という感じでしょうか? 『1943年のカウント・ベイシー楽団員の現在』という副題がついている。’73年作品、英国のTV用ドキュメンタリー映画で、ヴィデオでも販売されていたようなのですが、現在は入手不可。
ダイアナに聞いたら、「そうそう!エキストラでセッションに行ったけど、出来たフィルムは全く観たことがない。」らしい。撮影は、二人が結婚したしばらく後の’72年、トミーはNY滞在中で番組に参加したそうで、ダイアナが映っている唯一の動画だと言っていた。
ラッキーなことにYoutubeに、番組を11のパーツに分割しアップロードしてくれた親切な人がいた!ありがとう!!
勿論、番組には字幕がないし、残念なことには、ストーリーと直接無関係なトミー・フラナガンのソロがカットされている。だけど、ジョー・ジョーンズを初めとする巨匠達の神業がアンビリーバブル!それだけでなく、’70年代の文化に興味があれば、とっても面白いのでお暇なときに見てみてください。下の映像は、11に分けられたパーツのうちの<Part10>です。
詳しいパーソネル&サウンドトラックのデータは、imdbでなくアメリカ国会図書館にありました。
どんな内容かというと、スイングジャズの黄金期に活躍したカウント・ベイシーのメンバー達の’70年代の姿にスポットを当てた『あの人は今』風の番組。人間国宝級のアーティストにアメリカは優しくなかったということがよーく判ります。故にこの番組もUK製作でUSAじゃない。
トランペット教室の講師が黒鉄ヒロシそっくりなジョー・ニューマン(tp)で、授業参観がバック・クレイトン(tp)だったり、ジョー・ジョーンズ(ds)の神業が拝めたり、テキサス・テナーの大御所、バディ・テイトの「ハーレム・ノクターン」が聴けたり、ジャズ講座や講座本に登場する偉人が沢山拝める。私は、深夜、一気に見てしまいました。
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★勿体無いので各パートをごく簡単に説明しておこう。
Part1 プロローグ、黄金期、1943年当時のベイシー楽団の映像。
Part2 カンザスシティ の巻き:ベイシー楽団のルーツ、カンザス・シティやダンス・ホールと結びついたスイング・ジャズについて、当時のもう一人の名バンマス、アンディ・カーク達が、ダンス音楽として発祥したスイング・ジャズの歴史を、当時の貴重映像と共に語る。
Part3: スイング時代の白人スタードラマー、ジーン・クルーパ(ds)と、ベイシー・サウンドに魅了され、彼らをスターダムにのし上げたプロデューサー、ジョン・ハモンドが、当時の状況をベイシー・サウンドに乗せて語る。最後のダンスシーンの関取みたいな人は、かの有名なブルース歌手、ジミー・ラッシングです。
Part4: 引き続き、ジョン・ハモンドが当時のベイシー楽団のメンバーが非常に読譜力があり、同時にアドリブの能力があったかを語り、’72年現在のメンバー達のリハーサルへとシーン・チェンジズ!最初のテナーが、バディ・テイト!左に座るアルトが、来月の講座に登場するアール・ウォーレン! メインストリーム誌(英ジャズ誌)の編集長、アルバート・マッカーシーは、スイング時代の名手が現在では、必ずしもアメリカで厚遇されていないと語る。凄いインパクトの赤シャツのベーシストはジーン・ラミー(b)。2:35あたりに、トミー・フラナガンのアップが!
Part 5 ディッキー・ウエルズ(tb)の巻 :英国では高い評価のミュート・トロンボーンの名手、ウエルズも今は、現在はハーレムの小さなアパート暮らし、なんとウォール街のメッセンジャー・ボーイとして生計を立てていた。なんちゅうこっちゃ…現在の日本の不景気な状況下では、配達の封筒にスタンプを押すウエルズの姿が一層身につまされる。
Part 6 バディ・テイトの巻: ’72現在、現役として活動するテイトが、自分の一部のようなブルースや、奥さんとのなれそめなどを語る。ソロで吹くハーレム・ノクターンやトミー・フラナガン参加のリハーサル・シーンが最高、Bテイトの後ろでスイングしているのがダイアナ・フラナガンです。
Part7: トランペッター:バック・クレイトン&ジョー・ニューマンの巻 スイング時代に最高の美男とビリー・ホリディが絶賛した大スター、バック・クレイトン(tp)は体調を崩し引退を余儀なくされた。演奏できない辛さを酒で紛らわせたと語るクレイトン、そして、ジャズモービル(NYの夏のジャズ風物詩でした)のトランペット・セミナーで、演奏技術を後進に伝えるジョー・ニューマン先生の姿が!勉強になります。傍らで見守るクレイトンの表情は何とも言えないほど深い。
Part8 :圧巻!ジョー・ジョーンズ(ds)の巻き!!全モダン・ドラマーの祖父と呼ばれる、ジョー・ジョーンズ(ds)も現役だが、現在ドラムショップの共同経営者で、お客さんにインストラクターをしている。
指導シーンも、Jニューマン、トミー・フラナガンとトリオでのLizaのプレイも、全てが圧倒的!!メインステムのドラマー、菅一平さんは、実家が経営していたすし屋の花板さんのイメージが重なったそうです。にこやかに接客しながら、注文を間違わずに、さっさとすしを握る仕事ぶりと似ていると、言っておられました。
Part9:コンマス アール・ウォーレン(as)の巻 43年当時楽団のスターアルト奏者、アール・ウォーレンは、家族が病気になり収入を確保するため、現在はブロードウェイなど商業音楽の世界で暮らしているが、音楽への情熱は失ってはいない。リハ・シーンでコンサート・マスターの腕をいかんなく発揮。一流ビッグバンドのリハを観るチャンスはなかなかないので勉強になる!
Part10:リユニオン・バンドの巻 レコーディング・セッションで往年のメンバー達が、今の自分たちのサウンドでスイングする。もちろんピアノはトミー・フラナガン!「Blues for J.Jones」 最高!壁際に座ってたダイアナに聞いたところでは、「あれは完全な即興よ、その場のヘッドアレンジだけでささっと演っちゃったの!」と言ってました。
<Part11>エピローグ
このヴィデオは、龍谷大学の図書館にあるようなので、心ある龍大の方、どなたかコピーしてくださったらダイアナに送ってあげられるのですが・・・OverSeasは学割チャージ半額ですよ!
とにかく今の私より若いダイアナやトミーの姿、叩き上げの名手達の姿を観て、とっても元気が出ました。
土曜日はジャズ講座で、トミー・フラナガン3 at Montreux ’77を皆で聴こう!北海道のジャック・フロスト・フラナガン氏が届けてくださった、おいしいジャガイモと地鶏で、おいしい料理を作ります。皆来てね!
CU