2月27日タウンホールにて、スタンリー・カウエル
1月末に来日したチャールズ・トリヴァー・オールスター・ビッグバンドのおかげで、OverSeasでは、プチ・スタンリー・カウエルブームが巻き起こっています。 深夜の歓迎パーティで、スタンリー・カウエルやルーファス・リードと交流した方々は、せっせと彼らのレコードを蒐集されているようです!
トリヴァーOrch.はグラミー賞にもノミネートされ、これから更に注目される存在ですから、先日の来日は時流を先取りしすぎていたのかも知れません。 その時に、スタンリー・カウエルさんから2月にNYで大きなコンサートをすると聞き、ずっと楽しみにしていたのですが、コンサート速報がインターネット上に出ているので、紹介しようと思います。
<Thelonious Monk at Town Hall 50th Anniversay Celebration>
セロニアス・モンク・タウンホール・コンサート50周年祝賀コンサート
E.スミス撮影のリハ風景から音が聴こえてきそう!アーサー・テイラーのドラムセットに注目。フィル・ウッズのクールな姿も・・・
このコンサートは、セロニアス・モンクが、キャバレーカード剥奪や病気など、様々な困難を経て、1959年に初めて大編成のバンドを率いタウンホールという大舞台で成功を収めた<タウンホール・コンサート>と呼ばれる歴史的な公演の50周年を記念するイベントとして開催されたものです。当時の演目をトリバーが、同じ会場、同じ楽器編成、同じソロオーダーで再現するコンサート!モンクの出生地であるノースカロライナ州の名門、デューク大学が後援する大プロジェクトでした。
余談ですが、モンクのタウンホール・コンサートのリハーサルやミーティングは、20世紀を代表する社会派の写真家、ユージン・スミスのロフトで行われたそうです。ユージン・スミスといえば、シュヴァイツァー博士の写真が小学校の教科書に載っていたと思います。また日本人にとっては、水俣病の写真集や、その撮影を巡る暴行事件が記憶に残ります。
スミスが、ロフト撮影した多数のジャズメンの写真や3000時間もの録音テープを、デューク大学が保存しようという「ジャズ・ロフト」プロジェクトも進んでいるとラジオは報じていました。フォト・ジャーナリストのロフトで何故モンクたちがリハーサルをしていたのか興味は尽きません。とにかく不況下で大事な資料が散逸せぬように祈ります。
さてコンサートの模様は、ネット上のNYパブリック・ラジオで聴くことが出来ます!
コンサートの反響をネット上で眺めると、NYタイムズは、スタンリー・カウエルに対する賞賛もなく、オリジナル・メンバーのアーサー・テイラー(ds)とジーン・ジャクソン(ds)を比較して「前の方が良かった」という、全く当たり前のいや言に終わっていて、同じトリビュート・コンサートをしている者としては腹立たしいものでした。一方、ウォール・ストリート・ジャーナルのコンサート評は、激賞していてスタンリー・カウエルを「モンクのコピー・フレーズは一切使わずに、モンク音楽の精髄を表現して見せた。」と絶賛しています。百聞は一聴にしかず。ご自分で聴いて見られたら、よく音楽聴いた上での論評か、プレス・キットだけでテキトーにまとめているの記事かが、お分かりに成ることでしょう。
ルーファスのタキシードも貫禄!
このエントリーの下方にラジオのプレイヤーを埋め込んでおきましたけど、「More」をクリックしてパブリックラジオのサイトから直接入ればもう少し聞きやすいかも・・・ 冒頭に、プロジェクトの趣旨やトリヴァーやカウエルの肉声インタビューなどが11分ほどあり、それからコンサートが始まります。
オープニングは、スタンリーのソロでIn Walked Bud、寺井尚之が愛して止まない10thヴォイシングのブラックなサウンドが味わえます!
2曲目ではルーファス・リード(b)をフィーチュアしたトリオも聴けますよ。
<セットリスト>
1.In Walked Bud’
2.Blue Monk’
3.Rhythm-A-Ning’
4.Thelonious
5.Friday The 13th
6.Monk’s Mood
7.Little Rootie Tootie
8.Off Minor
9.Crepuscule With Nellie
アンコール:Little Rootie Tootie’
まだ16歳だったトリヴァーは、当時のタウンホール・コンサートの聴衆の一人であったそうです。後にモンクのバンドに加入したトリヴァーですが、よもや少年時代に聴いたコンサートを自分が再現するとは予想していなかったことでしょうね。
イベントは2夜連続で、2日目は編曲者、ホール・オバートンへのトリビュートとなり、ジェイソン・モラン(p)がフィーチュアされたそうです。初日は T.S.モンクを始めとするモンクの遺族や、当時のオリジナルメンバーも集まりイベントは大成功だったようです。
OverSeasのトリビュート・コンサートは、スポンサーもいないし、決して大ホールの大プロジェクトではないけれど、フラナガンを誰よりも理解する寺井尚之とThe Mainstemでタウンホールのコンサートに負けないトリビュートにします!
CU
「近くのロフトからもれてくるモンクのサウンドを、毎日一生懸命聴いていた。それがタウンホールのコンサートのリハーサルだった」という話を、Howard Willamsというピアニストから聞きました。場所は6AVE、28ST辺りだそうです。
竹田さま、NY特派員ならではの情報をありがとうございました。
と、いうことは毎日リハーサルをやっていたわけですね・・・
人前では、無口だったり、奇異な言動が有名なモンクが、どんな風にバンドをまとめていたのか、壁にメガホンでもひっつけて聴いてみたかったですね。