お盆のUターンラッシュで帰宅されたみなさん、お疲れ様です!お休みをご家族や恋人とゆっくりすごされたみなさん、You Are Lucky! えっ!?まだお休み中なの?!・・・絶句!
昨日はThe Mainstemのライブ、ひっそりした堺筋本町にありがとうございました!この夜は、ジャズメンのオリジナル曲特集。ミュージシャンたちが愛する人、尊敬する人の肖像を、音に託して描き出した名曲は、ご先祖様と過ごす日本のお盆に相応しいレパートリー!蒸し暑さを吹き飛ばすタイトなプレイで夕涼み!
人物の肖像を「音」で描き出すジャズの表現スタイルは、デューク・エリントンも盛んに行っていました。ひょっとしたらアフロ・アメリカン文化にそういうルーツがあるのかも知れません。
寺井尚之が夏になると聴かせるベニー・カーター(as.tp.comp.arr…)の名曲から始まったこの夜のThe Mainstemはこんなメニュー!
- Summer Serenade サマー・セレナーデ (Benny Carter) ~ Almost Like Being Love オールモスト・ライク・ビーイング・ラヴ (Alan Jay Lerner/Frederick Loewe)
- I Love You アイ・ラヴ・ユー (Sonny Stitt)
- In Walked Bud イン・ウォークト・バド(Thelonious Monk)
- Mona’s Mood モナズ・ムード(Jimmy Heath)
- Forever Sonny フォーエヴァー・ソニー (Jimmy Heath)
- Everything I Love エヴリシング・アイ・ラヴ(Cole Porter)
- Dacquiri ダイキリ (Joe Newman)
- Fine & Dandy ファイン&ダンディ (Kay Swift and Paul James)
- If You Were Mine イフ・ユー・ワー・マイン(Johnny Mercer/ Matt Malneck)
- Eclypso エクリプソ (Tommy Flanagan)
- Syeeda’s Song Flute サイーダズ・ソング・フルート(John Coltrane)
- Central Park West セントラル・パーク・ウエスト(John Coltrane)
- Bean & the Boys ビーン&ザ・ボーイズ (Coleman Hawkins)
- The Voice of the Saxophone to Coleman Hawkins from Afro American Suites of Evolution ザ・ヴォイス・オブ・ザ・サクソフォン(Jimmy Heath)
- Rifftide リフタイド (Coleman Hawkins)
Encore : After Paris Tribute to Coleman Hawkins アフター・パリス ( Sir Roland Hanna)
Ⅰ部は、セロニアス・モンクがソウルメイト、バド・パウエルの為に書いた『In Walked Bud』にBeBopの芳香が立ち上りました。バド・パウエルはモンクの親友、最高の理解者であるだけでなく、モンク音楽を表現してくれる理想のピアニストでした。『52番街のテーマ』など、バド・パウエルが演奏するためだけに書いた曲も数多くあります。モンクが深い愛情を注いだバド・パウエルは、警官の暴力からモンクをかばおうとして頭を殴打され、脳に障害を受けるという悲劇を生んだのです。
テナー奏者、ジミー・ヒースの名作が聴けたのも今夜のお楽しみ!-4は、私がジャズ界一の良妻賢母に認定する奥さんのモナ・ヒースのポートレート。モナの蒼い瞳を想わせる様な名曲ですね。ブロンドのモナは、お人形さんみたいに可愛くて、声は女優のミア・ファーロウみたい!料理も上手で思いやりがあって聡明、あんな風に歳をとれたら最高です。ジミーのアルバム《Really Big》に収録されていますが、ピアノはトミーではなくシダー・ウォルトンです。
-5もジミーが後輩ながら敬愛するテナー奏者ソニー・ロリンズのポートレート、The Mainstemはラテン、アフロ、4ビートのギアチェンジでバップ仕立てのメリハリのついた演奏解釈にして、トリオの持ち味を生かしてます。
コール・ポーターで始まったⅡ部は「緊張&緩和」が一杯。素手でたたき出すラテンリズム、リラックスしたムードの『Dacquiri』はジョー・ニューマン(ts)の作品、ジャズ講座で《Joe’s Hap’nin’s》を取り上げて以来、夏の愛奏曲。今年のダイキリは、特にまろやかでまとまりの良い出来でした。
南の島でギンギンに冷えた大きなグラスに注がれたダイキリを飲みたいな~と夢見た途端、スピードメーターが振り切れる程速い『Fine & Dandy』に目覚めてしまいました。
「あなたが私のものならば・・・」ビリー・ホリディやカーメン・マクレエの歌声が聴こえてくるトーチ・ソングは次の対訳ノートに書きたいな!オール2コーラスで短いけれど心に残る演奏だった。
ラストはトミー・フラナガンの十八番!皆既日食のダイヤモンド・リングみたいに輝くトリルに客席はうっとり!トミーのお墓にお参りした気分に。
ラスト・セットはジャズメンのオリジナル曲ばかり!まずジョン・コルトレーン(ts)の2曲から!『Syeeda’s Song Flute』は、トレーンの姪御さんが幼い頃、ピアノの鍵盤を叩いて遊んでいたメロディからできた曲だそうです。成長したサイーダさんは会計士の仕事をしていて、一度旦那さまとOverSeasに来られたことがあります。『Central Park West 』を聴くと、トレーンが優れた作曲家だったのがよく判る。素材の「アク」を上手に抜いて、しかも抜きすぎず、最大限に「うまみ」を引き出すのが京料理とデトロイト・バップの共通点かな・・・
.
後半はコールマン・ホーキンスを偲ぶ作品のパレード!トミー・フラナガンがホークのレギュラーだった時代のオハコ『 Bean & the Boys』(ビーンはホーキンスのニックネーム)、ジミー・ヒースが『アフロアメリカン組曲』に収めたホークのポートレート『The Voice of the Saxophone 』では印象的なテーマに絡むベースラインが絶妙でしたね!題名のニュアンスは「ホーキンスの音こそがサックスの音色」という意味です。作曲者のジミー・ヒースは身長160センチそこそこでの小柄な人ですが、ジミーのテナーもソプラノも『ザ・ボイス』に相応しい。一度レコードを聴いてみてください。
ラストはジャズ系ブロガー達のお気に入り『Rifftide』、ガーシュイン作品、Lady Be Goodのコード進行を基にしたモンクの曲『ハッケンサック』に文字通りリフが付いたものです。スイングからBeBopへと音楽を進化させたコールマン・ホーキンスの懐の深さは凄いですね。ベースドラムとシンバルをシンクロさせる一平さんはパパ・ジョー・ジョーンズ(ds)風でかっこよかった!
アンコールは、サー・ローランド・ハナ(p)の心打たれる名作『After Paris』を聴くことができました。巨匠サー・ローランド・ハナ(p)がホーキンスに捧げた曲で《24のプレリュード 第一巻》の9番目のプレリュード、キーはF♯mです。
ハナさんによれば、ホークは晩年に、豪奢な生活を楽しんだパリに楽旅後、体調を崩し、怪我や災難に見舞われ、苦しい日々を送ったそうで、そんな姿を想いながら作曲したのだそうです。
この曲を聴くと「滅び」という言葉の意味を思います。どんなに栄華を誇る文明も、偉大な天才も、私のような凡人にも、それはいつかやって来る。『After Paris』は、ハナさん自身への鎮魂歌のようにも聴こえました。
お盆の夜に、色んな事を思い出させてくれたThe Mainstemのライブ!次回は8月28日(金)、その頃は残暑の季節?それとも台風? ぜひお越しください!
CU