暑いと言っているうちにお盆も過ぎ、暑さは一緒でも、陽射しや風の色合いが、ほんの少し変ってきたような気がします。
ハナさんことSir Roland Hanna
先日、ナニワが世界に誇るジョン・コルトレーン研究家、藤岡靖洋さんが「サー・ローランド・ハナの新譜やから聴いてみて!」と”Colors From A Giant’s Kit”というCDを持ってきてくださいました。没後約10年、まさか新譜なんて?!…”Colors”は息子さんのマイケル・ハナ(vo)と演ってるから、名前を変えただけじゃない?寺井尚之と一緒に半信半疑で聴いてみたら、ソロピアノの歴史的名盤と言ってよいほどの作品で、最初から最後まで釘付け!しっかりアルバム・コンセプトがある正真正銘の新譜でした!
滅多にレコード紹介したりしないけど、これだけは聴いて欲しいと思いました!
1.Colors From A Giant’s Kit
2.Natalie Rosanne
3.A Story, Often Told But Seldom Heard
4.Robbin’s Nest (Charles Thompson,Illinois Jacquet)
5. My Romance (Richard Rodgers /Lorenz Hart)
6. Blues
7.’Cello
8.Moment’s Notice (John Coltrane)
9.Lush Life (Billy Strayhorn)
10.20th Century Rag
11.Naima (John Coltrane)
12.Chelsea Bridge (Billy Strayhorn)
13.In A Mellow Tone (Duke Ellington)
14.Cherokee (Ray Noble)
選曲はハナさんのオリジナル(斜体)にジョン・コルトレーンやビリー・ストレイホーンの作品、アート・テイタムやファッツ・ウォーラーといった先人達へのオマージュなど、ドラマチックな演目を聴くうち、息も出来ないなくほどの高揚感に包まれます。有り余る技巧は二人の演奏者が弾いているのではと思ってしまうほどです。
3,10,11は’80年代に録音したピアノ・ソロ『Round Midnight』に収録済、あのアルバムもハナさん自身が寺井に送ってきた会心のソロ・アルバム作でしたが、テーマやテンポに変更が加えられ、新しい色合になっている。
オーディオ・マニアじゃないけれど、音質が最高です!録音はティム・マーティン、タングルウッド音楽祭でボストン交響楽団のシニア・エンジニアを努める巨匠です。空気感のある自然なピアノのサウンドが、生前のハナさんの音色を思い出させてくれる。制作はハナさんの弟子であり崇拝者でもあるビル・ソリン主宰のIPO、前作はトミー・フラナガンへのトリビュート・アルバム『Tributaries: Reflections on Tommy Flanagan』、これも同じエンジニアがスタジオでなくクラシックのコンサート会場で録音した作品だったので、90年代の録音とジャズタイムズには出ていたけれど、ひょっとしたら同じセッティングなのかも知れません。
テイタム直系の鮮やかなラン、強靭かつ繊細なストライド、口を尖らせて、牛若丸のようにピアノのベンチを左右にワープしながら繰り出すウルトラDの鮮烈パッセージ、小柄な体で大きなプレイを繰り広げた剛速球派、在りし日のハナさんの勇姿が目に浮かびます!
ハナさんはハイスクール時代、2年先輩のトミー・フラナガンに影響を受け、クラシックからジャズに転向した。ダイアナ・フラナガンは二人をソウル・ブラザーズと呼んでる。
「チェルシー・ブリッジ」などトミーも愛したストレイホーンを聴くと、ハナさんの色合いはフラナガンに比べて青みが薄く赤みが強いように感じたり・・・ソウルブラザーズの似たところ、違ったところを聴くのもまた楽しいですよね。
先月、ハナさんの未亡人ラモナさんからお便りをいただきました。ハナさんは日本ツアー中に体調を崩し、共演者の中山英二(b)さんと、NY在住のベーシスト、青森善雄さんの献身的な努力で、日本で入院治療を受け、帰国後、ご家族に看取られて亡くなりました。その顛末についてこんな風に書いておられます。
「ローランドは日本をこよなく愛していました。最後の来日を決めたとき、決して健康体ではなかった。それでも行かねばならなかった。 あの人は日本に”さよなら”を言いたかったのだと思います。最後の日本ツアーの後、彼は一度も演奏せずこの世を去りました。きっと死期が迫っていることを無意識に予感していたから、無理を押して日本に行ったのだと確信しています。」
トミー・フラナガンが亡くなった直後、悲嘆にくれていた私たちに「私は絶対に泣かない!」と強い語調で宣言し、渇を入れてくださった。そして翌年ハナさんもトミーの後を追うように逝ってしまった。このアルバムから、真っ直ぐなハナさんの心根が聴こえてきます。私はレコード会社の回し者ではないし、ミムラさんでは買えないけれど、ぜひ聴いてみて下さい!淀んだ心が洗われます。
余談ですが、昨日は寺井尚之+鷲見和広(b)のエコーズ、いつものようにサー・ローランド・ハナの演目を沢山やりました。ジャズ評論家の後藤誠先生がレポートしてくださったのでぜひご一読を!
8月20日(土)は寺井尚之メインステムトリオ。先日のジャズ講座、“Lady Be Good…For Ella”の演目が聴けますよ。ぜひお越しくださいね。お勧め料理も寺井尚之の自信作、「黒毛和牛の赤ワイン煮」です。お楽しみに!
CU
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ご無沙汰してます。
珠重さんが薦めるアルバムなので、早速購入しました。
技術的なことは全く分からないのですが
美しいメロディの②と、溜息が出るほど華麗な⑫は、既にヘビーローテーションです。
これから、更にじっくり聴き込んでみます。
ありがとうございました。
MASAさま、お久しぶりです!
自分の好きなものを、一緒に好きになっていただけるのは嬉しいです。ハナさんは小柄、コロンとした小さな手だったけど、火の玉みたいなエネルギーで弾いていました。「うまい」より「心のある」プレイに拍手する方だった。
そんなハナさんがよく出ていますよね。②も⑫も大好きです。ピアノが喜んで鳴っているって感じがします。
MASAさんにまたOverSeasでお目にかかれますように♪
私も大変ご無沙汰しております。
ハナさんのソロアルバムとなれば
買わない理由無し!で即買いました
まだゆっくり時間が取れていないので
聴いていませんがこれからじっくり…
ところでムラーツさん、良いお医者様を
みつけたようです
もうすぐ誕生日ですね♪
Bushnellさま、お久しぶりです!
ハナさん&ムラーツデュオ、来日作戦実現間近でハナさんが亡くなられました。このCDは、私たちへの「渇」というか、大きな遺産と思っています。どうぞゆっくりお楽しみくださいね!