Ajoy!(アホイ) エミル・ヴィクリツキーさんとお会いしてからチェコ語が第二言語になった寺井珠重です(??)。
今週はハンク・ジョーンズさんの大往生に激震が走りました!心からご冥福をお祈りいたします。ヴィクリツキーさん訪問のきっかけになったジョージ・ムラーツ(b)とハンクさんが25日から共演予定していたNY”バードランド”のジョー・ロヴァーノ(ts)4はスティーブ・キューン(p)が代役だそうです。アシスタントでがんばるしょうたん(b)は、NY在住の銀太君(b)のアパートに滞在させてもらって仕事する予定らしい。しょうたん、銀太くん、よろしくね!
<東京:エミル・ヴィクリツキーと村上春樹>
前に書いたように、エミル・ヴィクリツキーさんの訪日祝賀会は我らがアニキ、ジョージ・ムラーツのご縁と、上海万博がきっかけで実現したものでした。祝賀会の前日には、今回の来日を色々サポートしてくださった駐日チェコ大使館で非公式の演奏会が催されました。ヤナーチェクにもジャズにも精通する村上春樹さんがチェコ語版の著書を携え、コンサートに駆けつけてくださったそうです。色々お話できて充実した時間がすごせたと、ヴィクリツキーさんはとても喜んでた。ジャズ界にもハルキストは多い!チェコ・ジャズにとっても大きなお土産になりましたね。
<大阪:待ち構える寺井一家>
大阪で待ち構えるのは、メインステムでおなじみ、宮本在浩(b)+菅一平(ds)リズムチーム。ヴィクリツキーさんは事前にトリビュート・コンサートの録音を聴き、「ぜひザイコウ+イッペイと一緒にトリオで演りたい。」と言って来られたんです。ところが、彼のレパートリーは彼の出身地チェコのモラヴィア地方ゆかりの楽曲で、馴染みのないものばかり。おまけに事前に添付ファイルで送られてきた譜面の束は、加筆や修正だらけで超読みにくいハンドライティング、タイトルは全てチェコ語!手持ちのCDは殆ど英語表記なので、どの音源がどの譜面なのかチンプンカンプン!譜面の書き方が綺麗とフラナガンに誉められたことのある寺井尚之は、「ハーチェク」とか「チャールカ」など記号のついたアルファベットや、上から何度も書き直したコード記号に「なめとんか!?」と怒り心頭。でもすぐ気持ちを切り替えて「ビクリツキ暗号解読チーム」を組織、大きなテーブル一面に譜面を並べ、音源を聴きながら、該当する譜面をカルタ取りみたいに取っていくローラー作戦で、数日間にばっちり整理をして、CDの演奏を参考に、各々の楽曲についての傾向と対策を二人の共演者に伝授したのでした。
(後から聞いたのですが、譜面に加筆が一杯あった理由は、録音時にジョージ・ムラーツから、こまごまとダメ出しが入ったからだったそうです。ジョージ・ムラーツさんが、エミルさんとの共演に力を入れてたことが判りますよね!)
そんな寺井尚之の心境は亀田兄弟に試合の作戦を伝授する亀田父のようなものであったらしい。ほんまかいな!?
亀田父の熱い想いに答えたザイコウ+イッペイはメインステムの4月ライブ以降、ヤナーチェクとモラヴィア民謡を徹底研究、ヴィクリツキーのレギュラートリオやジョージ・ムラーツ、ルイス・ナッシュとの共演盤や、モラヴィア民謡集などの演奏形態をしっかり掌中に収め、虎視眈々とこの日を待ったのです。
時差ぼけの疲れも見せず、意気揚々とやってきたヴィクリツキーさん、東京駅から道案内してくださったG先生、どうもありがとうございました!挨拶もそこそこに通しリハーサル開始!
亀田ファミリーの努力が実り、リハは殆どの楽曲が一発でOK!ビクリツキーさんから”Fantastic!”の声が連発でトリオに満面の笑み!宮本在浩(b)のムラーツへの傾倒ぶりや、菅一平(ds)がライブで多用するエンディングの「落とし」フレーズに大喜び。ややこしい譜割りのバース・チェンジも即クリア!エミルさんが思わず”Congratulation!”と祝福してしまう場面すらあり、私も少し誇らしかったです。
そんなエミルさんをじっと見守る寺井尚之から「かなり弾けるで・・・」と、つぶやきが漏れました。
<祝賀会:関西風味>
いよいよ本番!チェコの至宝ピアニストが登場すると、満員の会場が「アホイ!」とチェコ語で歓迎!一気に空気がほぐれました。白いシャツと黒いスラックスの爽やかな出で立ち、ソロは一曲だけで、後は全てトリオで構成されたコンサート、いかに初顔合わせの二人を気に入ったかがよく判りますね!
<セット・リスト>
<1>
1.メドレー p.solo :水のせせらぎ (Bezi voda bezi モラビア民謡 arr. by Emil Viklicky)
~ trio: :悲しみの桃の木(V Sirem poli hruska モラビア民謡 arr. by Emil Viklicky)
2.Everything I Love(Cole Porter)
3. A Little Bird Flew Over(モラビア民謡 arr.by Emil Viklicky)
4. Hilands, Lowlands (モラビア民謡 arr.by Emil Viklicky)
5.Desire (Touha :モラビア民謡 arr.by Emil Viklicky)
6.Wine, Oh, Wine (Vinko, Vinko モラビア民謡 arr. by Emil Viklicky)
<2>
1.ハロウィーン Halloween (Emil Viklicky)
2.ピーコックス The Peacocks (Jimmy Rowles)
3.霧の中で In The Mists(IV)(Leos Janacek,arr Emil Viklicky)
4.ファノーシュ Fanoshu (Emil Viklicky)
5.アウストレリッツの戦いAusterlitz (モラビア民謡 arr. by Emil Viklicky)
<アンコール>
1.Blues In the Closet ブルース・イン・ザ・クローゼット(Oscar Pettiford)
2.Tour’s End ツアーズ・エンド (Stan Getz)
曲を重ねるに連れトリオの息はぴったり!トリオのアイコンタクトと、見守る寺井尚之こと亀田父のリングサイドの姿が印象的!テーマもソロも、ビクリツキーさんにぴったり寄り添う二人のプレイで倍音が弾け、モラヴィア音楽に特徴的なポリリズムとハーモニーが炸裂!会場を魅了しました。
長い足がピアノからはみ出しそうなヴィクリツキーさんの演奏フォームは寺井門下の禁じ手です!でも、体をくねらせるように激しく動きながら繰り出すタッチは端正そのもの!ここ数年間にお迎えしたピアニストの内でもナンバー1のタッチで、調律の川端さんもほっとしておられました。エミルさんの人格と同じ、音楽もクリーンカット!クリアなサウンドと真摯なプレイ、日ごろ馴染みのないモラヴィア民謡も、ジャズの曲と変わりなく馴染みのよく響き、2曲アンコールをしてもスタンディング・オベーションは鳴り止みません。
エミルさんのチェコ英語のMCを、寺井がジャズ講座ばりの大阪弁でユーモラスに解説してくれて、コンサートの雰囲気はますますアット・ホームなOverSeasらしいものになりました!それはエミルさんがリハーサルの時からモラヴィア民謡の背景にあるエピソードを詳しく教えてくださったおかげでした。次回はコンサートで学んだモラヴィア文化の不思議な魅力についてお話します。
全ての写真は私のカメラでG先生が撮影してくださったものです。G先生色々ありがとうございました!
土曜日はエミル・ヴィクリツキー氏の洗礼を受け、一回り大きくなったザイコウ、イッペイが聴ける寺井尚之The Mainstemの5月ライブ・パート1!楽しみです~。ぜひお越しくださいね!
CU
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