クリスマス・デイに思うのは・・・

パーティの華たち    ごちそう
 今年も12月23日に寺井尚之ジャズピアノ教室生徒会の『クリスマスではないParty』開催。
 皆のおいしい顔や楽しい顔を見ると、疲れも吹っ飛びます。

    Hello, Young Lovers! 昨夜のクリスマス・イブ、いつもは男同士でライブを聴きに来てくれる青年が、とびきり素敵な女性をエスコートして来てくれたりすると、わけもなく嬉しくなりました!大昔の子供時代のイヴの夜に、買ったばかりのモジュラー・ステレオでビング・クロスビーの『ホワイト・クリスマス』をかけ、座敷でファミリー・ダンスパーティ。私はよちよち歩きの弟と前衛ダンス、ふと見上げると両親が飛び切り幸せそうな顔でダンス!意外に上手で、なんだか嬉しかった・・・そんな記憶があるからかも知れません。

<クリスマス・キャロルズ>
 クリスマスといえば、もうひとつ思い出があります。それは’86年の12月25日、クリスマス・デイに、Jazz Club OverSeasでスタンリー・カウエル(p)のソロ・コンサートを開催した時のこと。
  ラトガーズ大学の大先生になる前のスタンリー・カウエルは、その頃新主流派の先鋭ピアニストとして頻繁に来日していました。OverSeasに初お目見えしたのは’83年夏のヒース・ブラザーズ(ジミー・ヒースts、パーシー・ヒースb、アルバート・“トゥティ”・ヒースds)との伝説的名コンボ、それ以来寺井尚之も常連様たちも、すっかりカウエル・ファンになった。確かそれが初めてスタンリー・カウエルをメインにしたコンサートだった。
 ノン・クリスチャンでも、クリスマスは家族と過ごすのがアメリカの習慣だから、ミュージシャンといえど、クリスマスの日本ソロ・ツアーは、スタンリーにとってかなりキビシイものらしかった。
 詳しいことは判らないけど、コンサート前にロードマネージャーさんが言うには、季節柄、どこに行っても、「クリスマス・コンサート」としてブッキングされていて、スタンリー・カウエルがどれほど凄い名手かを理解していない公演地ばかりだったそうです。行ってみたら、ピアノがアップライトだったり、演奏中にスパゲティを炒める音がジュージュー響いていたり、挙句の果てにはクリスマス・ソングや、ビートルズの『イエスタディ』(ジェローム・カーンのイエスタデイズじゃなくて)までリクエストされる惨状に、カウエルさんは心身ともに疲れきっている。」ということだった。
 それを聴いた寺井尚之は即座にカウエルに言った。
「うちでは、あんたがどんな人なのか、お客さんも皆よーく判ってる!Listen, Stanley, OverSeasでクリスマス・ソングなんか絶対演らんでええ!スタンダード曲も演らんでええねん!どうぞ、あんたが好きな曲を演奏してください。それが皆の聴きたい曲です!」
 OverSeasでのコンサートは、以前のヒース・ブラザーズですっかりカウエルに心酔したお客様が沢山詰め掛け、クリスマス・ソングを期待して来たような人は見当たらない。指の動きが左右対称のミラー奏法を駆使したオリジナル、『エクイポイズ』を初めとしてオリジナル曲や、父の友人で子供の頃自宅で聴いたアート・テイタムを彷彿とさせる兆速のJust One of Those Thingsに会場は大歓声!聴衆の中には、今もOverSeasを応援してくれるパノニカマダムの姿もありました。その時からJust One of Those Thingsはマダムのお気に入りになったのだ。

&nbsp大きな体躯のスタンリーが弾くとOverSeasの小さなグランドは余計に小さく見えたけど、店の隅々まで倍音が鳴り、88鍵上を大きな足長クモが目にも留まらぬ速度で縦横無尽に動き回るかのような超絶技巧に会場から感嘆のため息、これまでのモヤモヤを洗い流すカタルシス・・・クリスマスのかけらもないハードなソロピアノに、アンコールの拍手は鳴り止まない!今から思っても凄いプレイだったなあ。
 アンコールに応えてスタンリーが演り始めたのはあれほど嫌がっていたはずのクリスマス・ソング!、それも賛美歌のメドレーだった!「諸人こぞりて Joy to the World」 「聖しこの夜 Silent Night! Holy Night」「神の御子は今宵しも O come, all ye faithful」・・・ 心の赴くままに、ピアノで綴るクリスマスキャロルの清々しいこと・・・ジャズの店が教会になったみたいな魔法が起きた。
 あのクリスマスの夜に大事なことを教わった。芸術家の心を開く鍵は、いつもお客様たちの手の中にあるんですね。
スタンリー・カウエル&チャールス・トリヴァー    OverSeasの長年の友、ルーファス
1月に来日するカウエルとチャールズ・トリヴァー、そして、スタンリー同様長年の友で大先生のベーシスト、ルーファス・リード。OverSeasのキッチンではタメゴロウさんと呼ばれていた。写真はallaboutjazz.comより
  スタンリー・カウエルと寺井尚之はそれからすっかり仲良しになって、何度もコンサートをしたり、家に泊りに来たこともあったけど、ここ15年以上は大学に専念していて、休暇以外はツアーすることがなかった。でも来年1月にチャールズ・トリヴァーのビッグ・バンドで日本ツアーを久々にやります。
 スタンリーだけでなく、ビリー・ハーパー(ts)やルーファス・リード(b)も一緒!皆に早く会いたいなあ・・・
 今年のライブも後2日、楽しい演奏で年末を飾りたい!!
CU 

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