ジミー・ヒースが遺した音楽の 6か条

Jimmy Heath 1926-2020

 2020年1月に93才で亡くなった偉大なるホーン奏者、ジミー・ヒース、フィラデルフィア出身、そして第二の故郷はNYだ。ジミーは晩年体調を崩し、娘さんの住む南部に転居するまでは、NYクイーンズ、コロナ地区にある歴史的公営住宅、ドリー・ミラー・コーポの一室に50年以上住んでいた。一度、夕ご飯に招待してもらい、夫と伺ったことがある。日本の団地のようなアパートの壁にはチャーリー・パーカーはじめジャズの巨人たちのポートレート、広々とした室内にはピアノがあり、窓の外にはUSオープン・テニスが開催されるコロナ・パークが一望できた。

 ジミー・ヒースのような巨匠が他界すると、お葬式と別に音楽葬が行われるのがジャズ界の慣習で、リンカーン・センターのローズホールでコンサートが予定されていたのですが、コロナのために延期になってしまった。その代わりというべきか、地元クイーンズの<フラッシング・タウンホール>がとても素敵なトリビュート動画を作成している。


 このホールでジミーが晩年に行ったコンサートの模様と、家族やミュージシャン達のコメントがうまく組み合わされていて、常に皆に温かく接してくれた生前の巨匠の姿がしのばれます。

 登場するのは、ジミー最愛の妻、モナさんや娘さんのロスリン、ヒース・ブラザーズ唯一の生き残りになったアルバート”トゥティ”ヒース(ds)や息子のムトゥーメ(perc)はじめ、ジミーゆかりのミュージシャン達:愛弟子アントニオ・ハート、バリー・ハリス、パキート・デリベラ、デヴィッド・ウォンなど多くの人々がオンライン上でそれぞれ思い出を語り、彼の曲を演奏したり…そのヴィデオ・クリップと、ジミー・ヒースが少年のように嬉々としながら、クイーンズ・ジャズ・オーケストラを指揮するコンサートの模様が重なり、ジーンときます。

 中でも印象的だったのは、ジミーのレギュラー・ピアニストだったジェブ・パットン(左写真)が伝えてくれた「ジミー・ヒースの教え」です。ジェブはサー・ローランド・ハナとジミー・ヒースに大変可愛がらた才能豊かなピアニストです。15才で父親と死別した彼にとって、ジミーは父親のような存在だったといいます。そんなジェブにジミーが授けた言葉は、ジャズを志す全てのミュージシャンにとって大切なことばかり!

 *上のヴィデオで33分辺りから彼のコメントと演奏が聞けます。 

=ジミー・ヒースの教え=

(1)Tell your story.– 自分自身のストーリーを音楽で語れ。

(2) What was good Is good.- 良いものは時代を越えても色褪せない。

(3)Music gotta have a groove.-グルーヴは音楽に不可欠。

(4)Music is all around us, it’s in the air. No one has a monopoly on music.
   – 音楽は我々みんなの周りに分け隔てなく存在し、空気中に漂う。だから、音楽を独占することは誰にもできない。

(5)Music should have science but it always should have hearts.
   – 音楽には理論体系が必須だが、どんな場合も常に”心”を伴わなければならない。

(6)最後はジミーがディジー・ガレスピーから受け継いだ音楽家の立ち位置についての名言です。
  Always have one foot in the past, one foot in the future.
– 常に片足を過去の伝統に、もう片方の足を未来に置いて立て。

   ジェブさん、金言を公表してくれてありがとう!

What was good Is good! ジミー・ヒースの音楽をいつまでも聴き続けます!

 季刊「ジャズ批評」(217号)にジミー・ヒースについての記事を寄稿しました。

 

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