ゴールデン・ウィークはケニー・ド-ハムを読もう!(2) 激辛編

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 名トランペッター、ケニー・ド-ハムが書いたレコード評は、好評、酷評の区別なく、演奏描写がしっかりしていて、やっつけ仕事がない。また、お公家さんみたいに、奥歯に物の挟まった言い方や、類語辞典片手にひねくりだした美辞麗句もない。ただ、真剣に聴き、KDのプレイと同じく、簡潔でストレート・アヘッドだ。
 今回、紹介するレコード評は、当時、日本でも非常に人気があったトランペットのスター、フレディ・ハバード(tp)のライブ盤、LPが片面一曲ずつの演奏です。メンバーはリー・モーガン(tp)を迎えた豪華版、演奏場所はブルックリンにあった『クラブ・ラ・マーシャル』。KDの評文は激辛!
ダウンビート誌 ’66 8/25 号より
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 Freddie Hubbard(tp)/ The Night Of The Cookers- Vol.2 (Blue Note 4208)
評点 ★★★
曲名
1.Jodo
2.Breaking Point
パーソネル
Freddie Hubbard(tp),
  Lee Morgan(tp)
  James Spaulding(as fl),
  Harold Mabern(p)
  Larry Ridley(b)
  Pete LaRoca(ds)
  Big Black(conga)

  16小節のシンバル・ワークに、疑問の残るアルト+トランペットのアンサンブルからフレディ・ハバードのソロ。しょっぱなから、彼お得意の『現在奮闘中』の看板を見せびらかす。
安定したペースで聴かせる他の殆どのソロイスト達(あるいは少なくとも数名の)から自分をより目立たせようとして、最初はペースを定めることをしない。
 
 ハバードは、まるでスポーツカーがくねくねしたカーブをターンするが如く、見え隠れしながら、退場するそぶりを見せ、一方で、ハイ・オクターブのエネルギーと多彩なアイデアの爆弾を投下し続ける。そのプレイは、有り余る肉体的パワー、攻撃性と、知的なハーモニーを併せ持つ20世紀的即興音楽らしい、炸裂するような流動感を作り出している。
 続くスポールディングのアルトはルーズでありながら、シャープで抑制が効いている。オープンなサウンドのメイバーンのピアノから、リズムセクションで、チーフ・ナビゲイター役のピート・ラロッカの激しいドラムが取って代わる。その後に来るのは、コンガの新人で、最も傑出した存在、今、ジャズ界で最もクリエイテイブな、ビッグ・ブラックだ。彼のプレイ自体に、先輩コンガ奏者ーチャノ・ポゾ、モンゴ.サンタマリア、、トゥオノ・オブ・ハイチやポテト・バルデス達のような深い音楽性は感じられないが、ビッグブラックには何か特別なものがある。ラロッカは最終コーラスでバンドをまとめ、<Jodo>は激しい幕切れとなる。
<Breaking Point>はカリプソの曲。ハバードが先発ソロ、、次にスポールディング、そして、“サイドワインダー”で有名なMr.リー・モーガンからメイバーン‥この曲を聴くのに延々費やした時間のおかげで、僕もついに我慢の限界(Breaking Point)に達する。
 ハバードは素晴らしい。しかし、このアルバムは退屈だ。(KD)

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フレディー・ハバード(1938-)
’92にトランペット奏者にとって一番大切な唇を損傷してから活動は少ない。

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 ハバードは、’70年代以降、頻繁に来日していて、私もよく観ました。大学のクラブのビッグバンドのメンバー達は、皆、ハバードに熱狂していた。超うまい!パワーも凄い!へヴィー級チャンプみたいだった!だけどなあ… 
 私がずーっと感じていた、「だけどなあ…」という漠然とした感じを、ちゃんと言葉にしてくれたのは、私の知る限りケニー・ド-ハムだけだ。
(続く)

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