Evergreen物語(5)NY発;月への軌道:Fly Me to the Moon

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 厳しい寒さが少し緩んだ感じの大阪、昨日は月がやけに明るく輝いていた!寺井尚之メインステムのアルバム、『Evergreen』のスタンダード物語、今日は『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』のお話を。
<NY山の手、高級クラブ発>
 “Fly Me to the Moon”は皆さんよくご存知ですよね!羨ましいことに、作詞作曲のバート・ハワードは、これだけで一生裕福に暮らせたというほどのヒット曲です。
07blue1.jpg色々探したけど”The Blue Angel”の写真はこれだけしか見つかりませんでした。大火事になった時のニュース写真。
 この曲の初演は1954年ですから、Evergreenの収録スタンダード曲中一番新しい。生まれはNYの山の手、アッパー・イーストサイド、”The Blue Angel”という高級サパークラブでした。
 このお店は、ヴィレッジ・ヴァンガードの名オーナー、マックス・ゴードンが手がけたクラブの一つで、現在のヴァンガードと全く違う高級店、ミルドレッド・ベイリーや、若き日のバーブラ・ストライザンド、コメディアン時代のウディ・アレンなどが出演し、フランス人シェフによるグルメな料理と、ヨーロッパ的な趣味の良い内装で大繁盛していたそうです。映画通ならもうお分かりでしょうが、マレーネ・ディートリッヒがキャバレーの踊り子を演じて大ヒットしたドイツ映画”The Blue Angel”(嘆きの天使)にちなんだ店名です。
FeliciaSanders.jpg HowardBart.jpg フェリシアと作者のバート・ハワード
 作者のバート・ハワードはこのクラブによく出演していた美人歌手、フェリシア・サンダーズの専属ピアニストであり、クラブのレギュラー司会者としても活躍していました。でもフェリシアが歌ったオリジナル・ヴァージョンはワルツだったし、タイトルは、現在副題として用いられる”In Other Words”(言い換えれば)、まだまだ「月」まで届くヒットではなかった。
<ボサノバ、シナトラ、そしてロケット>
fly_me_jo_harnell.jpg この曲がワルツから4拍子に変わったのは1962年、ジョー・ハーネルというアレンジャーが、ボサノバ・ブームに便乗して編曲し、現在まで脈々と続く演奏スタイルの基礎を作りました。
 やがてTVが隆盛になり、ゆっくりフランス料理を楽しみながらショーを楽しむライフスタイルは廃れ、”The Blue Angel”は売却済、でも歌は時代の変化に乗り、さらに月に近づきます。
sinatra_basie.jpg 当時の世の中は米ソ冷戦時代真っ只中、宇宙の覇権も争って、アメリカは国を挙げてアポロ計画を推進していました。そんな’63年、フランク・シナトラが、カウント・ベイシー楽団との共演盤を製作するにあたって、クインシー・ジョーンズがスイング感一杯のアレンジを施し、メリハリのあるヴァージョンが大ヒットしました。演奏の良し悪しだけでなく、文字通り「月に連れて行って」もらえる日は近い!そう皆が感じた時代のテーマソングになったんです!
 シナトラの『Fly Me to the Moon』のテープは、アポロ10号に搭載され、乗組員の愛聴曲となり、アポロ11号で宇宙飛行士バズ・オルドリンが月面着陸した際にもかけられて、世界中に発信された!『Fly Me to the Moon』は名実共に月旅行した歌の第一号になっちゃった!
 元は「言い換えれば」(In Other Words)だった曲、「言い換え」たら、月に行けたラッキー・ソング。その後もアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のエンディング・テーマに使われ、若い世代に親しまれるエヴァーグリーンな曲です。

<フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン>
原歌詞はこちら。
詞,曲:Bart Howard
私を月に連れて行って、
星の間で遊ばせて、
木星や火星の春は
どんな風?
言い換えると、
手を握って欲しいだけ、
言い換えるとね、
キスして欲しい!

心を歌で一杯に、
いついつまでも歌わせて。
あなたこそ求める人、
憧れ、魅了される人
言い換えると、
誠実でいて欲しい!
つまり、
愛してる!

 このエントリーを書いている1/18は満月、『Evergreen』をダウンロードして、冬の夜空に輝くお月様に挨拶しましょう!
CU

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