ディジー・ガレスピー:幻のコンサート映像

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 ベニー・カーター

  先日のコンコード・ジャズフェスティバル、行かれましたか?ルイス・ナッシュのグループが、Tin Tin DeoやMean Streetsなど、トミー・フラナガン・トリオの演目を披露し、良かった、いや別物だ、と色々話題になっていました。いずれにせよ、フラナガン没後10余年、やっと本場のミュージシャンに取り上げられたのが嬉しいです。でも寺井尚之のプレイだって、決して引けを取りませんよ!ぜひぜひOverSeasに聴きに来てみてくださいね!

 最近、寺井は、押入れに保管していた膨大なジャズ映像ビデオ・コレクションをDVDに変換し、嬉々として再チェック。皆さんに良い映像、巨匠たちの姿を観て欲しいからです。

 BS(衛星放送)発足直後は、ジャズ関連プログラムが試験放映されていたので、寺井は自分の好みと関係なく、ありとあらゆるジャズのアーティストの映像を、高画質、高音質のヴィデオ機器で録画していました。

 中には、YOUTUBEでも、DVDでも観れないお宝も。米国のジャズ・ファンが躍起になって捜す垂涎のTV番組を観てみました!

<ディジー・ガレスピー70th バースデー・コンサート>

 これは、1984年6月6日、ワシントンDC郊外にある広大な文化センター、「ウルフトラップ」で開催された、ディジー・ガレスピーの70才バースデー・コンサートの記録。ディジーや参加ミュージシャンのインタビュー、チャーリー・パーカーとの歴史的映像など、ガレスピーの輝かしい音楽歴とコンサートを組み合わせて、PBS(公共放送)が一編のドキュメンタリーに仕立てたものです。

 ナレーションは、世界中にジャズを広めた功績を讃えられる”The Voice Of Amrica”の看板アナウンサー、ウィリス・コノーバー。ジョージ・ムラーツ(b)がチェコでジャズに出会ったのも、コノーバーの “Music USA”を聴いていたから。外国人にも極めて判りやすい英語で勉強になります。

 ミュージシャンへのインタビューも、とても興味深いものばかり!ビッグ・マウスのフレディ・ハバードが、真面目に技術的なことを語っていたり、ステージ上ではコメディアンみたいなジェームズ・ムーディが、シリアスにディジーへの想いを語っているのを聞き涙・・・

  コンサートは絢爛たるスター、総勢30名余り!(左の写真はごく一部)、様々の組み合わせ、凝ったアレンジでディジーのオリジナル曲を演奏するのですが、ゴージャスなだけでなく、中身が濃いくて圧倒的!

 例えば、ビバップ編:Birk’s Worksでは、御大ベニー・カーター(as)、J.J.ジョンソン(tb)、22才のウィントン・マルサリス(tp)をフロントに、リズムセクションがハンク・ジョーンズ(p)、ルーファス・リード(b)、ミッキー・ロカー(ds)というドリーム・バンド。演奏の中身はお祭りムードなし!スリル溢れる真剣勝負です。フロント陣とハンクさんのソロで沸いた後、ベース・ソロになると、ザ・キング・ベニー・カーターが、他の誰よりも早く、ベースの方に向き直り、傾聴の姿勢を見せます。すると、瞬時に後の二人もそれを見倣った!超一流の品格は、プレイだけでなく、こういう細かい所作に表れる!

 ウィントン、ハバード、そしてディジーの一番弟子、ジョン・ファディスのトランペット・バトルもマジの真っ向勝負!だってディジーがリングサイドで観てるんだから、必死です。ハバードにいつもの派手なアクションなし!ひたすら誠実にプレイを展開、秀才君、マルサリスには、ディジーの目力プレッシャーがのしかかります。愛弟子ファディスの番になると、その視線が急に柔らかになるのが、映画のワン・シーンみたい!

 プレイの機微、心の機微が目に見える、映像の力はすごいなあ! 

 ラテン編では、日本の誇るピアニスト、ケイ赤城登場!エディ・ゴメスやアイアート・モレイラ、フローラ・ピュリムと共に、弾丸スピードのTANGAで胸のすくようなソロ!日本の誇りだ!寺井尚之も「うまいなあ!」と絶賛でした!

 色んな編成の豪華コンボの後は、ディジーとヘビー級アーティストがサシで渡り合うセッション、これが圧巻!お相手は、ソニー・ロリンズ、オスカー・ピーターソン、カーメン・マクレエ!マクレエが歌うBeautiful Friendshipは、この特別なコンサートにぴったりな歌詞にしてあって、エンディングで大喝采!こういうのを聴くと対訳を掲示したくなっちゃいます。

 そしてピーターソンとデュオで奏でるAll the Things You Areの美しいこと・・・もう鳥肌が立ちます。

 フィナーレは「燃えよドラゴン」など映画音楽家として活躍したラロ・シフリンの編曲、指揮、全員による「Happy Birthday」 で大団円!

 

 <ガレスピー父親、パーカー母親論>

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  この番組は、いままで、ディジー・ガレスピーを「ほっぺたがカエルみたいになる面白いおじさん」と思っていた人にぜひ観て欲しい!ディジーのプレイ、その出し入れ、そのリズム感、五線紙のおたまじゃくしが、トランペットから3D映像で飛び出します!平らなカンバスの上に、遠近法で奥行きを描いたレオナルド・ダ・ビンチと一緒です。だから聴いて欲しい!観て欲しい!

 ハードバップ期のミュージシャンにとって、ディジー・ガレスピーは、チャーリー・パーカーと共に間違いなく「神様」だった。スミソニアン博物館が所蔵するジャズ・アーティストのインタビューでそう語る人は多いし、トミー・フラナガンもそう言ってた。

 この二人の違いは、ディジーは「時には厳しく」若手に「教える」ゼウスで、バードは「優しく励ます」菩薩だったこと。フラナガンもケニー・バレルも、コルトレーンもゴルソンも、みんな駆け出しの頃、バードに励まされ、ディジーに仕込まれて一流になった。だから、ディジー=父、バード=母のハードバップの両親論を展開する人が多いのです。

 この番組でもミュージシャンたちが語っているように、ディジーはモダン・ジャズ・トランペット奏法の基盤を作り、新しいスケールを作り、それを惜しみなく後進達に伝授した。「寺井尚之はディジー一派に伝わる革新的なスケールを、ジミー・ヒースに教えてもらいました。  

 ディジーの家には2本電話があって、1本は後輩からの「ジャズ理論相談室ホットライン」だったといいます。

 同時に、チャーリー・パーカーが非業の死を遂げ、ディジー・ガレスピー楽団が経済的に破綻したことは、ジャズ史に大きく語られなくても、ミュージシャンにとっては人生観を変えるほどショックな出来事で、その後のジャズの流れに大きな影響を与えているんです。

 というわけで、この映像に全部日本語テキストをつけました。映像は7月寺井尚之の解説で、7月にご覧いただけます!

 <ディジー・ガレスピー70th バースデー・パーティ>

 7月6日(土) 開場6pm-/開演7pm-

   受講料:2,100yen (学割1050yen)

 皆さん、ぜひ一緒に観ませんか?

 

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J.J.ジョンソン

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カーメン・マクレエ

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 フローラ・ピュリム

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ウィントン・マルサリス

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フレディ・ハバード

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ジョン・ファディス

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オスカー・ピーターソン

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ハンク・ジョーンズ

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