アイ・ミス・ユー !”あまちゃん”

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 NHK連続TV小説”あまちゃん”、毎日続けて観るのが楽しみだったTV番組は、「鉄腕アトム」や「ひょっこりひょうたん島」以来かも・・・ある意味快挙!?

 きっかけは、ひそかに敬愛する映画評論家の町山智浩さん始めいい年をしたおっさん…いえ、お兄さん達が、毎日ツイッターで絶賛していたこと。関西人が「・・・けろ」だの「んだ!」だの東北弁で嬉しそう。ここまでの強い感染力を持つドラマって?と興味を覚えました。
 初めてのオープニング、そのテーマ・ソングは、スカのアップビートがそのまま「んだ、んだ、んだ」って東北弁に聴こえてて、なかなかやるやん!
 
 飛ぶ鳥落とす勢いの宮藤官九郎さんのドラマは、ニール・サイモンやビリー・ワイルダーに負けない心に残る名セリフ、NHKにも拘らず、ブラック・ユーモアやアドリブが一杯で、有機的にスイングしてる!個性豊かな登場人物にベストマッチな役者さんたちが命を吹き込んで、隅々まで作り手の愛情が感じられる描き方!まるで、デューク・エリントン楽団のBrunswick盤を毎日一枚ずつ聴いてるような15分間ドラマには毎回ダイナミックな見せ場があって、笑って泣ける。日本のTVドラマ、たいしたもんだと思いました。

<Quote, Unquote>

Singing_1.jpg このドラマには時代遅れな私のストライク・ゾーンにビシっと入る浅草っぽいギャグや、名画の泣けるクオートがいっぱい!あまちゃんのママ、天野春子さんが、うつろいやすい歌唱力(音痴)の鈴鹿ひろみさんの吹き替えをしたことから起こる人間模様。その設定はジーン・ケリーとデビー・レイノルズのミュージカル「雨に歌えば」の引用ですよね。琥珀やスターの原石に魅了される水口クンの姿は、ジョージ・バーナード・ショウだ、「ピグマリオン」だ!うれしいね!その他、「フィールド・オブ・ドリームス」「マトリクス」から「探偵物語」まで…ジェームズ・ブラウンもありました!ロックやJポップのことは知らないけど、一人で見てても笑ってました。

 

tommy_uniform.JPG 架空の町(東北のグロッカ・モーラみたいな)北三陸市と東京を舞台に、1986年から現代へと行きつ戻りつしながら、実在のアイドルや実際のエピソードが混在して、不思議なリアリティを醸し出します。

 ヒロイン”あきちゃん”は可愛いホーリー・フール、不変の彼女を中心に皆が変わって行く。あきちゃんの出演する教育番組「見つけてこわそう」が伏線で、震災に見舞われた北三陸市も、壊れた夫婦関係も、「逆回転の魔法」で元通りになっていく。最終回もエラ・フィッツジェラルドみたいに希望が一杯!その構成の力はハンパなく、ジャズに例えれば、じぇじぇ…J.J.ジョンソンだ。

 ドラマのテーマソングのひとつになる「潮騒のメモリー」がヒットした(ことになっている)のは1986年、この年はピアニスト、スタンリー・カウエルがOverSeasにやってきた。その2年前からトミー・フラナガンとお付き合いが始まった。本物の天才を目の当たりにした衝撃を抱きながら、無我夢中で一日13時間ウエートレスとして働いていた時期で、TV観る時間も殆どなかったですから、松田聖子と言われても判らなかったくらい、このドラマのテーマであるアイドルとは無縁です。そんな私が激しく共感を覚えたのは「潮騒のメモリーズ」のお座敷列車のシーンや終盤の「鈴鹿ひろみ復興チャリティ・コンサート」でした。音楽のジャンルは違っていても、OverSeasに北海道から九州からファンの皆さんが集まってトミー・フラナガン・トリオの日本初のジャズクラブ演奏に酔い痴れた一体感、皆がフラナガンのプレイで元気になった、あの時の情景とダブってしまったんです。

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 「プロでもない、素人でもない、アマチュアがなせるワザ」という太巻さんのセリフ、トミー・フラナガンが燃えたのは、人生をフラナガンに捧げたい寺井尚之の思いが通じたからだった!

<対訳ノート的「アイ・ミス・ユー」>

zuka.jpg 「あまカフェ」の復興チャリティ・コンサート、袖ヶ浜で振袖を着た大女優、(隠れ音痴の)鈴鹿ひろみさんが歌うシーン!春子(小泉今日子)さんが吹き替えのためにマイクを握るけど電池が抜けて音が出ない。その6小節の空白…「雨に歌えば」を想像すると、真逆だった。”アイ・ミス・ユー“から始まる鈴鹿ひろみの完璧な歌唱が最高のクライマックスになりましたよね。6小節の空白で浮き上がる”アイ・ミス・ユー“ (あなたがいなくなって寂しい)は、影武者とこれまでの自分への惜別の辞。対訳ノートに載せたいです!

 それからターンバック、 「来てよ、そのを飛び越えて」という恋の歌が、復興の想いとともに「来てよ、その震災のを飛び越えて」の意味に替って復興ソングに化けた!一曲の歌にびっしりドラマが詰まっていました。ハリウッド映画でも真似の出来ない化けっぷり。ジャズのアドリブもこうありたいなあ!

 
 と、いうわけで、私にとっての「あまちゃん」は、ジャズの心を改めて教えてくれた稀有なNHK連続ドラマになりました。エキストラとして出演されている東北の方々の姿にも心が揺さぶられました。あまちゃん、どうもありがとう!

この感動を胸にして第23回トリビュート・コンサートに向けて頑張ろう!

え?ジャズのブログにこんなテーマは相応しくないって?

「わかる奴だけわかればいい!」

CU

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